第5話 願った通りの幸せ
<この
目が最初に認識したのは、丸いボディに
「誰だ、君。勝手に……」
しかし、
「トリは君を待っていたんだよ、ブッコロー」
不可解な音が止まり、二羽の上に合成された声が降り注ぐ。ブッコローは片目ずつ別方向を
「
「あれは君を通す為の形式でね。『
「こういう時、YouTudoなら、すぐ厳選した情報のダウンロードを指示したろうね。事前に不要な情報を溜め込むこともなく解決。合理的で快適だ」
「それ、全くセキュリティになってませんが?」
「そうだよ。YouTudoに合言葉は存在しない。YouTudoが許すか否かだけで片付き、全ては滞りなく進行するからね」
「もう人任せですらないし。よくそれで納得してるよね」
ブッコローの声は思いの
「何か問題かい? 君だって君の世界の常識を
合成ボイスは何事もなかった様に言い
『いや、私はそういうとこから来たので罪と言われても。皆、幸せそうだったし』
それはまだ記憶に新しい過去、考えるより先に答えるブッコローだ。
「賢い君は知っている筈だ。自分で答えを出す価値など簡単に忘れられる。皆、欲しいのは『正解』か『望み通り』。YouTudoはそれを叶える一つの形を提供しているだけだよ」
ブッコローは首を傾げた。
確かにYouTudoで間違える機会は滅多にないだろう。「正解」はYouTudoが決めた選択肢。その答えを選択の場面で教えてもらうのだから、住民は何が正しいか悩むことなく、誤る苦痛も味わわず生活できる。目覚めるべき時間に起こされ、食べるべき物を提供され、行うべきスケジュールがあり、楽しむべき娯楽が配信される。
であればこそ、そこに「望み通り」は存在し難い。誰かの望みが育つ前に刈り取り、「正解」に満ち足りるよう導かなければ、YouTudoの「正解」による平和は成り立たない筈だ。
「YouTudoで望みが叶うって、あるの? 誰も個人的な望みを持たないのが正解な世界だよね?」
問い掛けたブッコローに合成ボイスは芝居感の薄れたトーンで応える。
「ブッコロー、YouTudoは皆の願いそのものだよ。YouTudoがこの仕組みを望んだんじゃない。人間が望み、それに合う形になった。YouTudoは今もその望みを叶えている。YURINDOも含めてね」
ブッコローを
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