職務質問

内藤 まさのり

職務質問

 我が家の次男は今年の5月に21歳になる。外見に関しては、大学生になってからちょっぴり髪を茶色に染めたが、それもよく見なければ分からない程度の染め方だ。服装に関しても悪目立ちをするような事は好まず、いたって普通の、というかどちらかというとおとなしそうな青年である。そして性格たるや真面目過ぎる嫌いがあった。今回はそんな次男が経験した出来事について記してみたい。


 一昨年、つまり次男が19歳の時の話だ。中学時代の友達たちと最寄りの駅前で集まろうという話が持ち上がった。親からするとまだ未成年であることが心配になり、「周りがお酒飲んでも、お前は飲んだら駄目だぞ。」などと声をかけたが、自分が信用されていないと受け取ったのか、「飲酒なんかするわけないだろう!」と次男を怒らせてしまった。そんなやり取りの後、次男は楽しそうに出かけていった。

 

 その日は深夜になっても次男は帰ってこなかった。とは言え、既に大学生でもあり、また事前に帰りが遅くなると聞いていたので、妻こそ時刻が時刻なので心配し始めていたが、私はそれほど心配していなかった。

 結局、夜半をかなり過ぎた時間に次男は帰宅したのだがどうも様子がおかしい。激怒しており、警察に対しての辛辣な非難の言葉が相次いで次男の口から発せられた。次男が何かしら警察のご厄介になったと察せられ私たち夫婦は驚いて、次男が落ち着くのを待って何があったかを聞き出した。


 次男たちの集まりは大いに盛り上がり、深夜まで続いたそうだ。ただ店の閉店時間も近付き、解散する事になった。偉いもので、それだけ駅前の飲食店に長居しながら、宣言どおりお酒には手を出さなかったという事だ。そして駅からの最終バスもとっく出た後で、歩いて帰れないほどの距離でもないことから、次男は帰る方向が同じ近所の子と散歩をしながら帰る事にしたそうだ。そうして二人で深夜の散歩と洒落込んでいたところ、パトロールするパトカーに呼び止められた。そして何事かといぶかしむ二人を前に、パトカーから降りてきた警察官が職務質問を始めたそうだ。


 最初は遅い時間に歩いていたという事で声をかけられたのかと思ったようだが、その警察官らが次第に『未成年なのに酒を飲んでいるもではないか?』という疑いを持って職務質問をし始めたらしい。次男は、「俺たちが酒を飲んだと決めつけていた。」と言っていたが、警察官から「吐く息が酒臭い。」などの発言もあったとの事で、次男が言うとおり決めつけていたのかもしれない。ただ疑いをかけられた次男は、自分たちがちゃんと社会のルールを守っているにもかかわらず疑われた事に対して激怒し、白黒着けずにはいられなくなったそうだ。警察官に対し、「今すぐアルコール検知器を持って来て、自分たちを検査にかけてください。」と要求して押し問答になった。結局アルコール検知器を持って来て検査するという事にはならず、という事であれば息子たちへの疑いも晴れたかは微妙ではあるが、解放されたとの事だった。


 警察官の方々も、深夜のパトロールは大変だとお察しするが、もう少し一般市民を信じていただいてもいいのではないか。それとも息子たちのように、大学生になってもルールを守ってお酒を飲まないものの、深夜まで遊んでいる事がレアケースなのだろうか。何れにしても次男にとっては、そういった状況ではあらぬ疑いをかけられる可能性がある、という事を知るいい機会になったのではないだろうか。


おわり

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職務質問 内藤 まさのり @masanori-1001

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