復讐

月岡ユウキ

***

「ねえ、本当にいいの? バレない? 大丈夫?」

「もー、本当にカナは心配性だね。大丈夫だよ」


 エリはスマホをもつと、細い指をなれた様子で滑らせた。画面には『Tektek』という動画投稿サイトアプリが表示されている。


「これを公開すれば、あいつらの人生は終わりよ」


 エリは無表情なままファイルを選択し、投稿ボタンを押す。


 その動画は、私をいじめているグループの私的動画だ。彼女らはスーパーに並べられた商品へシャープペンシル次々に穴を開けている。お惣菜やお肉のパッケージ、魚や野菜にも差して、そのままカップ麺の蓋にも突き刺している。

 グループ内部で見るためだったか全員顔出しで、主犯格のミズキは特に多く映っている。


「きっと学校とか名前特定されるよ? あの子達だって将来が……」

「はぁ? 何いってんの?」


 エリはスマホから顔をあげ、キッと私を睨んだ。


の未来? そんなもんビッタンビッタンにひっぱたいて、ぐちゃぐちゃにすりつぶして、Gの餌にでもしちゃえばいいのよ」


 普段は優しいエリが、今は本気で怒ってる。……うん、私のために怒ってくれるのはすごく嬉しい。でも私の心配はもっと別にもあって。


「今は投稿した人もバレちゃうっていうでしょ。そしたらエリだって……」

「私の心配なんてしなくていい!」


 投稿を終えたエリはスマホをポケットにいれると、すぐに私の肩にかかるコートを下ろした。


「カナをこんなにしたあいつらは、絶対ゆるせないの!」


 エリはポロポロと泣きながら破れたブラウスの袖をめくると、腕の大きな青あざにそっと口づけた。


「許さない……私のカナに……こんな……」


 肩、鎖骨、そしてまぶた……。エリは私のヒリヒリする部分に、優しく口付け続ける。唇の熱は打ち付けた部分の熱を上回って私の身体を包んでいく。


 耳元でそっとささやくエリの声が聞こえた。


「あいつらなんて、ぐちゃぐちゃになればいいのよ」

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復讐 月岡ユウキ @Tsukioka-Yuuki

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