第25話
ライラに案内された僕とグスタフは、二軒の建物を見てきた。どちらも普通の住居だけど、別に住む家を探している訳ではない。まあ近いといえば近いんだけど。
今探しているのは拠点だ。それも僕たちだけの。
ゲーム『学園都市ヴァイス』の通りに事が起こるのなら、僕は十五歳になってヴァイシャル学園に入学したすぐ後に、コルレオンに根を張る裏組織パラディファミリーの首領へと就任することになる。
そしてヴァイスにいる間の修業期間と称して、こっちにあるファミリーの支部をまずは任される。コルレオンの方にある本部はその時点の前首領――つまり今はまだ現首領――の叔父上が当面仕切ることになる。
……というか、権力を移譲して隠居する気なんてさらさらないあの人格破綻者が、ゲームでの『アル・コレオ』を下部組織の長へと押し込め、本部の支配者として無理難題を押し付けまくって上下関係を叩き込もうとするんだ。
結果として主人公や『アル・コレオ』が三年生になる歳に――その時点までに『アル・コレオ』死亡イベントが起こっていなければ――叔父上こと前首領サティを殺して、狂気のラスボス『アル・コレオ』とそれに恐怖で服従する裏組織パラディファミリーが完成するって流れだ。
敵キャラとしてみると、血で血を洗うような内部抗争を乗り越えてきたドン・パラディは倒しがいのある良いラスボスと評されていたんだけど……、自分でそんな人生を体験するなんてごめん被る。
とはいえ、力を蓄えるためとはいえ十歳そこそこのガキにすぎない僕が、パラディファミリーに目を付けられるような行動はとれなかった。具体的には組織を作るような全てのことを、だ。
だから仲間も本当に信用のできる極少数を集めるに留まったし、拠点を確保するようなこともできなかった。まあませた貴族子弟として振る舞って商売にはちょこちょこと手を出して小銭を稼いでいたから、資金はあるのだけど。
そして今のこの状況。グスタフとライラ、そしてもう一人には話しておいた半年後から始まる僕の“学生生活”。その裏で嫌がらせの枠組みとして押し付けられるファミリーのヴァイス支部は当然敵だらけだから、安心できる場所が必要ということで足のつかない拠点を求めている。
パラディファミリーのお膝元たるコルレオンだと隠し持つなんて不可能だったけど、ここでは可能だ。ヴァイスは学園都市であり、ヴァイシャル学園こそが最大勢力。裏社会の組織は小さな支部を送り込むことしかできないから影響力も相応だ。
……だからこそ、そこに押し込んでおいて追い込みかけようなんて利用の仕方もされる訳だけど……ね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます