クーデレメイドに愛されたい!
不安タシア
第1話 クーデレメイド
いきなりだけど、僕の性癖を公開するとしよう。需要がないかも知れないけど聞いてほしい。
普段はクールで、何が起きようと眉一つ動かさないが、ふとした計算外のことが起きたときに困ったように頬を赤らめる。そんな性質をもった僕一途の……いや、一週間の愛の逃避行を経て僕を好きになってくれるような専属メイドが欲しい。
そうだね……代償は、僕と関わりのある女の子をみんなヤンデレにさせて、僕を愛させるようにしよう。どう? ……足りない?
じゃあ、一週間で僕への好感度が八割を越えなければゲームオーバーで構わない。どうなるかって……そんなの、一番僕の目的を狂わせたヤンデレちゃんによって変わるんじゃない? ま、そんなことはありえないけどね。
……それじゃ、端的に纏めるよ。
「僕のタイプであるクーデレなメイドさんと結ばれる代わりに、一週間ヤンデレと化した女の子たちから逃げきる!」
瞬間、部屋は強い光に包まれた。
願いヲ、認証シマシタ――――――――
「っと……うぇえ!? 本当に出てきた!?」
最近ネット通販で購入した、願いを現実にする人工知能・アイウィス。使い方は簡単で、虹色の珠であるアイウィスを握りしめて目を瞑り、願いとそれに見合う対価を唱えるだけ。
握っていたはずのアイウィスの感触はない。消えている……ということは、成功だ! 何の面白味も感じないシンプルな部屋を彩るように佇む、切れ長の目で口をつぐんだ白銀ポニーテールのメイド。
完っ全に僕の性癖だ。ご主人様の前で嫌そうに腕組をするメイドなんて、見たことがない。
「醜悪な視線を向けるのはやめてください。反吐が出ます」
十分なお言葉に、舌打ち付きだ。視界の右隅にうっすら見えるのは彼女の好感度だろうか……まだ0、どころかマイナス100ってなんだよ。
まぁ、その方が余計燃えるんだけど。
「まずは名前を考えなくっちゃね~。何がいいとかある?」
「…………」
あ、マイナスの好感度がメーターを突き抜けて飛び出していった。そりゃそうか。自分で名前を考えさせるなんて、言語道断だ。
「じゃあ、サリー? 忍丸? レイ?」
マイナス20、マイナス999、マイナス10。
日本名より、洋名の方が好きらしい。でもやっぱり、適当じゃなくて彼女に合ったような名前の方が……。
「んー……凛々しいその態度、様子……洋名にも使えるし、リン! リンでどう?」
やっとこさ、好感度は0を示した。0でいいのか疑問ではあるが、少なくとも嫌ではないということだろう。もしかしたら最初から100の名前やマイナスから始めることもあったかもしれないけれど……いいや。これが一番わかりやすいでしょ。
「よし、じゃあリン! これからよろしく!」
「気安く話しかけないでください」
リンは伸ばした僕の手をパシッと払った。でもそれもいい。いや、それがいい。
ここから始まるのだ、僕とリンによる愛の逃避行。一週間、絶対に逃げきってみせる!
そう決意した僕の一日目は、波乱の展開を迎えるのだった。
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