卵1個が100万円の世界

漢字かけぬ

第1話 人命の価値は何円?

卵1個100万円の世界


卵。タンパク質が豊富で各種ビタミンも含まれ、

透明な白身と黄色の薄い楕円からなる食品。


主にニワトリから産み落とされるものを食べ生活していた人々。

しかし増えすぎた人口をカバーできるほどの動物性たんぱく質は豊富ではない。


10個ワンパックで200円ほどの食品が価格インフレの波に乗り

高騰するのは子供でも分かる話。



 ー 卵1個 5000円の世界 ー


ここはとある学校。

何やら学級裁判が行わていますね。

罪人は飼育委員、にわとり小屋の卵を勝手に懐に入れて

インターネットオークションで売買し利益を得た罪。


この時代の卵は高級品で1週間に1度”卵スープ”として給食に使われる。

目玉焼きや卵焼きは庶民には手が出ず

少量のカケラを分け合っていくしかなかった。


監視カメラが設置されているとも知らず

10万円以上の利益を上げた学生は勿論退学処分♪

未成年であろうとニュースで実名報道され卒業アルバムが流出、

一家離散まで行きました☆



 ー 卵1個 1万円の世界 ー


ここまでくると世界中が大騒ぎ。

下手なアルバイトよりニワトリの世話をすれば稼げるので

ニワトリ小屋の世話をする派遣業が大流行。



 ー 卵1個 10万円の世界 ー


この世界に行きつくまでに多くのサラリーマンが退職しました。

公務員が退職しました。

学校は教育を教える場ではなく、いかにニワトリの世話ができるかを

教える空間と化しました。

皆ニワトリを育てて卵を得るためですよ?


各国政府はニワトリの遺伝子組み換えに活発となり

ニンゲンそっちのけで予算をつぎ込みました。



 ー 卵1個 100万円の世界 ー


新たな法律が施行されました。

ニワトリを故意に傷つけたものは裁判をせずに死刑となります。


また越後屋と悪代官の賄賂も”山吹色の菓子”ではなく卵が利用されました。


ニワトリの品種改良が進み

鳥インフルエンザに負けない強い遺伝子を持った品種が誕生しました。



 

 ー 卵1個 1000万円の世界 ー


ニンゲンの数よりニワトリの数が上回りました。



 ー 卵1個 1億円の世界 ー


ニワトリ様を育てる家畜ニンゲンの数が足りなくなり

かつての遺伝子組み換え技術を愚かな人類に活用し始める。


 

 ー 卵1個 10億円の世界 ー


ニンゲンは遺伝子組み換えにより産卵できるように改良されました。

背中には羽が生えており昔の面影はありません。


 

 ー 縺ゅ>縺�∴縺� �撰シ托シ抵シ� ー


この世界にニンゲンという種族は存在しません。

皆ニワトリになりました。


差別は勿論国境もありません。

満員電車に揺られたり、過酷な受験戦争もなく

誰もが生き生きと暮らせる世界です。


ユートピア、楽園、エデン、サンクチュアリ、シャングリラ、ガンダーラ、天国。

そんな言葉がふさわしい。

・・・・かつてニンゲンだった者たちには私の言葉は届きませんけどね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

卵1個が100万円の世界 漢字かけぬ @testo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説