第44話 俺の選択、出発

遂にこの時がやって来た。


俺たち3人は、98Lvの時に挑んだダンジョンクエストのボスであるゴーレムを倒し終えた。

またあの煌びやかな部屋に入る。


眩しいくらい沢山あるのに実際にはこんなに手に入らなかったのは笑うな。


意識が朦朧とし、気が付くと見慣れた景色…酒場へ戻って来ていた。


最初にゴーレムを倒したのはかれこれ数時間前。

Lvは上がってはいたものの何度か負けてしまってこれほど時間がかかってしまった。

Lvも次第に上がりづらくなって本当にキツかった。

リアルではもう深夜だろう。


「どう?行けた?」


2人は俺より先に100Lvに達していたのだが俺がいけるまで一緒にやってくれた。

ありがたいことだ。


ちなみに2人のどちらかが嘘をついているという件だがあれからそういう素振りは1度もなかった。

俺の気のせいだったか…?と思うこともあるがこれからのことを考えるとやはり結論を出さなければならないだろう。


「見てみるね」


王子に言われるように俺はステータス画面を開いた。


数字は見違えるほど大きくなっており、Lvの表示もしっかり数字の横に☆1とついている。

これをつけた状態で出口を通ることがイクシードの突破条件だ。


「100Lvいけてた!」

「本当に!?やったぁ!!」

「おめでとうございます!!」


2人とも飛び跳ねて自分の事のように喜んでくれる。




でも俺は……どちらかを切らなければならない。




あの2人を一緒に行かせるのは難しいと考えた。

だから俺はどちらか一方を選ぶ。


「2人ともありがとう!記念……って言ったらなんだけど、フレンドにならないか?」

「いいねそれ」

「約束通りですね!」


2人はすんなりと俺にフレンドに必要なゲームIDを教えてくれた。

俺は2人のIDを1度打ち込み、フレンドになった。


そして、

2人に"別々の連絡"を個人チャットで送った。



俺はこの後用事があるから、


一方には明日、もう一方には明後日に、イクシードの出口で会おう。


という文章を。


「じゃあまた約束の時間に。おやすみ」


2人の返事を待たずに俺はゴーグルを頭から取り外した。


数時間ぶりのリアルを感じる暇もなく俺はベットへ倒れ込むように飛び込んだ。


もう今日は頭の容量を使いすぎた。

興奮や疑いなどもう頭がぐちゃぐちゃだ。

そして俺はご飯や風呂に入ることなく目を閉じ、眠りに入った。


-次の日


俺は朝一にご飯や風呂を済ませ、早々と無限にログインした。

昨日と何も変わらぬ街並みに懐かしさを覚えた。


このような行動に出たのには理由があった。


それは、2人が裏で繋がっていること。

それだったら今日は呼んだ人はおろか誰も来ないだろう。


だからこんなに早い時間を約束にしたんだ。

来ないんだったら早めに分かった方がいい。


その一点だけが俺の唯一の疑念だった。

が、それも杞憂だったようだ。


俺の正面から1人の女子が歩いてやって来た。

彼女は俺に手を振る。


「おはよ。昨日ぶりだね」

「あぁこれからもよろしくな」


やって来たのは……









王子だった。


「あれ?メイちゃんは?」

「あぁそれは……かくかくしかじかで」


俺は王子の事をメイが突き落としたことを伝えた。


「やっぱりメイちゃんだったのか……そういうことなら分かったよ」


少し動揺はあったもののちゃんと納得してくれたようだ。


「じゃあ行こっか」

「うん!」


メイのフレンドをしっかり削除し、2人はイクシードの出口へ向かって歩き出した。








「……やっぱりこいつバカだww……」






「ん?何か言ったか?」

「ううん。行こ?」


こんなに可愛い笑顔、やはり俺の選択は間違ってなかったようだな!


王子は俺の横でふふっと微笑んだ。


--続く

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