褒めないでください、なぜなら俺が使ってるのは黒魔術だから 〜男子高校生が黒魔術を習得し、世界を救う〜
小林一咲
第一章 非日常の始まり
【第1話】転機
「なんか起こらないかな」
静かな夕日を眺めながら呟いたそれは、空虚な心に涼しい風となって通り過ぎて行った。
高校3年生になり、嫌いだった空手も引退し、なんとなく卒業までバイトをして大学に進学しようと思っていた。
毎日が同じ日のようにループしているみたいだ。
でも、今日は少し違うようだ。
「やめろ犬っころ、それは俺んだ!」
聞きなれない低い声。いつもと同じ風景に異色の物を探すと、痩せた小汚い男が犬とパンの奪い合いをしていた。
僕が求めていた違うモノだったが、何故かがっかりした。なんかもっとこう、『面白いモノ』が見たかった。あれはどちらかと言うと『変なモノ』だ。
その変な奴と犬との戦いは長くは無かった。犬は男からパンを半分千切ると一目散に駆けて行った。ため息を吐いた彼と僕は目があった。男は残ったパンを頬張りながらこちらに向かって来てから尋ねた。
「バイト、する?」
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「ここ、か」
男に会ってから2日後、僕は渡されたメモを頼りに指示された場所に来ていた。
あの時どんな仕事かも聞かずにOKしてしまったのかは自分でも分からない。今から考えれば、というか考えられない。幼い時に知らない人にはついて行っちゃダメだと教えられていたものだが。
カラオケ店が入った小汚いビルの3階までは今にも崩れそうなほど錆びついた階段で繋がれている。その階段を上がると『何でも屋』と書いた表札があった。どんな仕事か聞かされていなかったが、ここまで来てもどんな仕事か分からないとは思わなかった。
「何か御用?」
メモに書かれた部屋のインターホンを鳴らそうとした時、後ろから声がした。振り向くととても美しい女性が立っていて、その背後にあの男もいた。
男は嬉しそうにニヤッと笑うと、新しい仲間だよ。と僕を見ながら言う。女性もじゃあそれならと、嬉しそうに僕を部屋の中に入れ、ソファに腰掛けさせると、僕の個人情報をキラキラした目で聞いてきた。押しに弱過ぎる僕は、ほとんど話してしまった。
逆に質問は無いのかと聞かれたので貴女のこと、男のこと、バイトのことについてそれぞれ尋ねた。女性もそれぞれに答えてくれた。
女性の名前は『北山アイ』23歳。
「アイさんって呼んでねっ!」
明るく自己紹介した彼女は高校を卒業してからやりたい事もなくぶらぶらしていた時に男に会ったらしくそこから今の仕事を手伝っている。という事だった。
ここは名前の通り『何でも屋』で小さな依頼から大きな依頼まで様々ある。僕にもその仕事を手伝ってほしいらしい。
そして一番気になっていた、男のことについてアイも詳しくは知らないらしいが、名前は『吉川タケル』31歳。本人から聞いたそうだが本名かどうかは不明だ。見た目通り変人だが案外優しいところもあると言う。そんな話をしていると吉川が麦茶を持って来てくれた。
「コソコソ俺の話をするな」
とアイにげんこつを食らわした。
「前言撤回。ただの変人だわ」
もう一発げんこつが飛んだ。
吉川になぜ僕をバイトに誘ったのか、僕はこれから何をすればいいのかを尋ねた。
「暇そうだったから。まだ分からん。」
しかし中途半端な返答のみで、不安になった僕は帰ろうかとも思ったが、彼の言う通り暇だったし、優しくて美人な人と一緒に居れるなら別にいいかと思い留まった。
そんなこんなでこの『何でも屋』で働くことになった僕だが、今日は初日だからと家に帰ることとなった。ビルを出て振り返ると、アイがベランダから手を振ってくれていた。
明日からの非日常に不安も大きかったが、その倍ワクワクした気持ちで帰宅した。僕はひとりっ子でそのうえ両親は共働きだったので夜8時を過ぎないと2人とも帰ってこない。食事の取り置きがあるわけでもなく毎日台所に立つのは僕だ。今日はカレーだ。理由はめんどくさいから。
自分で作ったカレーを平らげてから、そそくさと部屋に入る。直に帰ってくる両親と顔を合わさないようにするためだ。嫌いなわけではなく、会っても話すことがないし仮に話があっても話が終われば気まずい空気になるだけだ。
大学受験に向けて少しは勉強するべきなのはわかっていたが、僕にはスポーツ推薦枠があるので大学には行ける。空手を続けるのは嫌だったが、勉強するのはもっとだるい。とにかく今日も勉強はしなかった。
ベッドに吸い込まれ、スマホを開き映画を見ながら眠るのが僕の日課だ。最近ハマっているのは世界的に有名なアニメの劇場版を見返すこと。前にも何度か見ているので、全ての内容を記憶しているが、良い映画は何度観ても良いものだ。
目を開けると外は既に明るい。学校に行く時間まではまだ時間があるので、徐々に出てくる朝日を眺めながら、しばらくぼーっとしていた。
学校に行く準備をゆっくり済ませてリビングに向かうとテーブルの上に置き手紙とお小遣いが置いてあった。
−お母さんとお父さんは今日は夜勤で帰りません。
いつものことなので気にせずに、お小遣いだけ財布に入れ、学校に向かった。
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ご覧頂きありがとうございます😊
今回から、新作の投稿を始めます!!
前作を見てくださった方は、今回も怖い系??と思う方もいるかもしれませんが、今作は怖くはありません!!
笑いあり?
感動あり?
「褒めないでください、なぜなら俺が使ってるのは黒魔術だから 〜男子高校生が黒魔術を習得し、世界を救う〜」
どうぞ最後までお付き合いください!
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