就職先の上司が馬好きのミミズクだった件

@Liccakhion

第1話

小さい頃から本が好きだった。

本を開けば、あっという間に知らない世界へと連れて行ってくれる。

現実に体験出来ないたくさんの世界が文字の中には存在していて、死ぬまでその世界を追い続けた。


同時に本が嫌いだった。

本を閉じてしまえば、あっという間に自分の現実を突きつけられる。


独身、家族無し。

事務員として定年まで働いて、貯金で75歳で老人ホームに入居。85歳で老衰。

遺言は「棺桶に花より本を入れてほしい」


前世はそんなどこにでもいる平凡な人生を送ったようだ。

ひたすら仕事と本しかない人生を思い出したのは6歳の頃。

近所のいじめっ子が投げたボールが顔面に当たり、6歳までの人生が走馬灯の様に流れ、ついでに前世まで思い出したからだ。

薄れる意識の中で思ったことは、走馬灯が流れる位の衝撃でボールを投げるいじめっ子も大概だが、ついでで思い出せる前世も前世だな、と。


前世で読んだ小説では、転生前の記憶を利用して勇者になったり、Sランクの冒険者になったり、領地経営したり、商売したり、ありとあらゆる夢物語があった。


でも、前世の時から思っていたのだ。




「もし自分が異世界に転移や転生しても、知っている知識を絶対に活用出来るはずがない」と。




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