030 ティーボールの準備と瀬川兄弟の現状
教室で柔らかいボールを使い、遊びながらキャッチング練習するのは流行った。
何故か流行りまくった。
正直、俺としては流行ろうが流行るまいが別にどうでもよかったが……。
この遊びは1ヶ月も経たない内に禁止されてしまった。
何故かと言えば。
教室の中で全力投球して花瓶を破壊したアホの子が出現したからだ。
うん。まあ。小学生ならあるあるだろう。
むしろ、そこまで考えが至らなかった俺も悪い。
ちなみに。
美海ちゃんは結構早い段階で普通にキャッチボールができるようになった。
当初の目的は果たすことができた訳なので及第点、ということにしておこう。
それからまた時は流れ……。
「さて、今日の体育からは実際にティーボールをしてみることになります」
約半年後。体育の授業の前の時間。
生活の授業の中頃で、すなお先生が言う。
「これまでの練習の様子を見て先生が4チームに分けましたので、自分のチームを確認して下さい」
4チームか。
授業で聞いた限り、前世のティーボールよりも更に野球に近いルールのようだ。
ピッチャーが投げたボールではなく、ティースタンドに置いたボールを打つ。
盗塁禁止。
見たところ、野球との違いはそれぐらいだった。
3アウトで普通に交代だし、ランナーの状況が回を跨いで続いたり、1チーム当たりの人数が多かったりすることもない。
だからなのかは分からないが、外野は少し狭いような気がする。
まあ、その辺は世界観による差異だと思う。
早い段階から、より野球に近いルールでやらせたいのだろう。
「ふーん……」
1人1枚回されてきたプリントを見ると、4チーム分の打順とポジションの表。
学外野球チーム所属のあの3人は、それぞれ別のチーム。
表の上のところに、チームリーダーとして彼らの名前が記載されている。
で、残る1チームだが……。
「まあ、俺か」
練習の様子を見て、あの3人以外で1番野球ができそうだと判断されたのだろう。
ステータス的には3人含めても断トツだから、さもありなんってとこだけどな。
今現在の実際の数値はこれだ。
☆成長タイプ:マニュアル
☆体格補正値 -50%
☆年齢補正値 -30%
残り経験ポイント98
【Bat Control】▼△
500(D+)
【Swing Power】▼△
500(D+)
【Total Agility】▼△
500(D+)
【Throwing Accurate】▼△
500(D+)
【Grabbing Technique】▼△
500(D+)
【Pitching Speed】▼△
100
【Total Vitality】
1000(SS+)
【Pitching Accurate】▼△
500(D+)
ポジション適性へ⇒
変化球取得画面へ⇒
スキル取得画面へ⇒
その他⇒
保育園時代に比べ、小学校はトレーニングのバリエーションが格段に増えた。
そのおかげか、明らかに【経験ポイント】の獲得効率がよくなっている。
実感として、前までよりも伸びがいい。
あーちゃんも同様だ。
「ポジションや打順は、希望があれば変えても構いません。残りの時間、皆さんで相談してみて下さい」
すなお先生の指示を受け、チームごとに集まる。
「しゅーくん」
「しゅーじろうくん、どうするの?」
俺のチームには、あーちゃんと美海ちゃん。
それから瀬川兄弟の姿もある。
あーちゃんと美海ちゃんはクラスでは上位なのだが、学外野球チームに所属している双子までいる。
そこに彼らの現状が透けて見える。
「とりあえず、打順とポジションを見てみようか」
他の子達は、3人のチームメイトも含めて似たり寄ったりの低めのステータス。
あーちゃんは俺に次いで高い。
状態/戦績/▽関係者/プレイヤースコープ
・鈴木茜(成長タイプ:マニュアル) 〇能力詳細 〇戦績
BC:400 SP:400 TAG:400 TAC:400 GT:400
PS:80 TV:600 PA:400
残り経験ポイント:2 好感度:100+/100☆
続いて美海ちゃんのステータス。
状態/戦績/関係者/▽プレイヤースコープ
・浜中美海(成長タイプ:マニュアル) 〇能力詳細 〇戦績
BC:279 SP:278 TAG:278 TAC:278 GT:278
PS:35 TV:279 PA:41
残り経験ポイント:0 好感度:42/100
彼女については一先ずティーボール仕様で偏らせて操作している。
試合で自信をつけて貰うために。
ステータス上は俺>あーちゃん>あの3人>美海ちゃん>他の子という感じだ。
しかし、すなお先生の中の評価は少し違う。
あの3人>俺>あーちゃん>美海ちゃん>他の子となる。
学外野球チーム所属というブランドは大分強い。
逆に双子は下から1番目と2番目。
しかも、他の子達>>>超えられない壁>>>双子というありさま。
ここまで行ってしまうとブランド力も無力、無意味だ。
こっちに関してはクラスの統一見解と言っていい。
その上で双子と3人を別のチームにし、バランスを取ろうとした結果、こういうチーム編成になったようだ。
「まさきとしょうじがいっしょなんて、あのチーム、いちばんよわいな」
馬鹿にするような声が耳に届く。
これは清原孝則か。
花瓶破壊の張本人だ。
当然、瀬川兄弟の耳にも届き、2人共悔しげに俯いてしまっている。
そんな双子には申し訳ないが、正直、練習を眺めていると俺も3人の気持ちが少しだけ理解できてしまっていた。
わざとやっているのかというレベルで捕れない、投げられない、打てない。
ボールはグローブに全く収まらないし、投球動作の途中でボールをこぼす。
地面に叩きつければまだいい方。
ティースタンドに置いたボールも空振ったり、スタンドを叩いたり。
ステータス的に無理もないのだが、ステータスを見ることができなければ苛立ってしまうのも仕方がない部分もある。
何せ全く上達もせず、長い間チームにしがみついている訳だから。
監督やコーチの時間も無限ではない。
真面目に指導を受けようと思えば思う程、彼らの存在を疎ましく感じてしまうものかもしれない。
まあ、だからと言って、こうして嫌味を言うのはいただけないけどな。
悪い言葉ばかり使ってると、元々はまともだったとしても性格が歪みかねない。
とは言え、俺は別に教育者ではないし、矯正してやろうなんて思わないけど。
野球狂神に吠え面をかかせるために、この状況も利己的に利用するだけだ。
「……よし。じゃあ、軽く勝ちに行くとするか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます