護衛学校の劣等生と呪われた竜の姫

深夜に焼肉を食べたい

第1話 専属のボディーガード

 俺ことザイン・ブラッドリーはシュブリート護衛学校の劣等生である。


 護衛対象を護るために必須の魔術障壁は人を一人覆うぐらいが精一杯で、同級生との模擬格闘戦においても無類の弱さで、常に学校の成績は最下位争いをしている。


 それでも落第や退学をしないで護衛学校を続けており、成績は下から二番目で二年生に進級試験に合格は出来た。

 進級すれば来月からは護衛学校の姉妹校のシュブリート魔術学校に通う貴族の生徒のボディーガードの見習いとして実践型の教育が始まる。


 そして本来であれば俺のような成績不良者は貴族の中でも地位が高い人、王族や各地方の領主の息子娘のボディーガード見習いなんて天地が引っくり返ってもあり得ないこと。

 そのはずだった。




 なんてことのないいつもの教室。

 普段通りなら教官が来て朝の朝礼が始まるはずだったが、今日は違った。

 始業の鐘が鳴り、教室に入ってきたのはいつものむさ苦しい男の教官ではなく、一人の少女だった。


 その少女を見た瞬間、周囲のクラスメイトが萎縮するのが分かる。

 少女はしんと静まり返った教室の隅々を見渡し、そして俺と目が合うやいなや、ニッと笑みを浮かべた。



「やっと見つけたわ、ザイン。これから貴方は私の専属のボディーガードに決めたから、今日はその挨拶よ」



 竜人族の姫、クラリス・オルゴノーツがそう言い切った。

 左側が異様に長い非対称の黒角、輝くように真っ白な髪、そしてルビーのように赤く透き通る大きな瞳が俺を見据えていた。


 突然彼女が護衛学校の教室に乱入してきたと思いきや、その突拍子もない発言に周りにいるクラスメイトは響めいており、後から来た教官は出入り口で驚きのあまり言葉を失っていた。


「おい、ザイン。お前、姫様になにを仕出かしたんだ」


 隣の席の友人、ギルが小声で話し掛ける。


「なにをって、なにもしてねえよ。昨日少し会話をしたくらいだ」

「やっぱり、なにか仕出かしたに違いない。常に言ってるだろ、ボディーガードを目指すなら目上の人に対する言葉使いを気を付けろって」

「んなこと言われてもな」


 クラリスはこの国、エルファニア王国の第七王女なのだが、俺はそれを本人から言われるまで知らなかった。

 彼女は大のボディーガード嫌いで、俺ら学生のボディーガード見習いどころか王国が用意した正規の近衛隊すら拒否しているとのこと。

 本来であれば彼女の周囲には近衛隊がいるはずだが、また逃げ出したのかそれらしき人は誰もいない。


 いったいなぜこのようなことになってしまったのか。


 俺は昨日の夕方、クラリスと初めて出会った時のことを思い出す。

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