第5話

 祖父の深夜徘徊は毎晩のように続いた。祖父はみんなが寝静まったころ、寝巻一枚で履物すら履かず裸足で雪を掻き分け歩いていた。祖父の手足は栄養不足で神経を病み、冷えに苦しむことは無かった。しかし雄三にとっては身を切るような雪の冷たさ、肺が凍りそうな夜の外気は苦痛以外の何物でもなかった。祖父はいつも何かを探し続けていた。雄三は必ず何かを探す祖父を雪の中で探し出し、連れ戻していた。夜は遅くまで、朝は早くから忙しい父母を煩わせてたくはない、小さな弟妹にはゆっくり眠って欲しい。雄三は一人でこの状況に対処した。大丈夫、春になって滋養あるものを食べれば祖父はきっと元に戻ってくれる。そう信じて雄三は夜の苦行に耐えた。

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