奥義炸裂

 深く暗い瘴気の霧の中を進む。先導するのは、アイリーさん。

 竜剣舞の使い手でもあるアイリーさんは、見惚みとれるほど滑らかな動きで全ての障害を振りはらい、前進する。

 両手に竜奉剣を握っていなくても、アイリーさんの舞の型は間違いなく竜剣舞のそれだ。


 アイリーさんが蹴撃を放つと、周囲の瘴気が霧散する。瘴気の奥に潜んでいた魔物が隠れ場を失い、慌ててこちらに攻撃を仕掛けてきた。それを、腕に纏った竜気の刃で両断するアイリーさん。

 アイリーさんは竜気を全身に纏わせて、それを刃にしたり盾にしたり、時にはころものようにひらりと舞わせたりしながら戦う。

 せいの力を宿す竜気に触れた瘴気は祓われ、魔物や妖魔は両断される。


 無駄のない竜気の使い方。見惚れる竜剣舞。さすがはアイリーさんだね!

 この場で一緒に戦えることが嬉しくもあり、誇らしくもあった。


 もちろん、僕だって負けじと竜剣舞を舞う。

 ひらりと身体をひねって妖魔の攻撃をかわし、一連の動きで白剣を突き出す。妖魔を貫き、その先の瘴気を爆散させた。

 動きを止めることなく霊樹の木刀の斬撃に繋げて、魔物の攻撃を優雅に流す。下段から振り上げた霊樹の木刀が、竜脈の力を地の奥底から引き出した。そして、みあげた竜脈を、水飛沫みずしぶきのように周囲に振りまく。


 竜脈の力は、きっとラーザ様の役に立つよね。それに、僕も利用します。

 足もとから跳ね上がった竜脈の力を、僕と同化したアレスちゃんが操る。葉っぱの霊術で、押し寄せる魔物を細切れにしてしまった。


 瘴気の奥へ進むほど邪悪な気配は増していき、瘴気も濃くなっていく。それでも、アイリーさんが先導して瘴気を祓ってくれるおかげで、瘴気の衣の不意打ちを受けることはないし、僕は力を温存することができていた。


「エルネアちゃんには、最後の締めをお願いしなきゃいけないからね。それまでは、このお姉さんに任せちゃいなさい」

「ありがとうございます!」


 頼もしい先輩の言葉に、心にも余裕が持てる。それで、ウェンダーさんが神術を発動させて以降、ずっと視えている別の場所の状況に意識を向けてみた。






「はああっ!」


 セフィーナさんが、気合に合わせて両手を横薙ぎに払う。

 城塞に迫っていた巨大な鎌が、空に弾き飛ばされた。


 妖魔の王は、地上にうつ伏せの状況で落ちていた。それでも、左腕を使って上半身を起こそうともがき、右手に持った巨大な鎌で城塞ごと全てを破壊しようとする。


「ええい。クシャリラ、何をしている」

うるさし。妖魔の王の膂力りょりょくをいつまでもひとりで押さえるなど、無理や」


 巨人の魔王の罵声ばせいが、僕たちのところにまで届く。

 すると、クシャリラがゆらりと空間を揺らせて、怒りを表す。


 遠目からの視界に意識を向けると、戦場の全体像がなんとなく見え始めていた。

 古代種の竜族たちが、瘴気の霧を祓ってくれているからだね。

 薄れ始めた瘴気の霧。そして、確認できる妖魔の王の上半身。それでも、妖魔の王の大部分は未だに深い瘴気の霧と瘴気の衣に包まれていて、はっきりと見えるのは両腕と握られた巨大な鎌、それと、再生し始めた雄牛の頭蓋骨ずがいこつくらいだ。


 その妖魔の王は、クシャリラの拘束を振り払い、自由になった右腕を動かす。だけど、未だに大法術「新月しんげつじん」の効果が効いていて、動きは酷く重鈍だ。

 そして、セフィーナさんと竜族たちの完璧な連携で、城塞や中央の塔も無事みたい。

 それでも、厳しい状況が続いているのは変わりない。今でも、地竜たちは全力で結界を張り巡らせている。セフィーナさんは、地竜の結界と妖魔の王の力を利用して攻撃に耐えているけど、既に肩を大きく揺らして息を荒げていた。


 セフィーナさんの竜力は、もともとそんなに大きくはない。他者の力を上手に利用しているとはいえ、そう何度も全力を出していたら、限界がすぐにきてしまうはずだ。

 そして、セフィーナさんが力尽きてしまうと、城塞の結界は破綻はたんしてしまう。

 もちろん、巨人の魔王やクシャリラの支援があったり、スレイグスタ老たちの総攻撃が続いているから、セフィーナさんが倒れただけで戦況が悪化するということはない。だけど、ひとつのほころびが戦況全体の破綻に繋がる危険性がある。


 次の攻撃に備えて、鐘楼しょうろうの上で息を整えるセフィーナさん。

 そこへ、飛来する人影が見えた。


「セフィーナさん、支援いたしますね」

「あら、アネモネさん。こんな危ないところに来て、大丈夫?」


 セフィーナさんの横に着地して、肩に手を乗せたのは、竜人族のアネモネさんだった。


 なぜだろう?

 映像しか伝えないはずの、ウェンダーさんの神術。それなのに、アネモネさんとセフィーナさんの会話が耳に届いたような気がした。


 気のせい?


 二人の口元の動きを見て、僕が頭のなかでセフィーナさんとアネモネさんの声を補完したのかもね?

 二人に意識を向けると、会話の続きが不思議と読み取れた。


「私は竜宝玉を持っているのですが、戦士ではないので戦えないのです。ザン様にも、本当は危険な場所へは行くなと言われていますし。でも、私だって皆さんの力になりたいです! それで、竜宝玉と相談しまして」


 竜宝玉と相談!?


 いや、アネモネさんの比喩ひゆ表現だよね。

 アネモネさんが受け継いだ竜宝玉は、大切なお友達だった飛竜の魂だ。きっと、飛竜は竜宝玉を通して、アネモネさんの願いに応えたんだと思う。

 そのアネモネさんは、セフィーナさんの肩に手を当てたまま、意識を集中させる。

 すると、すぐに二人の竜気に変化が起きた。

 アネモネさんの竜宝玉から、暖かい力が湧き起こってくる。木漏こものような優しい波動の竜気がアネモネさんの身体を巡り、肩に当てた手からセフィーナさんに注がれていく。

 枯渇こかつしていたセフィーナさんの竜力が、アネモネさんの竜気で満たされていった。


「ありがとうございます、アネモネさん」

「どういたしまして」

「これで、私もまだ戦えるわ」


 と、セフィーナさんが口を動かしたそばから、大迷宮の術を潜り抜けた大型の妖魔が襲いかかってきた!

 だけど、セフィーナさんもアネモネさんも妖魔の王の動きに注視したままで、死角から強襲してきた大型の妖魔の動きを把握していない!


「危ない!」


 つい、声に出して叫んでしまう僕。

 先行していたアイリーさんが僕の叫びに竜剣舞を止めて、こちらを振り返る。そして、ふふふ、と僕を安心させるような笑みを浮かべた。


 しまった!

 アイリーさんに警告を発したと勘違いさせちゃった。

 だけど、アイリーさんの浮かべた笑みは、自分は大丈夫、という意味ではなかったみたい。


「あら、エルネアちゃん。二人は大丈夫よ」

「えっ!?」


 アイリーさんの意味深な言葉に、困惑する僕。

 だけど、直後にアイリーさんの言葉の真意を知ることができた。

 頭が直接認識する視界の先で、セフィーナさんとアネモネさんの死角から急接近していた大型の妖魔が、急に燃えあがった。

 銀炎に包まれて、消し炭になる妖魔。


「お前たちの警護は、俺が受け持ってやる」

「ザン様、ありがとうございます!」

「まったく、世話の焼ける奴だ」


 やれやれ、とアネモネさんに苦笑しながら現れたのは、竜人族の戦士、ザンだった。

 セフィーナさんとアネモネさんは、近くにザンの気配を感じていたから、大型の妖魔を無視していたんだね。

 映像は視えても、気配までは伝わってこないから、僕にはわからなかったよ。


 それと。


「もしかして、アイリーさんは別の角度から僕と同じ風景を視ていて、ザンの姿も捉えていたんですね?」

「鐘楼の下でザンちゃんが奮闘する姿も視えていたわよ」


 どうやら、ザンは最初からセフィーナさんを護って戦っていたようです!

 ザンがアネモネさんを追いかけてきたんじゃなくて、アネモネさんがザンの側に飛んで来たんだね。

 戦士じゃないから戦えないと言うアネモネさんだけど、戦場の真っ只中に突っ込んでくる物怖じしない性格は、戦士も顔負けだよね。


 セフィーナさんたちの状況を確認した僕は、次の場所に意識を向けた。






 禍々まがまがしい瘴気の霧が徐々に薄れていく、空の上。

 希薄きはくな瘴気を荒々しい羽ばたきで蹴散らしながら、レヴァリアが飛ぶ。


「はわわっ。レヴァリア様、妖魔の王の右腕が自由になってしまいましたわ」

『ええいっ、魔王も使い物にならんな』

「このままじゃあ、巨人の魔王でも押さえられないわ」

「このままじゃあ、左腕も自由になってしまうわ」


 こちらの会話も、口元の動きで理解できちゃう。それに、レヴァリアの言葉は竜心りゅうしんで伝わるしね。


 ライラたちは上空から妖魔の王の動きを捉えて、次の動きを見せようとしていた。

 三人が言うように、妖魔の王の右腕に続いて左腕も自由になってしまうと、有志たちや城塞そのものへの攻撃が苛烈になってしまう。

 それに、自由になった右手をこのまま放置することはできない。右手で、巨人の魔王を引き剥がすことだってできる。

 一刻も早く、右腕をどうにかしなきゃいけない!


「こうなったら、やるしかないわ」

「こうなったら、出すしかないわ」


 ごくり!


 ユフィーリアとニーナの覚悟に、嫌な予感しか覚えません。

 ライラも悪寒がしたのか、慌てて先に行動する。


「竜族のみなさま、妖魔の王の右腕の付け根に、一斉攻撃ですわ!」


 瞳を青く輝かせて、竜族たちに指示を出すライラ。


「ぬおおおおっ!!」


 古代種の竜族であるウルスさんが先陣を切って、妖魔の王へ突撃する。

 ウルスさんに続く、竜族たち。

 そして、一斉に竜術を放つ!


 まばゆ閃光せんこうと共に、大爆発が起きる。

 薄い瘴気は衝撃波で消し飛び、妖魔の王の右腕が、瘴気の衣ごと付け根から吹き飛ぶ。


「やりましたわ!」


 喜ぶライラ。

 だけど、まだ脅威は過ぎ去っていなかった。

 右腕を失った妖魔の王が、怒りに瞳を赤く燃えたぎらせて、復活をげた雄牛の口を開いた。


「瘴気の塊を放ちそうだわ」

「とても危険だわ」


 ユフィーリアとニーナが叫ぶ。


「みなさま、退避ですわっ」


 ライラも、総攻撃を仕掛けた竜族たちに指示を飛ばす。

 レヴァリアは、大小四枚の翼を荒々しく羽ばたかせると、妖魔の王の頭部から距離を取ろうとした。

 そこへ、ユフィーリアとニーナが無茶な要求をする。


「奥義を出すわ。レヴァリア様、妖魔の王の頭部に近づいてほしいわ」

「奥義を出すわ。レヴァリア様、妖魔の王の頭部に向かってほしいわ」

『無茶を言うな!』


 さすがのレヴァリアも、妖魔の王の口の奥で収束する瘴気の濃度に危機感を覚えていた。

 今は、本能に従って素早く避難したいはずだ。

 でも、このまま妖魔の王の反撃を見過ごしてしまうと、逃げられなかった地上の者たちや城塞が心配だ。


「レヴァリア様?」

『ちいっ、仕方ない』


 露骨に舌打ちをしながらも、レヴァリアは妖魔の王の巨大な頭部へ目掛けて進路を取る。

 ユフィーリアとニーナは、奥義を出す準備をするためか、お互いのお胸様の谷間に手を突っ込んでいた。


「っというか、何で谷間に!?」


 顔を引きつらせる僕。やはり、嫌な予感しかしません。

 あの二人は、大切な物をお胸様の谷間の奥に隠す習性があるんだよね。つまり、二人は今、何かを取り出そうとしている。そして、お胸様の谷間に隠せるような物といえば……!


「ユフィと」

「ニーナの」


 お互いのお胸様から手を引き抜き、今度は手と手を取り合うユフィーリアとニーナ。

 瓜二つの容姿をした双子の姉妹は、声を揃えて奥義を叫ぶ。


「「竜轟爆滅りゅうごうばくめつ!!」」


 同時に、全く同じ動きで、何かを地表へ向けて放り投げた。

 大地に縛られた妖魔の王の頭部の頭上に、虹色に輝くつぶが、幾つも落ちていく。


『くっ!』


 投下された虹色の粒を見たレヴァリアが、珍しく慌てた様子で逃げ出す。

 僕も、視える映像越しに慌てふためく。


「ユフィとニーナの奥義って、やっぱり『あれ』のことだったのかー!」


 きっと、僕と同じ映像を視ている者たちは、不思議に思っているはずだ。

 あの双子王女様の奥義が、なぜきらきらと美しく輝くつぶてなのだろうと。

 でも、すぐに思い知ることになる。

 やっぱり、これがユフィーリアとニーナの奥義なのだと。


 星のまたたきのような美しさで地上に落ちていく、幾つもの光の粒。

 落下地点では、雄牛の頭蓋をした妖魔の王の頭部が瘴気を収束させて、恐ろしい一撃を放とうしていた。


 次の瞬間。


 まず、閃光が世界を支配した。次いで、耳を切り裂くような爆発音と、激しい衝撃波が世界に広がる。

 大地が裂けるほどの振動が足もとに伝わり、まともに立っていられない。


「っ!!」


 咄嗟とっさに結界を張り巡らせて、衝撃波をやり過ごす僕。

 アイリーさんも、直前で身の危険を感じたのか、僕の張った結界内に避難してきた。


「あらまあ。こんな奥義を秘匿ひとくしていたなんてね。お姉さんも驚いちゃったわ」

「ご、ごめんなさい。僕の妻たちがお騒がせしています」


 結界に護られた僕とアイリーさんは無事だけど、外部はそうはいかない。


 視えていた映像が消失する。おそらく、ウェンダーさんたちもこの奥義の余波を受けて、神術どころではない状況に陥っているんだ。


 ユフィーリアとニーナの奥義によって放たれた閃光が瘴気の闇を切り裂き、大爆発と衝撃波によって、魔物や妖魔がことごとく消し飛ばされた。

 そして、瘴気の霧が消失し、視界が良好になったことで、僕たちの位置からでも爆心地が見えた。


 遠い先。そこには、再生した妖魔の王の頭部があったはずだ。だけど、今は影も形もない。

 大地には巨大なくぼみが出現し、妖魔の王は首から先をまたもや消失させてしまっていた。


「やっぱり、霊樹の宝玉ほうぎょくを使ったんだね……」


 ユフィーリアとニーナの奥義。それは、禁断の術といっても過言ではない。

 霊樹の種に、ユフィーリアが竜気を込める。それをニーナが錬成して、超破壊兵器へと変えてしまう。

 かつて、竜峰の北部に刻まれていた谷を、一瞬で荒野に変えたこともある、恐ろしい術だ。


「道理で、おじいちゃんに許可をもらったなんて言っていたわけだね」


 霊樹の宝玉は、スレイグスタ老の許可無しには採取できないからね。

 それと、ユフィーリアとニーナの奥義を、ラーヤアリィン様も事前に知っていたみたい。

 妖魔の王の首もとに絡みついていた長胴竜のラーヤアリィン様は、奥義の発動前に、ちゃんと避難していた。


 ただし、今回もまた、妖魔の王の頭部破壊に巻き込まれた者たちがいた。


「其方らには、後で仕置しおきが必要なようだ」

「憎し。覚えておきや」


 巨人の魔王とクシャリラに睨まれて、顔を青ざめさせるユフィーリアとニーナ。


「レヴァリア様、避難ですわっ」


 ライラも、慌ててレヴァリアに指示を出す。

 レヴァリアは、いい迷惑だと言わんばかりに咆哮を放ちながら、空へと上昇していった。






「さあ、エルネアちゃん。こちらもいよいよ最終局面よ」


 アイリーさんの言葉に、僕は遠くの景色から近くの風景へと意識を切り替える。


 僕たちは今、妖魔の王の下腹部辺りを進んでいた。

 ユフィーリアとニーナの奥義のおかげで、妖魔の王の周りに漂っていた瘴気が晴れた。

 見上げると、超巨大な妖魔の王の背骨が伸び、胸の骨が巨大建造物の天井のようにして垂れ下がっている。

 そして、地面に横たわる妖魔の王の胸の最深部に、邪悪に燃えあがるかくが見えた。


 あと、もう少し!

 何度か全力で空間跳躍すれば、核にたどり着くはずだ。

 張り巡らせていた結界を解き、全力の空間跳躍に備えて竜気をみなぎらせる。


 だけど、その時だった。


 ぴしり、と地面から嫌なきしみ音が聞こえた。


 飛竜の狩場は、大法術「新月の陣」によって、今も月影の光に満たされている。

 僕は息を呑みながら、その月影を見下ろす。


 みしりっ、と嫌な音が続く。


「エルネアちゃん!」


 アイリーさんが叫ぶ。


「くうっ、妖魔の王めっ!」


 まさか、およんで妖魔の王が底力を発揮するだなんて!


 見下ろした足もと。月影に、大きな亀裂が走る。

 亀裂は飛竜の狩場全体に広がり、軋み音を増大させていく。


 そして、月影の亀裂から噴き出したのは、禍々しいほど濃い瘴気だった。

 奥義によって消し飛ばされたはずの瘴気が瞬く間に広がっていき、瘴気の霧を再生させていく。それだけじゃない。妖魔の王の瘴気の衣が復活する。

 月影の亀裂から勢い良く噴き出した瘴気にあおられて、瘴気の衣が乱れ舞う。


 空間跳躍を発動させようとした僕を襲うかのように、瘴気の衣が迫る。

 アイリーさんが咄嗟に駆け寄ると、蹴撃で蹴散らした。


「ア、アイリーさん……新月の陣が!」

「どうやら、ルイセイネちゃんも限界なようね。さあ、もう時間がないわ!」


 これまで、魔物や妖魔、それに妖魔の王を縛り付けていた大法術が、破られようとしている。

 時間がない。


 でも、目指すべき妖魔の王の核は、もう目と鼻の先だ。

 僕は動揺する心を沈めて、空間跳躍を発動させようとする。だけど、そこへ押し寄せてきたのは、妖魔の大群だった。


「っ!!」


 月影に走った亀裂から、瘴気だけでなく妖魔が次々と溢れ出してくる。

 出現した妖魔の大群は、核を狙う僕とアイリーさんへ向けて、一斉に襲いかかってきた!


「エルネアちゃん、ここはわたしに任せて、貴方は先へ行きなさい!」


 竜剣舞を舞いながら、アイリーさんが僕の背中を押す。

 僕はアイリーさんに頷くと、空間跳躍を全力で発動させた。

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