第103話
まずは先制攻撃で様子見かな。
「
気負うでもなく、無造作に発動させたからか、止めようとすらされなかった。
「なっ!?」
「魔法!」
「くそが!」
「……」
幅を広くして放った風の刃。広範囲を薙ぎ払える代わりに射程距離が短くなるから、向こうにある建物までも届くことなく緑風は風にまぎれて消えた。だけど目の前にいたこいつら四人のことは十分に有効範囲に捉えて放った。
「なるほど……」
思わず感心してしまった。
雑に撃った魔法ひとつとはいえ、四人ともしっかりと躱して無傷とは。
大げさに飛び退いたり、その場に低く伏せたり、高く跳び上がったりとそれぞれの反応だったけど、特に後ろにさがったあいつ……あの様子は……。
「
なんか既視感のある癖の強さで、お返しとばかりに魔法が発動される。
っ! やっぱり、あいつは魔法使いだ。
「どこの魔法使いか知らねぇが、残念だったな。俺らはタマラ様直属の血濡れ四人衆っ!」
謎に名乗りを上げながら、大きく横へと飛び退いていた奴がそのまま回り込むようにこちらへと疾走してくる。
「必殺の陣形を出させた時点で、貴様の死は確定……だ!」
そして跳び上がっていた奴は着地と同時に、少し遅れてやはり回り込むように近づいてくる。
これで僕の正面には魔法の風刃、左右からは手に大振りなダガーを持った奴らという布陣だ。魔法を避けるか耐えるかしても、それで生じた隙を二人がかりで叩くっていうことなんだろう。
まあ、シンプルだけど有効な戦術だと思うし、僕の魔法を躱してからすぐさまこれで返してきたあたり練度も中々だ。
……だけど、まあ。
「格の違いを、思い知るといいよ……
一文字のレテラによる腕の振り払い。その動作で隙は生じない。だけど、タイミングを間違えずに発動させたそれは、確かに迫っていた風の刃を、まるで嘘だったかのように消し去った。
「「っ!」」
明らかに驚きつつも、左右の二人は一切速度を落とすことなく迫ってくる。いや、そこは想定外なんだったら、引くべきだろうに。確かに良くできた連携攻撃だったとは思うけど、もう僕の正面には穴をこじ開けてしまっているんだからさ。
「
たった一文字。だけど僕の足元で炸裂したそれは、細くはあっても長身な僕の体躯を一瞬で前へと押し出し、迫っていた敵二人の視界から外してしまった。
そして向かった先は正面だから、そこには――
「ヴ――」
――焦りつつも、即座に詠唱し始めているのはたいした胆力だけど、冷静ではないな。そこは腕の一本でも犠牲にして防御に徹するべきだろうに。
「おらぁ!」
「う゛っ」
そのままの勢いで肩を相手の鳩尾に突き刺すようなイメージで体当たりをかました。風属性魔法の突撃からは、これで大体片が付くね。実際、防ぐよりも反撃を選択して無防備な腹を晒していたばっかりに、魔法使いらしきこいつは一撃で昏倒した。
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