呼び出しされて不死身勇者になったはいいが、世界が宗教に滅されかけている件~異世界不死身放浪記~
鏑木アオイ
第一章 堕ち方は人それぞれ
第1話異世界転移、王宮の地下にて
物語とは、得てして3つの結末に分類される。
ハッピー・エンディング
トゥルー・エンディング
バット・エンディング
ボクが望んだ、切望し、渇望し、手を伸ばしても届かなかったハッピーエンド。
キミの目には、どんな結末が見えていたのかな?
ねぇ────
────────
けたたましく鳴る、昨夜アラームを仕込んでおいた携帯を、ぼやけた視界の中でとめる。
「はっ!!」
もうこんな時間か……
焦りが募る中、ここで一つ、自己紹介としゃれこもうと思う。
俺は21歳のよくいる大学生、
もちろんだが性別は男で、別に性癖はLGBTに配慮したものでもない。
ただの普通な男。
特徴を強いて挙げるとするならばそれは、他人と自分に寛容なことだが、別に特筆すべきところでないことは自分でも分かっている。
そんな俺は今日、「レクチルック・トラベル」というスカイ・エア・フェニクシーズの新IPを買うために、はるばる近場の電気街へやってきたものはいいものの……
「5列の行列とかエグすぎんだろ……」
そして、これは朝方4時の状態であるため、まだまだ増えるのは確実。
それに、早い時間帯に出たためか、体が寒い。低体温症で死ななければいいが……
プルルル……プルル……
スマホの着信音が鳴るのに気づく。こんな早朝に掛けてくるやつなんて、俺の友達にはいないことは明白。
だが、取らないわけにもいかないので、仕方なくスマホをスワイプする。
「誰だ?こんな忙しいときに……」
すると俺は、意識が、飛んだ。
──────
────
──
ここ──は?
自分が置かれている状況を理解できずにいながらも、俺はここがどこなのかを確認するため、周囲を見回す。
「しょ──召喚……成功しました!!」
「おぉ!では其奴が……」
「いや、しかし……のお告げでは……」
周囲がやたら騒がしいことに気づく。
暗闇……いや、12本の蝋燭が照らす部屋には、5人の祭司らしき人物と、中世風の兵士や、派手な服装をした老人がいた。
「あ……あの……ここどこですか?誘拐なら、うちにお金なんて無いですよ」
「何を不謹慎な!王の御前であるぞ!!」
「よい、下がれ」
衛兵らしき人物が、怒号にも近しい声色で牽制してくる。それを、RPGの最初に出てきそうな老人が止めに入る。
「まずは、私の部下の非礼を詫びよう。
私はローザ王国の国王、ハインリッヒ3世だ」
「は……はぁ……」
「まずは君の状況から説明させてもらおう。
君はこの国の兵器として召喚された、勇者だ。
君にはこれから、我が近衛騎士団に入隊してもらい、訓練をしてもらうことになるだが……そのかわり──」
「あ、あの……俺、まだ了承してないんだけど……」
「無礼な!!王がまだ……」
部下であろう赤髪の女を制止し、ハインリッヒは豪快に笑い出す。
「ガッハッハッ!!そうだな、それもそうだ。
部屋を用意しよう。
そこで休息を取るといい。
それに、君はまだこの世界にも慣れていないだろう……わたしの側近を側に置こう。
王国近衛騎士団長候補……」
「アルフレッド・アルフォンズだ
宜しく頼む、無礼者」
どうやら、彼女からの第一印象は最悪らしい。
端正な顔立ちからうかがえる侮蔑の表情に、一人苦心する。
するとハインリッヒはアルフレッドの方へと向き直り、呆れた顔を見せる。
「やめなさい、我が国の命運を掛けて召喚したんだぞ、私の身にもなって考えてほしいものだよ、全く……
これからは彼を、勇者様と呼ぶように」
「なっ──分かりました……国王ッ」
今こっちを睨みやがった……
異世界でも女って生き物はこんなにも怖いもんなのか……ヒェッ
閑話休題
まずは人物整理と、状況整理を行おう。
まずは俺、夜桜亜貴は、新作ゲームを買いにはるばる近場の電気街へと遠征していた。
すると、不可解な電話が掛かってきて、気が付くとそこは、地下(?)と思われる謎の空間。
あたふたしているうちに主要人物っぽい国王様が姿を表す。
そして、私はこの国の秘密兵器として召喚されたことを知る……
と同時にアルフレッドというすこーし怖いヒロイン役と日々を共にすることになったと……
控えめに言って
最高か???
俺は今の今まで、このような非現実的な世界を夢見ながらも、そのようなことは少なくとも自分の身には起こり得ないと悟っていた。
だがしかしッ!!そのような現実はあったのだ!
起こり得るのだと分かり!!しかもそれが、自らの手に転がり込んでくるなんて……
最高か???
閑話休題
今回私の傍につくことになったのは、アルフレッド・アルフォンズという女。
騎士団団長候補で、将来有望の女剣士。
髪はお団子結びをしていて、特徴的な赤毛の髪は、目を見張るものがある。
また、端正過ぎて楊貴妃も逆立ちして殴るくらいには顔がよい。
服は騎士団の制服だろうか、鎧と白いローブを組み合わせた格好に、中世の騎士兜のような兜を身にまとっている。
被っていると女とは思えないくらいにはカッコいい。
「なぁ、アルフレッド君よ、呼びにくいから、アルアルでいい?」
「言葉は慎重に選べ勇者様。貴君の体が微塵切りになっても私は止められないからな」
「お盛んな時期の男の傍に女の子を置くとか……
もしかしてあのオッサンて実はバ……」
その言葉を聞いた途端、アルフレッドは自身の矛を俺の首先に突き付けてこう言った。
「私の主はあくまで王だ。勇者様ごとき我が主を愚弄するな。
殺すぞ」
鋭い眼光が突き刺さる。まるで飼い始めの猫のようだ。
「おい……おいおいおい、待ってくれたまえ……
お前、今俺を殺すつもりだったろ……!?」
「いや、そんなことはないさ、ただ、王の命令さえあればいつでも殺しにかかるがな」
「ま、まじか……」
殺意を込めたそのまなざしは、鬼気にも迫る様子だった。
「あぁ、分かればいいんだ勇者様。
ここで殺してしまっても私の剣に錆が付いてしまうからな」
さっきのものすごい剣幕から一転、また、いつもの喋らなければ美人系のクール顔に戻っていた。
そのまま俺の首元に掛かっていた両刃の剣を鞘に戻し、また二人で歩き出す。
私は今、王の命令?で、部屋を用意してもらい、そこで荷物の確認と部屋にある家具のチェックをしているところだ。
この国、やっぱ金持ってんじゃねぇか……
部屋は豪華・豪勢と言わんばかりに彩られていて、ペルシャ風の絨毯、西洋貴族の寝室に置いてありそうなふかふかのベット一式が、この国の豊かな経済力を表していた。
「なぁ、この国って、どれぐらいでかいんだ?王宮にあんな地下施設を増築出来るくらいだから、さぞお金はたんまりあるんだろ……」
するとアルフレッドは、俺の言葉に対して遮るような形で話す。
「国王の話は聞いていたのか?おま……
勇者様は、国家をあげて召喚したいわば最終兵器。ここまで言ったらわかるだろ」
「なるほどな……男のロマンとやらで国はズタボロと……」
「阿呆か……この国は現在、戦争中だ」
「へ?」
話によると、この国は現在、とある国と対立し、国際世論で孤立を深めて、孤立無援で戦争を行っているらしい。
戦前の日本のような状況……まぁ別に、かの大日本帝国様は宗教上の理由ではないが。
「は~なるほど……それで俺が呼び出されたと、理解すると単純明快だな」
「理解するのが遅いぞ勇者様。
じゃあ私は失礼するよ、まだ稽古が終わってないんでね
服はあっち、食堂はそこの角を曲がって左だ」
そう言いながら、彼女は俺の部屋から出ていった。
「ふぅ……」
ひとまずは、一安心。
あいつはやばい……
もし仮に、彼女が本気になったとしたら、俺は恐らく殺されるだろう。
それは、彼女の目を見た瞬間、分かった。
なにせ、あれほどまでの殺意を含んだ瞳は初めて見たからだ。
「とはいえまずは……この世界のことを調べる必要があるな……」
「それならば、この私がお教えいたします」
「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」
そこには、見知らぬ銀髪美少女がいた。
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