ぐちゃぐちゃ異世界転生

大道寺司

第1話

「あー、異世界転生してー」


 そういう俺に世界が呼応するかのように目の前に知らない人が現れた。

 誰かは知らないが顔は何故か見覚えがある。


「お前、死にたいのか」


「まぁ、多分死なないと転生できないからね」


「そうか。じゃあ、ぐちゃぐちゃにしてやる」


 その凶悪な表情と右手に握っていた鉄パイプで思い出した。

 こいつは連続通り魔事件の犯人として指名手配されてるやつだ。今朝のニュースで見た。

 俺はそのままなされるがままだった。


 しばらくすると、明らかに非現実的な空間で目を覚ました。


「どこだ? ここは」


 一人で呟くと、目の前に神々しい女性が姿を現した。


「ここは死者の訪れる場所。貴方はこれから異世界に転生していただきます」


「あなたは俺を転生させてくれる女神様!? 俺はどんな異世界に転生するんですか?」


「剣と魔法と銃と呪いと蟲とバレーボールと将棋の世界です」


「世界観ぐちゃぐちゃじゃん」


 こうして俺は世界観ぐちゃぐちゃの異世界に転生した。


「勇者よ。この世界を支配する竜王を倒してくれ」


 王冠を被った蟲に急にお願い事をされた。

 どうやら今いる国の王様らしい。

 ていうか将棋の強い奴が世界支配してるじゃん。なんだよこの世界!


「嫌だよ。蟲王様。俺は可愛い女の子とイチャコラしたいんだ!」


「では、旅のおともに女剣士と魔女と女子バレー部部長を連れていけ」


 蟲王様の声と共に三人の美少女が入室する。


「この世界最高!」


 そして俺達はなんやかんやで竜王のもとに辿り着いた。


「さぁ、竜王! 勝負だ! 俺の飛車がうなるぜ!」


「バカめ! 俺の呪いでお前は歩兵しか動かせない」


 イカサマじゃん......


「あぁ、クソ! こんなんやってられるか!」


 俺は将棋盤を思いっきりひっくり返す。

 竜王はかなり狼狽えている。


「あぁ......駒がぐちゃぐちゃに」


「戦いの最中に敵に背を向けるなよ」


 BANG!!


 俺の拳銃が放った弾丸が竜王の頭をぶち抜いた。


「よーし。世界救ったし、女の子とイチャイチャしよ!」

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ぐちゃぐちゃ異世界転生 大道寺司 @kzr_

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