『いつかの未来』
お姉ちゃん達と別れ、アトラクションを楽しみ、ご飯を食べたりしていた。特に言い争いもなく、普通に楽しんでいたのだが……
「んー……楽しいですけど何か物足りなくないですか?先輩方」
真美ちゃんが唐突にそんなことを聞いてきた。その言葉に対して奏先輩と真白先輩は頷いた。
「ええ。そうね。足りない理由は……」
チラリとこっちを見る先輩達。………え?何だろう。嫌な予感しかしないんだけど。
「………あ、あの…私……そろそろ休んでますね?」
ということで私はこの場から逃げた。と言っても私は運動はそんなに得意ではない。故に――。
「捕まえた」
奏先輩に捕まえられた挙句、抱きしめられているという状態です。……遊園地に来ているのにこんな状況になっていいのか……?
「あーーー!奏先輩ずるい!!抜け駆け禁止ですよ!」
「奏……?抜け駆けとはどういうことなの?」
真白先輩と真美ちゃんの目が怖いんですけど……どんだけ私のこと好きなんだろう……。
「抜け駆けしてるつもりないんだけど。これがキスとかならまだしも、ただ抱き締めてるだけだし」
ううっ……まぁ、毎日のように抱きしめられてるし……と思ったけどここって一応外だよね!?人目があるじゃん!
「むー……!節度守ってくださいよ〜?ここは外ですよ?奏先輩は常識がないんですか?」
「真美ちゃんの言う通りよ、奏……さすがに外でこれはどうかと思うわ」
2人に言われて奏先輩は少し考え込み、そして口を開いた。
「……分かったよ」
そう言って奏先輩は私を解放してくれた。
「でも、逃げる菜乃花も悪くね?」
「まぁ、それはちょっとあるかもですけど〜……」
「うーん……まぁ、奏の言うことも一理あるわよねぇ」
「………え?」
その後私は三人によっておもちゃの如く、弄ばれたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日はヘトヘトだった。だって観覧車3周したんだよ!?三人に一人ずつだったし……その間もみんな抱きしめて愛の言葉囁いてくるし……
「………みんな……私のこと……」
好きすぎじゃないですか?と言ったらみんな『……?当たり前じゃない』とみんなに言われた。……そんな人達に好かれているのに私は答えを言えずにいる。
私の答えを待っていると言ってくれた。だから早く答えなきゃいけない。酷い女だと自覚している。三人に甘え、期待させ、待たせている。……こんな自分が嫌になる。
「……みんな待ってる……って言ってくれるけど……」
早く言わなくちゃいけないのは分かっている。でも、言えない……否、言いたくない。だって今の関係が心地がいいから。
三人とも愛の言葉を囁いて来るし、手も繋いでくるけど、それ以上のことはしてこない。その関係がとても居心地が良くて、ずっとこのままでいたいとさえ思ってしまうのだ。
「最低だな……本当」
こんな卑怯な女だと知ったらきっと嫌われるだろう。もういっそ嫌いになってくれればいいのに。そうすれば楽になれるかもしれないのに。
でも、あの人たちは優しいから嫌いにならないと思う。私が何をしても許してくれる気がする。
それが怖いから私はまた――。
「………まだ、いいよね……?」
まだ関係に溺れていたい。だって…誰か選んだら何かが崩れてしまいそうな気がしてならない。
だからもう少しだけ夢を見たかった。……いつか終わりが来るとしても今はこのままでいたい……と思いながら私はベットに寝転がるのだった。
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