死神と呼ばれた少女と変わった貴族が出会う
月白藤祕
第1話 美しい娘との出会い
彼女と初めて会ったのは、煉瓦造りの賑わった街から外れた路地だった。目があって一瞬足を止めてしまうほど、人間とは思えないほどの美しさを持つ娘には、路地という背景が似合わないと思ってしまった。
彼女は美しい見た目のせいで奴隷として売買されることも度々あったが、何度も逃げ出しては路地生活に戻っていたそうだ。しかし、彼女が他の者と違うのは、生きる気力がないことだろう。雨を凌ぐことも、食べ物を探すこともなく、ただその場に座っている。人攫いにとっては高額で売れる商品が何度も戻ってくるので好都合だろう、彼女は幾度となく奴隷市場に並んだ。
そんな彼女にはある噂があった。彼女を買っていった貴族や商人は必ず死ぬという噂だ。もしここにその死んだ貴族や商人がいるならば、彼女のことを指差して「死神」とでも言うかもしれない。しかし、この言葉は少々間違っている。彼女はむしろ死にたいのに死ねないのだから、死神に嫌われている天使か何かだと私は思っている。実際、彼女を買った者達の中に良い者はいなかった。天罰が下ったのだと思えば納得がいく。
では、そんな彼女と私の出会いをもう少し詳しくお話ししましょうか。
私はしがない貴族であります。彼女とは路地裏で出会いました。私は何故か多くの者たちから命を狙われており、その日も多くの暗殺者たちに囲まれていたのです。腕には自信がありますので、大抵の場合は自分でどうにかしていたのですが、その日はあいにく毒薬飲まされた後で元気がなかったのです。
そして、逃げ込んだ路地裏には人形のようにその場から動かない彼女が。たまたま居合わせた彼女を見殺しにするわけにはいかなかったので、勝手に守ろうとしましたが、自分のことでもやっとなのに守り切れるはずもなく、やらかしてしまったわけです。
彼女のことを守った私は思ったよりも血を流しすぎてしまい、その場に倒れてしまいました。意識がどこかへ飛んでいこうかという間際に、彼女は私を庇って暗殺者たちに向かってこう言ったのです。
「死ぬ覚悟はありますか?」
薄れゆく意識の中、彼女は暗殺者たちからあざ笑われ、簡単にその命を散らされてしまった。そして私の視界は真っ赤に染まったのです。私は守りきれずに申し訳ないとそのまま意識を手放しました。
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