キミガメシア

じほにうむ

プロローグ

この世界の中心にそびえる巨大な山シュミルテン、それを見ることで彼は故郷に帰ってきたのだと実感することが出来た。


「この世界は、こんなにも島があったのか…」


目に入るのは記憶とは違う景色。それがやっとの思いで帰ってきた故郷は何もかもが変わってしまっているのだと見せつける。

それは以前からそうであったのか、そもそもあの一件からなのか、そんなことは長い間ここを離れてしまったバリゴルンにはわからなかった。

あの時はただ皆があの山に住んでいた。ただそれだけだった。思えば他のところを見た覚えがない。

それでも今わかるのは、「もう違う」ということ、同胞たちが島々に分かれているこというこの二つ。

シュミルテンを取り囲むようにして浮かぶ多くの島々。そこに皆がいる。

だが知り合いを探そうにも、誰がどの島にいるかまではわからないのであった。


**********


行き当たりばったりというのは、誰がどう考えても危険であり、最も時間がかかる手だろう。普通は避ける。


「とりあえず近くて大きい島を目指そう。ちょっとでもいいからこの世界が知りたい」

「それもそうだな。立ち止まっていては何も得られない。早速船を出す準備をしよう」

「え?乗せてってよ?飛べば早いだろう?」

「すまないがここでは能力が使えないみたいでね。これじゃあなんのために機械の体になったのかわからん」

「うそだろ…」


とにもかくにも急がば回れ。こうして二人の旅が始まるのだが。


「そうだ一久。エヴォリスとしての名前を考えておけ」

「なんでだ?名前まで捨てろって言うのか?」

「そうじゃない。名前ってのはなんというか、こっちだと力の元と言うか、強さのための基点というか…。とにかく、君が強くなるために必要だ」

どうやらうまく答えられず、困ってしまっているからか、機械なのにまるで縮んだように小さな態度だ。

「ごめんごめん。別に怒ってるわけじゃないんだ。それなりに理由があるなら従うよ。それにさ、一応考えてあるんだ」

「なら良かった。で?その名前、聞いてもいいだろうか」


それを聞いた途端、一久は自信満々に、そして声高らかに返した。


「ああ、もちろんだ。そして聞け!頭に刻め!俺の名はイルティマ!たった今からこの名をふりかざしこの世界を進みゆく!」


謎の世界、「空間」の旅が今度こそ本当に始まる!

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キミガメシア じほにうむ @Zi_honium

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