欺瞞の悪魔 ロクス・アルカナ

ユラカモマ

欺瞞の悪魔 ロクス・アルカナ

 小さいころから正義の味方に憧れていた。だが体も気も小さくいじめられっこだった僕はヒーローにはほど遠かった。それでもなんとか理想に近づきたくて僕は警察官になるこした。幸い頭はそこそこよかったから警察学校には無事入学することができた。しかし、警察学校は勉強だけでなく体育も難しかった。特にマラソンをした日などは足元がふらつくほどだった。しかもどんなに必死に走ってもどべで毎回情けない思いをさせられそれがとても惨めだった。

 学校からの帰り道、路地で猫を見つけた。首輪もしていない薄汚れた灰色の野良猫が何やらもがいており足に刺のついた紐がからまっていた。僕はそれをほどいてやろうと思った。体育があってとても疲れていたけれどこのまま見過ごすのは正義ではないと思ったからだ。僕はゆっくりと近寄った。しかしせっかくほどいてやろうと思っているのにパニックの猫は暴れて爪を立ててくるのでなかなかうまく外せない。次第にイライラしていった。やっと外せたときには手は紐の刺と猫の爪でぼろぼろだった。ほっとした僕は良かったな、と猫に手を伸ばした。すると猫は恩も忘れて僕の手にきつく噛みついた。僕は疲れもあってついカッとなり猫を蹴り飛ばした。猫は宙に浮いて二、三回地面を跳ねた。すぐにはっとなって猫を見ると打ち所が悪かったのかぐったりとしている。せっかく助けてやったのに噛みついてきたのが悪いんだ。僕はそのまま置いて走って家まで帰った。胸がずくずくと苦しかった。あまりにも苦しくて一瞬混じった爽快感はすぐに消えてしまった。

 それからしばらくはその路地の見える道を避けて歩いた。しかし日が立つにつれ段々ともういいかと思うようになり体育があったある日ついにあの日と同じ道を通った。路地にあのときの猫はもういなかった。その代わりまたこないだのより一回り小さい野良猫が刺つきの紐に足をとられていた。僕はちょっとためらったが紐を外してやることにした。こないだのより小さくまた弱っていたようで猫は小さく鳴くだけで暴れなかった。おかげで多少刺で指を刺したものの前より簡単に外すことができた。猫がありがとう、というように僕を見上げて鳴いているのが可愛らしかった。気分がよくなった僕は弱っている猫になにか餌を与えてやろうと思い、家に走って帰った。貯金箱からいくらかの札を出して店へ行きミルクとソーセージを買った。僕はこのときヒーローになれたという気持ちでいっぱいだった。そしてあの路地を見て愕然とした。先ほど助けた猫が頭から血を流しうずくまっていたのだ。僕は買い物袋を放り出して駆け寄ったが猫は既に冷たくなっていた。小さな猫の体には頭以外にも複数の殴られたような跡があり誰かに殺されたのは間違いなかった。どうすればよかったのか。僕は買い物袋を拾うこともせずにすっかり重くなった足を引きずって家路についた。それからまた僕はあの道を通らなくなった。

 話を変えるが僕には当時彼女がいた。彼女は同じ中学校の卒業生で家も近かった。彼女はとてもはつらつとした威勢のいい性格で正義感が強くまるでヒーローのようだった。付き合い出したときには同情されただなんだと陰口を言われたが弱くても正直で正義感のあるところが好きよ、と笑いとばして付き合ってくれていた。ある日デートの帰りに連れていきたい所があるの、と言われなんだろうと思うとあの路地だった。そこにはまた猫がかかっている。今回は大柄などら猫で近づこうとすると毛を逆立てて威嚇した。

「あー、あー、大丈夫よー。」

 彼女は恐れずそれに近づき片手で猫を押さえて紐を外そうとした。

「ここの婆さんが猫嫌いでねー、こうやって紐をかけて野良猫をひっかけてるのよ。意地悪よね。あら、手伝ってくれるの?」

 僕は彼女の前に回って暴れる猫を押さえた。爪で引っ掻かれて痛いけれど彼女のいる手前意地をはった。

「僕も前にここの猫を助けたことがあるよ。」

 すると彼女はすごく笑顔になった。

「やっぱり? 気になっちゃうよね。」

 僕はそれを誇らしく感じたがまた実際には助けられていないという後ろめたさに襲われ曖昧に笑った。照れなくてもいいのにと肩を叩く彼女の勘違いは訂正せずそのまま別れた。それから僕は頻繁にこの路地へと足を運ぶようになった。

 僕は路地に猫を見つけるたび嬉しくなった。彼女と同じように猫の紐をほどいてやった。ただ僕には押さえながら外す器用さがなかったから大きい猫、暴れる猫は殴って弱らせてからほどくことにした。僕は力が弱かったから殴っても大丈夫だろうと思ったのだ。だが警察学校で鍛えられたせいか時々猫が死んでしまうこともあった。それでもどうせ助けなければ死んでいたのだから同じと思った。

 ある日彼女に猫を殴る所を見られた。彼女は目を見開いて僕を罵った。何を言われたかは覚えていない。それ以来彼女は僕を無視するようになった。ただ幸いにもこれは警察学校を卒業する直前のことで赴任先は引っ越す必要があるほど遠くもともと別れるつもりだったからちょうど良かった。



 警官となって初めての赴任地は故郷から離れた田舎町、ここで平穏に三年過ごした。それから他の一つ目と同じくらいの町に二年、ここでの生活も悩みといえば少し店が遠いくらい生活だった。三つ目は市街地での勤務になった。ここでは今までとは格段に起こるトラブルの数も犯罪の数も違い毎日仕事に終われた。おかげで速記が得意になった。

 ある日の仕事終わり、先輩に連れられて居酒屋に行った。そこには女性が4人待っていた。お水のお姉さんたちではなく普通の社会人のようで店も普通の居酒屋だった。男の人数も僕を入れて4人、いわゆる合コンというやつだった。合コンは比較的盛り上がっていたが僕は人見知りを発動しうまく話せなかった。ついつい他の勢いに圧倒されてしまった。はあと向かいを見れば女の子の一人と目が合った。長いストレートの清楚な雰囲気の人。見ていると彼女もなかなかノリについていくのが難しいらしかった。僕たちは二人で酔ったのでお先に、と帰った。彼女を家に送りすがらまた会う約束をした。名前はフェザー・ローレン、家の手伝いをして暮らしている、と言った。彼女は影がある、大人しいというより暗いと言えるような娘だったが次第にそんな彼女を守りたいと思うようになり二月後、交際を始めた。

 フェザーは外を嫌った。かつてある犯罪に巻き込まれそれから外へ出るのが恐ろしくなってしまったと言った。

「大丈夫、僕は警官だから、危ないことから君を守ってあげるよ。」

 そう言うと彼女は安心したようにふわっと笑った。その笑顔からは警官である僕への信頼が見てとれた。これはデートに誘い出すときの常用句だった。この頃は相変わらず忙しかったけれど少しずつ新しい環境にも慣れてきていたので仕事の合間をぬってフェザーを誘った。遅くなったり間隔がまちまちだったりしたがいつもフェザーはイエスと言ってくれた。たいてい長く一緒にいることはできなかったけれどそれでも会えるだけで幸せだった。


 フェザーと付き合い始めて一年が経ちそろそろプロポーズしようかと思っていた矢先に事件は起きた。町で起こった窃盗事件の容疑者を取り押さえる際容疑者が暴れくんずほぐれず押さえつけたところ容疑者が窒息死したのだ。その押さえるのには僕も協力していた。複数の長官に呼び出され懲戒免職になるかも知れないと言われた。僕は脅えたが副長官は僕を褒めた。

「それでも、よくやった。どうせやつのような半端な悪人は捕まって牢屋にぶちこんでも数年で出てきてまた罪を犯す。殺した方が世のためだ。」

 そしてさらに僕に取引を持ちかけた。

「そんな栄誉ある君に提案しよう。これからも悪人を排除していくのに協力してはくれないか? もちろん、この話を飲んでくれるなら私たちも陰ながらバックアップさせてもらうし、今回のことももみ消してあげよう。」

 副長官はにっこりと肥えた頬をへこませた。答えに渋っているとさらににんまりと笑顔を浮かべとっておきの言葉を囁いた。

「これも正義のためだよ。アルカナくん。」

 僕の警官学校の体育の成績はひどいものだったが元来の臆病な性格にふさわしく護身術、特に拿捕不可能な凶悪犯向けのナイフ戦だけは得意だった。まあこれは配点が低かったことからこの科目が学校内ではそんなに重要視されておらずから相対的に良かったに過ぎない。それでも僕は渡されたナイフを手に取った。ギラギラと輝く真新しいシンプルなデザインのものだった。


 取引から一月経ち僕は二人罪人を誅した。一人は婦女暴行の常習犯、こりもせず女性を押さえているところを後ろから近寄り刺した。二人目はドラッグの売人で自宅に忍んで帰ってきたところを襲った。薬づけの小柄な女だったから容易かった。罪人の情報は副長官の秘書から渡されるものの元来の仕事と平行して行わなければいけないためひどく疲れた。気疲れもすごく帰ってすぐベッドへ倒れこむ日々だった。

 二月目、また二人の罪人を誅した。一人は詐欺を働き被害者を自殺に追い込んだ老婆、夜の外出時につけて後ろから殴り倒して刺した。二人目は殺人の片棒を担いだ少年、バイト帰りの夜道で刺した。だんだん対象の犯罪歴を見るのが気持ち悪くなってきた。フェザーと会うこともほとんどできていない。しんどいので早く済ませたくてますます仕事にのめり込んだ。

 三ヶ月目、今月は三人だった。経歴も手口ももういいだろう。死体はそのまま置き去り汚れた衣服は火にくべた。ナイフだけが手元に残る証拠品だ。しかし副長官の言ったとおり僕は疑われることなく普通の警官として日々働いていた。それでも残る遺留品にどうしようもない座りの悪さを感じた。

 三ヶ月目の終わり、僕は久々にフェザーに会いに行き別れを切り出した。彼女とよく行ったすぐ傍の公園のベンチで周りにはちらほら歩く人も見られた。どうして、と聞かれると大変な仕事を任されてしまい、会う時間がとれないから、と曖昧にはぐらかした。フェザーは戸惑ったようだった。

「私、待つよ? 忙しいのもずっとじゃないんだよね?」

「何ヵ月、いや何年かかるか分からないんだ。」 

「大丈夫だよ。忙しいなら手伝うよ。仕事は無理だけど家事とかならできるから。」

 フェザーは予想外に食い下がった。その目から涙が溢れ声が震えても彼女は諦めなかった。

ついに彼女は声を上げて泣き始めた。僕は焦った。泣くほど求められたことは初めてだったから。

「守ってくれるって言ったじゃない。」

 ぐしゃぐしゃになりながらの言葉に僕は耐えかねてこの三ヶ月ずっと言えなかった言葉を口に出した。

「幸せにするよ。これが終わったら、結婚しよう。」

 フェザーは泣きじゃくりながらも頷いた。肩に手を置くととてもとても温かかった。


 プロポーズから一月後彼女は僕の目の前で死んだ。


 牢の中に放り込まれた。手枷はなく見覚えのある正義のナイフが一本転がっていた。そのよく研がれ光る刃には最後に断罪すべき悪が映っていた。僕は吸い寄せられるようにそれを手に取り己の首に突き立てようとした。しかしナイフは喉に触れる寸前で輝く光に止められた。気づくと光の主が哀れな気違いを見つめていた。

「人の身と引き換えにでも叶えたい望みはあるか?」

 薄ら笑いで僕はナイフを下ろしその光を見返した。既に天国ではないかと思うほどの光のだった。

「フェザーを、生き返らせてくれ。」

 乾いた口でそう言うと掠れた声が出た。光はゆっくり優しく答えた。

「残念だが死んでから日が経ち彼女の体は既に朽ちている。代わりといってはなんだが彼女の魂を君に授けてあげようか?」

 僕はそれを聞くと立ち上がっていきり立った。

「誰があんな悪魔の魂を!」

「そうか。君は人を憎むか? そのために人を捨てるか?」

「ああ! 僕にできるのなら、仇をうってやる。フェザーを殺したその報いを、全ての悪人を。」

 僕はそう叫んだ。すると光が青く光って僕を包み黒い覆いとなった。そこに重なるように細く赤い光の線が重なり石となって首にかかった。僕は人ではなくなった。僕は黒い外套の内で誰にも見えない青い涙を溢した。



 

 


 フェザー・ローレンは親友に引っ張り出された合コンである警察官とあった。そもそもその合コンはかつてある事件に巻き込まれ引きこもりになったフェザーのためにフェザーがまだ大丈夫という警察官の男だけを集めた合コンだったのだがやはり久々の外だけあってなかなか空気に馴染めなかった。そんな中こっそり小声で話しかけて来たのが彼だった。撫で肩で少し気弱そうに見えた。でも話してみるといい人だった。

 彼はたいてい仕事帰りに私の家へ訪れた。日の落ちた町をいっしょに歩いた。守るから大丈夫だよ、いつもそう言ってくれたから私は外に出ることができた。この人とならいっしょにいたいと思った。彼はいつも疲れていたと思う。それでも何かと気遣ってくれる優しいところが好きだった。

 彼と付き合い始めて一年ほどたった頃、彼の訪れる頻度が急に減った。何かやらかしたかと尋ねても暗い顔で何も、というだけで私はとても怖くなった。私のなかで既に彼は大きな柱でありなくてはならないものだったからだ。彼が傍にいてくれたから外に出ようと思えた。毎日をがんばろうと思えた。彼は私にとってヒーローだった。

 彼に別れようと言われたとき私は子どものように駄々をこねて泣きじゃくって彼を困らせた。彼は根負けしたように私にプロポーズをした。それでも私は嬉しかった。本当に嬉しかった。その日から彼の家に毎日のように通った。掃除をして洗濯をして料理を作って帰ってきたら出迎えて。実は家事は嫌いだったけどアルカナの顔色を見ていると躊躇っていないでやらなければと思えて。大変で、でも嬉しくて。ずっと続けばいいと思うほど幸せ、だった。

 あの日、アルカナの帰りが遅かった。その日は本当は家の手伝いを頼まれていていけないはずだった。だけど予定より早く終わったから夜食だけでも作ってあげようと彼の家に行った。彼の家についたころには普段彼が帰るころになっていたが結局、卵雑炊ができあがるまで帰ってこなかった。帰りを待ちたかったが昼の疲れもあって眠たくなってしまい、つい机に座ったまま眠ってしまっていた。


 鍵を乱暴に開けようとする音で目が覚めた。一瞬不審者かと思ったが鍵が回った音がしたのでアルカナだとほっと胸を撫で下ろした。でも、そこにいたのは。黒いレインコートを赤茶の飛沫しぶきで汚した、鉄の臭いのする男だった。男はフェザーを見てその手に持っていた凶器を落とした。それは血塗れのナイフだった。それはフェザーに脳裏に消したはずの記憶を思い出させた。

「あ・・・」

 あがるはずだった悲鳴は気道を潰されたことで途切れた。喉を絞める男の指を引き離そうともがいても皮膚を突き破らんとばかりに力はますます強くなりフェザーは意識を失った。最期に見たのは・・・。


 誰かに呼ばれてフェザーは目を覚ました。妙にすっきりとした気分で身体が異常なほどに軽かった。しかし一体誰に呼ばれたのかと辺りを見回した。すると下に見知った顔が二つあった。

 アルカナが"私"を埋めている?

 周りに人はいなかった。まあいても辺りはアルカナの背丈ほどある草が生い茂っていたからそれを見られることはなかっただろうが。

 そうか、自分は死んだのだ。

 それはすとんとフェザーの中に落ちてきた。身体があれば泣いたかも知れないがフェザーはもう泣くことはできなかった。フェザーは自分の近くに降りたった。しかし人形ように動かなくなった身体は既に自分ではなかった。

「おまえが悪いんだ。」

 ぼそりとアルカナが呟いた。アルカナは土のかかったフェザー顔を見ていた。フェザーの身体にはもう顎の下まで土が被さっており後は顔の部分を残すのみだった。アルカナは青く固い死体の顔に触れようと手を伸ばしその直前で慌てて手を引いた。その勢いのままシャベルを取り顔から頭まで見えないように土を被せる。すべてが隠れた後アルカナは脱力して膝を折った。顔を押さえて呆然と土の下を見る。

「なんで・・・僕は・・・僕はただ正義の・・・僕が・・・殺したのは・・・殺したのは・・・」

 アルカナは目を大きく開いたまま泣いて同じような言葉を繰り返した。自身が泣いていることにも気づいていないかのように、涙をぬぐう素振りもせず色の違う土をただ見つめて繰り返す。ただならぬ様子にフェザーは思わず手を伸ばすがそれが届くことはない。

「僕が、フェザーを、殺した・・・? はっ・・・ははははははは!」

 カチリと何かがはまるように一言最期に呟いてアルカナは高く笑い出した。空を見上げ哭きながら体を震わせ笑っている。フェザーはただそばに在って異常な男の言動をただ見ていることしかできなかった。

「誰が殺した? 許さない。今度は僕が殺してやる。」

「どうして殺した? 彼女は誅さねばならない悪だった。だから殺した、正義のためだ。」

 自ら矛盾する言葉を繰り返し繰り返し呟き続ける。悦に入ったような笑い声を上げながら涙は服を濡らし続ける。フェザーはそれを見て泣きたくなった。抱きしめて抱きしめられたくなった。あんなに近くに居たのに今ではもう果てしなく遠い。

「ずいぶんと心残りがあるな? まぁ信じていた恋人にくびられたなら恨み辛みもひとしおだろう。だがまぁ特別だ、送ってやろう。成仏するがいい。」

 突如どこかからかアルカナのものではない声が聞こえた。妙に冷たいその声にフェザーは思わず反駁はんばくする。

「アルカナは私を殺したくて殺したんじゃなかった。でもだからあんなに哭いて、壊れて、しまったのよ。」

「ずいぶんと執心しているな。あれは存外ろくでもない男だと思うが。」

「そんなことない。忙しいときだって会いに来てくれてたし辛いときはいつもそばで励ましてくれてた。だから私はがんばれて色々やろうって思えた。彼は私のなんだから。」

 崩れかけの、魂が叫んだ。情愛だけでこの世にしがみついて自ら歪もうとする愚かでしたたかな命の残滓ざんし、まるで鮮血のように輝いている。大いなる光はその本来束の間でしか存在し得ない赤い光を飲み込んだ。これからの永い時を枷としてしるべとして愛した男に添わせてやるために。互いの救いとするために。















悪魔紹介(解説)

欺瞞の悪魔 人間名:ロクス・アルカナ

 正義こそこの悪魔の行動理由の全て。しかし彼は己の矛盾に気づくことはない。正論を述べるがそれが常に正しいとは限らない。過去に対する認識は終わりのときのまま狂っており首にかけられた石が何であるかも分かっていない。彼は石を捨てたいと思っているが手放すことはできず他人に触れさせることもない。それが何であるのか、自身が何者であったか、それらに向き合えるまで彼は自他を欺きさ迷い続けるのだ。

 

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