誰だよ王様殺したの!!

@asashinjam

もう予定ぐちゃぐちゃだよ!!

トアル王国の重鎮達が一室に集められた。

魔王討伐記念パーティの最中だったので皆礼服であった。


「だから俺は言ったんだ!! まだまだ国の情勢が不安定だから

パーティは安定してからにしようって!!」


魔王を討伐した勇者パーティの勇者ユウキが叫ぶ。


「落ち着きなさい、 今は終わった事を言ってもしょうがないわ」


勇者パーティのエルフ、 弓使いのユミが抑える。


「責任問題だな」

「責任問題だな、じゃねーよ、脳筋」


勇者パーティの戦士ノーキンと魔法使いマジック。

彼等二人は仲が悪く口喧嘩ばかりだが今回に至ってはそんな事を言う暇も無い。


「・・・・・状況を整理しよう

魔王討伐記念パーティ、 最初に乾杯の音頭を取った私の父である

国王エライ、 盃を傾け飲み干すと同時に父上は倒れた

そして父上の側近と勇者パーティがここに集められた、 と言う事か」


王太子であるタイシが冷静に状況を分析する。


「勇者殿が我々を集めた、 と言う事は如何言う事なんでしょうかね」


宮廷魔法使いであるケンジャが尋ねる。


「この中に犯人が居る、 と言いたいのか? 勇者は?」


宰相のサイシがギロリとユウキを睨む。


「そうみるのが自然では無いのか?

少なくとも魔王の残党が侵入したという事は無い筈だ」

「ユウキ君の言う通り、 王都を守る結界には損傷は無い」


教会の法王のホーオーがアシストする。


「勇者パーティの4人

そして王太子である私、 宰相、 宮廷魔法使い、 近衛隊長

法王猊下、 この9人の内に犯人は居る、 と」

「じゃあ勇者じゃねぇか」


近衛隊長のコノエが発言する。


「俺が!? 何で!?」

「だってお前・・・」


コノエはそこで詰まった。


エライ、 タイシ、 サイシ、 ケンジャ、 コノエ。

この5人は共謀して勇者を殺害して勇者の資産と功績を奪う計画を立てていた。

本来の予定ならば勇者が死ぬ筈だったのに勇者では無く王様が死んだ事により

彼等の頭の中はぐちゃぐちゃの混乱状態になっていた。


「・・・・・今回のパーティに反対していたりと反抗していたじゃないか」


咄嗟の機転で誤魔化すコノエ。

『お前を殺す予定だったから怒ってやりかえした』なんて言った日には即座に

逆襲されるだろう、 ユウキは強い、 不意を突かなければ死ぬだろう。


「今回のパーティには不備が多かった、 毒見役も居なかったし」


『だって居たらお前を毒殺出来ないだろう』と思ったが言えなかった。


「・・・すまん」

「今回のパーティの警備担当はコノエさん、 貴方でしょう!?

どう責任を取るんですか!!」

「確かにコノエの責任はデカいな」


ケンジャはちらちらとタイシを見た。

この場はコノエに責任を押し付けるつもりだ。

タイシにも協力して欲しそうにいた。


「今は責任を取らせる段階では無い」


しかしタイシはそれには反応しなかった。

タイシも混乱しているのだ。


「・・・ゆ、 勇者殿!! ひょっとしたら外に暗殺者が逃げるかもしれませんので

其方の対応をお願いしてもよろしいでしょうか!?」

「外はトーゾクに任せているから問題無い」


勇者パーティの元盗賊のトーゾク、 彼は身の上が身の上なので

外で待機していたがここで活躍した。


「・・・・・」

「勇者殿、 法王猊下、 誠に申し訳無いが

ここで王太子としての権限を行使して我々のみの会議を行いたい」

「どういう事ですか?」

「これから如何するのかと言う話し合いだ、 政治的にデリケートな話題だ

すまないが席を外してくれ」

「しかし!!」

「ユウキ君、 気持ちが分かるが正当な権利だ我々は一旦席を離れよう」

「・・・・・」


勇者パーティと法王はその場を離れた。


「・・・・・ケンジャ、 コノエ、 お前達で協力して勇者を殺せるか?」

「無理ですね」

「同感です、 奴は殺せませんよ、 唯一のチャンスは毒殺ですが

失敗してしまいました、 何で勇者と王様の盃と入れ替わっていたのか・・・」

「待て、 コノエ、 何で勇者と陛下の盃が入れ替わっていたと分かる?」

「え? だって勇者を毒殺するんだろ? だったら勇者の盃に

毒が入って居る筈だ、 でも今回王様が亡くなったから・・・」

「そうとは限らないんじゃないか? 別件で王様の盃に毒が入っていたのかも」

「如何だって良い、 勇者を殺せないのならば今回の一件に関しては

深く掘り下げると勇者暗殺がバレるかもしれない

このままうやむやにしてしまおう」

「陛下の死をうやむやにですと!? 正気ですか殿下!!」


サイシが叫ぶ。


「だって父上って無能じゃないか、 唯一得意なのは策略だけ

今回の策略も見事だが平時には役には立たない男と言っても良いだろう

父上の功績の大半が君の仕事じゃないか」

「確かにそうです、 必要ないと言えば必要のない方です

しかしながら勇者は殺すべきです」

「何故?」

「出費が多過ぎて我が国は破綻寸前です!! 勇者の持つ財宝を

どうしても奪う必要が有ります!!」

「待て待て、 先も言ったが勇者を殺す事は出来ない」

「全軍をもってしても?」

「如何言う理屈で全軍を動かすんだ?

護国の英雄だぞ? 下手をすれば勇者を祭り上げる反乱軍が結成されて

逆に数の暴力で負ける可能性もある」

「・・・・・誰だよ!! 王様殺したの!!」


サイシは叫ぶ。




「え、ワシ死んだんですか?」


冥府の門の前で国王エライが死の番兵に尋ねる。


「あぁ」

「何でですか?」

「何で? お前はもう良い歳だろう

それなのにお前は前日にはしゃぎ過ぎて酒盛りして夜更かし

そしてパーティで一気に酒を煽った

要するに飲み過ぎだ」

「そ、そんな下らない理由で!?」

「まぁな、でもお前も下らない理由で勇者を殺そうとしたんだ

イーブンだろう」

「・・・・・これからの世の中、 ワシが居なければ回らないでしょう

返しては貰えませんか?」

「それは無理だ、 例え世の中がぐちゃぐちゃになろうとも

死者が蘇る事は無い」

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