ぐちゃぐちゃだけど、まぁいっか
うた
第1話 ぐちゃぐちゃだけど、まぁいっか
「あらまぁ……。派手にやってるなぁ」
部屋の入口に立ち尽くした私。目の前に広がるのは、リビングいっぱいに散らばったおもちゃ達。車や電車があちこち走り回り、ぬいぐるみ、磁石の知育パズル、積み木など、おもちゃ箱の中身を全てひっくり返したようだ。足の踏み場もない……。
「ふふーん♪」
鼻歌のように聞こえる声を出して、車をキコキコ動かしているのは二歳児の息子、
「あきらさーん。お片付けしません?」
一言、声をかけてみる。彼の機嫌とやる気が起きれば、片付けを一緒にしてくれるのだが、今日は違うらしい。
「ない」
しないのね。はぁ、ため息が出ちゃう。確か、昨日寝る前も大掃除かってくらい、このおもちゃの山を片付けませんでした? キレイって、一日もたないんだなぁ。
「仕方ないなぁ、もう」
ぶつぶつ文句を言いながら、近くに落ちている三角の積み木と、電車一両を手に取った。残りの二両はどこに行ったの。三両セットでしょ、これ。はぐれ車両が悲しんでるわよ。
ガラガラ、ガシャン、ガシャガシャ
おもちゃ箱の中に、両手いっぱいに持ったおもちゃ達を入れていく。最初は車の箱、電車の箱、と分類していたが諦めた。結局、中でごちゃごちゃになってしまうのだ。諦めてしまった方が楽。どうせ二歳児には、どこに入れても一緒で、気になどしないのだから。
おもちゃを入れたら、次の場所へおもちゃを取りに行く。よしよし、少しずつ空間が開けてきたぞ。私が寝転がっても、部品を踏んずけて痛い思いをしなくて済む。
あと一息だ!
ガシャガシャガシャーーーン!
「え……、えぇ~~!!」
キレイになっていた床に、またおもちゃが積まれている!
「ちょっと、今片付けたんですけどーー」
「あった!」
キラキラした瞳で、右手を上げている息子。その手には、信号機が握られていた。
「それを探してたのね……。小さい信号機を……」
小さい信号機の為に、おもちゃ箱はまた空になり、ふりだしに戻った我が家のリビング。がっくりと肩を落とす。
「ぐしゃぐしゃだけど、まぁいっか。いや、もういいや……」
ひとまず、片付けるのも諦めました。
ぐちゃぐちゃだけど、まぁいっか うた @aozora-sakura
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