@mn5001

7月1日

涼しい家を出て真っ黒に焼かれそうな外に出た。




川沿いの木陰に腰を掛け、あいつに電話を掛ける。




「もしもし」




ねぇ、今日ひまでしょ




「おう。ひまだぜ。どうした?」




花火行こ




「いいけどさ、美波好きなやつと行かねぇの?」




あー、どうだろ




「浴衣着てくか?」



似合わないし。





「似合うだろ。美波はかわいいぞ?」



そう。





「じゃあ7時な。」




うん。




準備できたら電話しろよ。迎え行くから。」




電話を切って、草の上に寝転んだ。







遠くで聞こえる子供のはしゃぐ声。



岩にあたる水の音。



暑さを助長する蝉の鳴き声。



風に揺れる木々の音。







一度目をつぶって体を起こした。



自分に自身がなかった。



顔が隠れるように伸びた長い髪。



あいつが私に自信をくれた。



「髪切りに行こう。」



浴衣を着て、髪もかわいくして。



あいつに伝えたいことがある。



ありがとう。と、もうひとつ。



いつも憂鬱な外出が少し楽しみに感じ、



河川敷を後にした。






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