【仲良くね!】落とした本を探しに行く世界②⑤⑥~
!~よたみてい書
大自然での小さな冒険の世界
「いやブッコロー、いくら可愛いミミズクを見つけたからって、こんな人気のない、木々が生い茂った場所まで追いかけて行かないでよ……」
頭の中で強い意志を思い浮かべながら、ブックローのまっさらな白さを保っている右目に視線を戻す。
「ごめんよ。だってあまりにも可愛かったからついね。……まぁ、そんなふてくされた顔しないで、楽しんでいこうよ、ね。ほら、薄暗い密林のせかーい!」
「いやいや、こんな薄気味悪い森、なのかな、場所で楽しむって無理があるでしょ。正直、何か出てこないか不安と恐怖でそんな余裕ないよ」
「大丈夫だって、なに怖がってんの! ほら、この
確かにこの薄暗い森の中でその場違いな虹色で鮮やかな羽角は周囲の雰囲気を一変させる可能性を持っている。
しかしそれでもまだまだ私の不安を消してくれるほどの強い味方とは言えない。
私の身長の半分も無いブックロー、その口部分と思われる場所から伸びている黒い口ばしから、周辺の景色に視線を移す。
怖くて足の進みが重い。
本能が引き返した方がいいと告げていて、それに従いたい思いが強い。
だけどブックローのことも助けてあげたい思いもある。
天秤が左右にグラグラと揺れ動いているけど、引き返す方に傾いてしまったら、今後のブックローとの関係に問題が生じるだろう。
それはしばらく恐怖にさらされる時間を過ごすことに比べたら、とても重大な事だ。
ある意味そっちの方が恐怖かもしれない。
ブックローの大きな影に会話を投げかけて、この恐ろしい時間から与えられる感覚をまぎらわせねば。
「それで、どこら辺に本を落としたかは分かるのかな?」
「それが分かったら苦労しないよ。だって見て見なよ、周りどこも緑、緑、ミドリ……一人じゃキツイって」
「長方形だから見つけやすいってわけにはいかず、こう緑が生い茂っていると保護色みたいになって難易度が上がってるね……。あ、その黄色い左目でも見分けられないの?」
「暗視はできても識別機能は付いてないから!」
数時間ほど森の中でブックローが落としてしまった本を探し回る。
正直、精神的な疲れももちろんあるけど、足腰にも疲労が蓄積していた。
そして、ブックロー、いや、大きな巨影が喜びの声を上げなら前方に駆けていく。
「あっ、あれかもしれない。見つけた! 見つけたよ!」
「えっ、本当!? よかったぁ……」
「本当だよ。まったく手間かけさせやがって」
「落とした本人が言うのはどうかと思うけど」
黒い影から触手が伸びていき、パンパンッと本のカバーを軽く撫でて付着した汚れを取っていく。
それから綺麗になった緑色の本をブックローの右手の脇に差し込んでいった。
「さあ、帰りますよ。何か出てきてもおかしくないからね」
「言わないでよ。考えないようにしてたんだから」
ブックローと共に、
そして数十分後。
お互い疲れているのか道中での会話は
いやむしろ喋っていなかったといった方がいいだろうか。
それほど疲れているのだ。
けどそれももう終わりだ。
木々を抜け、目の前に人々が暮らしている景色が見えてきた。
ブックローにこの喜びがこもった笑顔を見せようと、常に左を見ている左目に視線を向ける。
何かがおかしい。
疲れてるから喋らないのは理解できる。
でも、そこに強い違和感があった。
私の横に居るブックローからは、周囲の雰囲気を一変させる力が感じられなかった。
そしてものすごく小さい。
疲労で視界がおかしくなったのだろうか。
それにしたって、言葉じゃなくて何で鳥の鳴き真似をしているのだろう。
「……えっ、キミだれっ!?」
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