巨神さんは見ています

布団カバー

第1話

巨神さんはいつも宙から私たちを見ています。

巨神さんは私たちが文明を築く前からこの星をずっと見ているそうです。

巨神さんは顔だけでも大陸よりも大きく、大きな災害があったときは指を使って守ってくれます。

人々は巨神さんが好きで、昔からどうにかして巨神さんに近づこうとしてきました。

高い建物を作ったり、望遠鏡で覗いたり、気球や飛行機で飛んだりしてきました。


今回は星から離れるほど強力なエンジンを搭載したロケットを作ることにしました。

発射の日、人々が見守るなかロケットは巨神さんに向かって飛び立ちました。

ロケットは対流圏、成層圏を超え、今まで超えることが出来なかった中間層すらも超え、ついに巨神さんがいる宙まで行けたのです。

これには巨神さんもびっくりしたようで、今まで感じることがなかった視線を感じます。

緊張しながら操縦していると、ロケットに衝撃がかかりました。

外部モニターを確認したら、ロケットを巨神さんがそーっとつまもうとしていました。

あわてて半壊しつつあるロケットを飛び出し、なんとか九死に一生を得ましたが、もう星には帰れません。

それなら巨神さんに少しでも近づこうと、宇宙服に搭載したエアブースターを使い、巨神さんに向かって飛び始めました。

しかし、いつまで経っても巨神さんには近づけません。

。巨神さんがあまりにも大きすぎて遠近感が狂ってしまっているだけで近づいてはいる、そのことに気付いたのはエアブースターが切れた頃でした。

エアブースターが切れたので、仕方なく宇宙服の酸素が続くまで泳ぐように手足をばたつかせて巨神さんのもとへ向かおうとしました。


酸素がもうありません。

最後に巨神さんを生で見るためヘルメットを脱ぎ去り、巨神さんを見ることにしました。

絶対零度が顔を焼く苦痛を覚えながらも、最後に巨神さんを誰よりも近く見られて幸せな気分です。


目を覚ましたら、真っ暗でした。

ライトで周囲を照らしてよくよく見てみると、それは巨神さんの手でした。

どうやら巨神さんが手の中へ包んでくれたようで、空気もあります。

それから巨神さんは星から家、食糧、生活用品などを持ってくれて、今では第二の家になってます。

星にいる人々もこの状況を理解し、今後巨神さんの周囲に宇宙ステーションが建設されるそうです。


巨神さんはいつも宙から私たちを見ていました。

わたしたちは宙でも巨神さんを見られます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

巨神さんは見ています 布団カバー @hutonover

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る