日本のラスボスのダンジョン無双
@ruiveruto
第1話 今日のニュース
「せあっ!!」
アルタは黒髪を靡かせながら、目の前の魔物を切り伏せた。
首を跳ね飛ばしたので、間違いなく絶命をさせたはず。
念のため警戒は解かず、青色の瞳で地面に転がっている牛の頭を。次に、死後間もないためビクビクと痙攣している胴体を見下ろして、きちんと確認をする。
結果は、やはり死んでいた。
それでもなお険しい顔をしており、警戒を解いたりはしない。
それだけこのダンジョンは狡猾なのだ。
東京の新宿の地下にあるダンジョン『シンジュク六十八』。
日本中にある中で未だに踏破されていない、最難関の地下迷宮。
彼は挑戦中であり、今まさに最下層と思われる場所に侵入をしていた。
「ほう……ここまで来るとはな」
「お前がここのボスか」
だだっ広い空間に出た瞬間、壁のあらゆる場所に設置してある松明が燃え上がる。
どのダンジョンにも共通している、ボスの部屋。
今度は山羊の頭を持った魔物が現れ、アルタは鋭い視線で睨みつける。
こいつさえ倒せば終わりだと、そう確信をして。
「一つ確認をさせてもらう。お前を倒せば終わりか?」
「さあ、どうだろうな──っと」
ニタリと笑った瞬間に、地を蹴っていたアルタの剣が首を跳ね飛ばす。
先ほどと同じように、手応えを感じる一閃。
血が飛び散り頭は地面を転がり、凄惨な光景が広がる。
「やるな」
「まぁ、一撃じゃ終わらないよな」
その頭から声が聞こえたのを見て、手にしていた剣を軽く振って血を払うアルタ。
身構え直していると、胴体の方がゆらゆらと歩き頭を拾い上げて、ぬちゃりと音を立てながらくっつける。
首を跳ねて死なないなんてことは、ダンジョンではよくあることなので動揺などしない。
一癖も二癖もあるのが魔物であり、それこそ何十回と殺さないと消滅しなかった例すらあるくらいだ。
もちろん強くなっているのは彼らだけでなく、人間も同じ。
「必殺技でいくか」
アルタは剣に黄金の光を纏わせて輝かせると、その切っ先を魔物に向け直した。
「必ず殺す、か……果たしてできるのかな?」
「──
「っ……!? この光はまず──」
大胆不敵に微笑んでいた魔物だが、アルタの振るう光に呑まれて消滅していく。
頭が、胴が、脚が、塵となって。
あまりにも無慈悲な一撃は、抵抗させる暇すら与えなかった。
「ふう。今回はこんなものか。さすがに疲れたな」
額を拭ったアラタは、剣を収めてその先に進む。
守るように立っていた扉を開くと、宝石や黄金がそこら中に存在しており、勝者への報酬として置いてある。
彼はそれらを見てニヤっとして……。
「お疲れ様ですアルタ様」
「んぇあー、そだなー」
その十分後には、アルタはそのもう一つ奥の部屋で麗しい見た目の玉座に座り、労われていた。
見た目こそ美しい女性ではあるが、人間ではなく奉仕型のロボットではあるが。
長い黒髪のメイド姿は癒しを与えてくれるので、これが作り物でなければ最高だと思うばかりである。
「今日のニュースでも見るかぁ。なになに……シンジュク六十八の二十三層に到達したパーティが現れた、か。はぁぁぁぁ……おっせぇ……」
深い深いため息をするアルタ。
そう。
彼こそがこのダンジョンの、ラスボスなのである。
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