パーティーリーダーが女関係でもめてるけど追い出されたワタクシには何の関係もありませんね

あがつま ゆい

第1話 呪術師、追放される

「ナーシェン! どういう事だ!?」


 宿に泊まってからの早朝。俺、フランシス=ドゥーヴァルトはパーティーリーダーのナーシェンから突如解雇通告を受けた。




「俺には何の落ち度もないぞ? そりゃあこのWEB小説は追放ざまぁ物だから主人公である俺を追い出さない事には話は始まらないって言うけどさぁ」


「その虚言癖が良くない!」


 パーティーリーダーのナーシェンが口をはさむ。その表情からして、かなりのご不満を抱えているようだ。俺にはピンとは来ないのだが。




「俺たちは他のパーティーの模範となるほど有名になった。その意味の分からん虚言癖は模範としてふさわしくない。残念だがお前には付き合ってられん」


 追放ものとしてはありがちな随分とムチャクチャな理由だ。説得力は正直、薄い。




「それに、お前は俺の事を信用してないじゃないか! 俺が女関係でもめないように常に裏工作してるんだろ!? 俺は知ってるぞ!」


「年齢が1ケタの時に『大きくなったら勇者になってハーレムを築きたい!』っていう夢を俺に語った奴が、今では一途です。って言われてもはいそうですか、って信じる気にはなれないね」


「それは子供の頃の話だろ? 今は成長したから違うと言っても良いんじゃないのか?」


 どうだか。最近のコイツは女関係ではパーティーメンバーのイーリスに落ち着いているように見えるが「三つ子の魂百まで」とは言ったものだ。根本の部分は子供の頃から変わらないのが相場だ。

 いつメッキがげる事やら……。




「イーリス、お前はどうなんだ?」


 俺はパーティーメンバーの「しさい(司祭)」であるイーリスに聞く。彼女の意見次第では何とかなるかもしれない。


「フランシス、私としてはあなたは活躍しているとは思うわ。でもナーシェンが言うから……ごめんなさい。彼の事は裏切れない」


 イーリスとナーシェンは「魔王を倒したら結婚しよう」と指輪までもらってる仲だ。恋人を裏切るような行為は出来なかった。




「……で、俺が抜けた穴はどうするんだ?」


「お前の穴は彼女が埋める」


 ナーシェンが合図すると軽装で派手な衣装、右手には魔力で動く拡声器マイクを持った12歳の少女がやって来た。




「今が旬の新ジョブ「あいどる」の開祖の弟子、ライムだ。お前の代わりだ」


「うわぁ……ちょっと待てよ女関係でギクシャクなんてバンドが解散するお約束の流れじゃねーか。お前自分からクレイモア地雷レベルを踏んでどうすんだよ?」


「だから何だそのバンドだのクレイモアとかいうのは!?」


 またもやナーシェンの怒声が響く。




 俺の生きてる世界では十数年に1度は新ジョブや新技術の発見で各種職業のパワーバランスに変化が起きる。まぁお前たち読者からすれば「アップデートで新キャラや調整が入る」とでも言えば分かりやすいか?


 説明セリフ続きで大変申し訳ないが「あいどる」というのは最近できた新ジョブで、バフ……つまりはパラメータ上昇やグッドステータスを付加する専門職だ。ちょうど俺の正反対に位置する。




「つまりはアレか? 正義の勇者パーティにおいてはデバフ特化の根暗な俺みたいなやつは不要だとでも言いたいのか!? ええ!?」


「分かってるじゃないか。大体はそういう事だ」


「はいはい、そうですかいそうですかい。良いのか? 俺が抜けると追放もののお約束でお前たち落ちぶれる羽目になるぞ?

 一応は仲間である俺もそういうのは見たくないし、なによりあがつまの奴も子供を殺すようでやりたくないらしいぞ。今なら間に合うぞ?」


「もう遅いんだよ! 何もかも! お前の虚言は聞き飽きた! 今すぐ出てけ!」


 勇者様であるナーシェンが、青筋を浮かべつつドアへ向かって指差しながら怒鳴る。パーティメンバーも皆険しい顔をしている。特にライムとか言ったか? 新入りの顔はことさらそう。

 結局出ていくしかなかった。

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