ブッコローは戦う。闇に落ちた有隣堂と。

ネウト

ブッコローは戦う。闇に落ちた有隣堂と。


これはR.B.ブッコローが有隣堂に雇われる少し前のお話。


「1日働いて9000円、パチンコで負けて残り800円。コンビニで晩飯とビールを買ったらあら不思議、あと30円も残っちゃねぇ。たばこの1本でも吸いたいもんだ。」


千代田区のコンビニで買い物をすませたブッコローは夜空を見上げる。


「本当にミミズクには生きづらい世の中になったもんですよ。」


土地は開拓され、都市は発達し、山でミミズを食っていれば生きていられた昔とはずいぶんと世界は変わった。


さて帰りますかと羽を広げようとしたとき、ブッコローはコンビニの前に1匹のトリが倒れているのを見つけた。


「おい、お前大丈夫か?ケガしたのか??血が出てるぞ。」


そのトリは何もしゃべらず、ただ小さな黒い目でこっちを見つめていた。


「お前、ちょっとここで待ってろ。」


そういうとブッコローはコンビニに戻り、さっき買った晩飯とビールを返品して傷薬と包帯を買ってきた。


「ちょっとしみるけど我慢しろよ。おい、暴れるな。包帯が巻けねぇだろうが。・・・よし、これで大丈夫だ。」


トリは何も言わずにこっちをただ見ていた。と思ったらそのまま飛んで行ってしまった。


「こいつお礼の一つも言わずに行っちまいやがった。」


なんだあいつは。俺の晩飯返せよ。というかお前が晩飯になれ。焼き鳥でも唐揚げでも鳥刺しでも何でもおいしく食ってやるよ。・・・・・・くそぉ・・・腹減った。


なんだか疲れてしまったブッコローはコンビニの前に座り込んでいた。すると遠くから翼に包帯を巻いたさっきのトリがかえってきた。


「お前、俺に食われに戻ってきたのか??」


冗談めかして言ったがトリは相変わらず何も言わなかった。するとトリはおもむろに翼をバタバタとはためかせた。トリの翼からはシケモクが大量に落ちてきた。


「はは、お前、これ俺にくれるのか?」


街を飛び回って集めて来てくれたのだろうか。ブッコローはシケモクの中からまだ半分ぐらい残っている煙草を拾い火をつけた。


「ふーーー。久しぶりにタバコ吸ったわ。お前も吸うか?」


反応がないからまぁ吸わないかと思ったが、トリはおもむろにシケモクを口に咥えたから火をつけてやった。



まだまだ寒い季節だったが2匹は夜が明けるまで一緒にいた。これがブッコローとトリの出会いだった。



その日から2匹はこのコンビニでよく会った。というよりブッコローが晩飯を買いに来たらそこにいつもトリがいた。出会うとブッコローはいつも愚痴やしょうもない話をトリにしていた。トリは相変わらず何もしゃべらず相づちの一つもしないがただ聞いていてくれた。この時間がブッコローは嫌いではなかった。だから晩飯はいつもこのコンビニで買っていた。




いつものようにコンビニの前で2匹でいるときだった


「みつけた。おい間仁田、やれ。」

「了解。」


間仁田と呼ばれた男は手に持った猟銃の引き金を引いた。辺りに響く銃声。トリは悲鳴も上げず血を噴出して、倒れた。


ブッコローには何が起きたのか理解が出来なかった。トリは声を出さずただ苦しんでいた。


「おい間仁田、まだ生きてるぞ。」

「了解。」


間仁田が猟銃を構える。


「まてーーーーー!お前たちは何者だ?なぜこのトリを狙う??」


ブッコローは叫んでいた。


「なんだこのミミズクは。お前こそなんだ?。まぁいい、確かに名前も名乗らないのは社会人としてよくないな。私は岡崎、でこっちが問仁田。そして後ろにいるのが郁さん。3人とも有隣堂で働いている。」


「どうして本屋さんがこのトリを狙うんだ。」


「あなたこのトリのこと知らないの?このトリはねカクヨムのマスコットをしているの。」


「でも、だからってなんで。」


「私たちはね、今度有隣堂のユーチューブチャンネルを作ることになったの。そこでね、そのチャンネルのMCに鳥のマスコットを起用しようと思ったの。でもすでに人気のある鳥型のマスコットなんていくらでもいるじゃない。だからね、みんなで考えてね、すでにいる鳥型のキャラクターが全員いなくなればいいんだってなったのよ。それでこの子が一番最初、この子が終わったら○○にでてる×××とか△△の□□□も全員やる予定よ。」


こいつ、笑顔でなにを言ってやがるんだ。


「まぁでも安心して。あなたみたいな全く無名のミミズクには関係ない話だから。わかったらそこをどいて。」


「・・・だめだ。そんなこと絶対させない。」


「そこをどかないならもういいわ。間仁田やって。」


「了解。」


間仁田はブッコローに向かって猟銃を向ける。ブッコローは間仁田の方にすごい勢いで詰め寄る。猟銃の引き金がひかれた。ギリギリのところで弾丸をよけたブッコローは、間仁田の顔面に向かって蹴りを繰り出す。間仁田は急いで2発目を打とうとする。


いける。俺の方が速い。ブッコローがそう思った瞬間、ブッコローの全身に衝撃が走った。



「猟銃にビビらない鳥がいたとはね。」



今まで沈黙を保っていた郁さんと呼ばれた女がブッコローの喉元をつかみ地面にたたきつけていた。


ぐはっっっ?!!何が起きた?!!!

速すぎて何も見えなかった。体がうごかねぇ。


「すいません、郁さんの手を煩わせてしまって。」


間仁田が郁さんにあやまった。


「別にいいわよこれぐらい。・・・このミミズクもう体が動かないはずなのにまだ私のことを睨んでいるわ。いいわね、あなたみたいな子嫌いじゃないよ。名前はなんて言うの?・・・あっ、ごめんなさい、これじゃあしゃべれないわね。」


そういうと郁さんはブッコローの喉を押さえていた手を放す。


「お、俺はR.B.ブッコローだ。こんなことはやめろ。」


ブッコローは掠れた声で言う。


「わかったわ、あなたの言うとおりやめましょう。このトリにも他の鳥型のマスコットにも手は出しません。」


郁さんは笑顔で言った。


「え、郁さん、でもそれは、、」


「間仁田、あんたは黙ってて。でも条件がある。ブッコロー、私あなたのことが気に入っちゃったの。だからあなた有隣堂のユーチューブのMCになりなさい。そしたら誰にも手は出さないと約束するわ。」


「だ、だれがお前らのユーチューブになんか・・」


「それならそこのトリも他の奴らも全員さようならだけれどいいの?」


「・・・わかった。・・・やるよ、お前らのユーチューブのMC」


こうして始まった有隣堂しか知らない世界。有隣堂の闇を明かそうとするブッコロー、それを押さえつける有隣堂の社員たち。楽しい動画の裏で日曜劇場のような熾烈な争いが今日も行われている。


俺は絶対に負けないぞ!!お前らの闇、全部暴いてやるからなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


という夢をブッコローは見たのだった。


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ブッコローは戦う。闇に落ちた有隣堂と。 ネウト @oriudneit

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