ぐちゃぐちゃな部屋。(スキル汚部屋、主人公の日常)

三愛紫月

ぐちゃぐぢゃな部屋

俺の名前は、秋月凛音あきづきりおん、年齢37歳。

5年前までは、それなりに掃除もして仕事もして生活をしていたんだけど…。

5年前、父親が他界し、追いかけるように母親が他界した事で俺は精神が崩壊した。

そして、婚約は破棄され、仕事はクビになり、何もする気が起きない日々を毎日過ごしている。

有難い事に、両親は一人息子の俺の為に億に近い程のお金を残してくれた。だから、俺は家にいるだけでいい。

そう思いながら、ダラダラと起き上がった。

時刻は、14時……。


毎日、昼夜逆転の生活を繰り返している。


「腹減ったなーー」


俺は、足の踏み場のない部屋の僅かな導線を進んで冷蔵庫を開ける。


「大丈夫かなーー?」


牛乳を見つめてから、キャップを開けて匂いを嗅いだ。


「いけるわーー」


俺は、ゴクゴクと牛乳を胃袋に流し込んだ。


「昼御飯は、ピザ食おうかなーー」


俺は、さっきの場所に戻る。


5年も、この生活を続けていると床のものを踏まずに歩くのにも慣れたものだ。


部屋が汚いといっても、虫が飛ぶのはNGだ。特に、ウジなんかはあり得ない。

だから、俺は、生ゴミだけは捨てている。

皿は、洗うのがめんどくさいので紙皿と紙コップを使用しているし、箸は割り箸を使っている。


俺は、スマホを手に取る。


「ピザ、ピザ」


ピザを選んで、注文した。どうやら、一時間後にしか来ないようだった。


俺は、物に埋もれた中からテレビのリモコンを探してつける。


ここまでが、俺の変わらない日常

だ。


異世界もののアニメを見ている俺からすれば、魔法で一瞬で家を片付けてくれればいいのにって思うのだけれど……。


そんな簡単にいくはずはない。


相変わらずな、ゴミ屋敷。


ほら、よくテレビでやってるあれだよ。


芸能人とかさ……。


でも、別に


ホコリが積もろうが


足の踏み場がなかろうが


死ぬわけじゃないんだからいいと思うんだ。


虫は、出ないようにしてるわけだし。


匂いも大丈夫なはずだ。


近隣には、迷惑をかけない範囲の汚部屋なら……。


誰にも文句を言われないだろう?


と、ダラダラと言い訳を考える頭の中。


もはや俺は、頭の中も汚部屋らしい。


考えが散らかってる。


だから……。


思考も、うまく片付けられない。


だから……。


この部屋が汚いとは思わない。


虫もいないし


匂いもないんだから


むしろ、綺麗だよ!


いや、綺麗なんだよ!!


俺は、部屋を見渡した。


綺麗とか


汚いとか


そんな問題じゃないのはわかる。


どうやって


片付けていたかが思い出せない。


片付けってそもそも何なのだ?


整理整頓って何なのだ?


あーー、わからない。


頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。


この部屋と同じだ。


整理整頓


片付け


わからない。


わからない。


俺は、物で溢れた中から


ここにあったであろう物を探した。


あった!!


掃除機だ。


使えるのか?


いや、使う前に


まずは、片付けだ。


片付け?!


やり方がわからない。


考えてみる……


そうか!!


いるものいらないものを分けなさいって聞いた事を思い出した。


俺は、床の物を掴んだ。


いる


いる


いる


いる


いる


15分続けてみた。


結果的に、何も変わっていない。


何故だ?


何故、何も変わらないのだ?


俺は、また同じような一日を繰り返すのだ。


そうだと思っていた。


そんな気がしていた。


だけど、目覚めた俺は……。


「マトメーーーー」





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ぐちゃぐちゃな部屋。(スキル汚部屋、主人公の日常) 三愛紫月 @shizuki-r

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