平和維新物語

豆腐屋 虎之助

第1章 はじまり

第1話 最初

<嘉永7年6月15日>

<伊賀上野>

【根本うい】

「もっと助けられたのに…。」


けど、転生から約一か月、時間はあった。

神様から地震があることは聞いたはずだった。



18546月15日>

大きな揺れに飛び起きた。

『地震?』と思い周囲を見渡すと、ものが落ちたりはしていない。

窓を開けてみても、煙が立ちこめる様子もないのだが…。


が、なんだか様子が違う。

外はじめっとして、多少蒸し暑い。

勤務先の倒産に伴って、慰労会と称して飲み明かしたため、

日は傾き、夕方になろうとしていた。

寝る前までは春の陽気で過ごしやすかったはずなのに…。

心を寄せた散りかけのサクラも見えない。


「パパ!?ママ!?おねぇちゃん!?」

一緒に住んでいるはずの家族も見えない。


が、電気はついている。

「ガス、水道はっ!?」

ライフラインの確保に急ぐ。


「水道OK、ガスも問題ないみたい。」

安堵するとともに、状況把握のためにテレビをつけようとリモコンに手を伸ばす。

その瞬間テレビが勝手に点灯し、びくっとする。



「根本ういよ」

???

テレビが呼び掛けてる??


「根本ういよ!」

「はいっ!」

脊髄反射で答えてしまう。


「勤務先が倒産したからといって情けない」


「…大問題なんですよ!

 ってか、某RPGですかっ!!

 あれは王様の役目ですっ!」


「まぁ、冗談はさておき、お主が来たのは1854つまり、7の6月15日じゃ。

 これから地震が起きる。

 歴史に残る大地震になる。

 現世で活動できない我に代わって、民を救ってほしい。」


「えっと…、私じゃ無理です…。

 ってか嘉永って??」

そんな大それたことできるはずない。

ってか、『嘉永』ってなに?


「幕末の年号じゃ。

 まぁ、詳しいことはお得意のネットで調べればよい。

 もちろん、力は授けてやる。

 『収納』じゃ。いろんなものを収納できるぞ。」


「えっと、それだけではさすがに…。」

なんかショボそうな能力だけで地震を防げって、無理あるでしょ。


「わかっとる。『惣菜』を買えるようにしておこう。

 ただし、そのお金は生前のお主の資産と、

 『書物』を売って稼ぐ金で支払うのじゃ。」

ん???

なんかいっぱい情報が!


「情報過多ですっ!もう少しわかりやすくっ!」


「まぁそうじゃろうのぅ。

 お主の携帯にステータスを表示できるようにしておくでな。

 後で確認しておくがよい。」


「あ、りがとうござい、ます?」

なんか恩の押し売りされた気分…。


「あぁ、そうそう。

 お主の寿命は姉にリンクしておる。

 今は姉の寿命分、お主は長生きできるが、逆にお主が死ねば道連れとなる。

 結婚早々に不審死にならぬようにせぬとな。」


「なんでそんな大事なことを一方的にっ!!」

無茶苦茶だ!


「まぁ、その分、お主が一人救うごとに姉の寿命が1日伸びるから、精進せよ?」


「ちょっとっ!!」



テレビはザーと周波数が合わない放送のようになって消えた。


いっとき呆然としたものの、バタバタと自分の部屋に駆け込んでPCを起動する。

起動を待つ間にステータスなるものの確認のため、携帯を操作する。


新しいアイコンが追加されてる!


[ステータス]

名前:根本うい

年齢:24歳

収納:残125/128GB ??? ???

所有:家

ギフト:加護(土地)

購入可能:惣菜

売却可能:書物

残金:358万円

生命リンク:姉


「一覧にしても分からないことがいっぱいだ…。

 って、私23歳だしっ!24歳は下おねぇちゃんだよ…。」


そうこうしてるうちにPCが立ち上がる。

神様?がネットで調べろって言った以上、

たぶん、関連する情報がある、はず。


「とりあえず地震について、『嘉永』『地震』っと。

 『Wiki』先生教えてっ!」


『安政の大地震』

「嘉永じゃないしっ!」


『安政の大地震』

①特に1855年(安政2年)に発生した安政江戸地震を指すことが多い

②この前年にあたる1854年(安政元年)に発生した南海トラフ巨大地震である安政東海地震および、安政南海地震も含める場合もあり

③さらに飛越地震、安政八戸沖地震、その他伊賀上野地震に始まる安政年間に発生した顕著な被害地震も含める。


つまり…、現在地的に最初の地震ってこと?

地震の救出・支援なんてできることは限られる。

仲間がいればいいんだけど…。


ふとスタートバーの時間アイコンを見る。

『1854年6月15日16:13』

2000年問題はどこ行った??

役に立たない日めくりカレンダーを見て考えていると、カレンダーの下部に『旧暦』に気づき、急いで机に向かって検索をする。


「ん~と、嘉永7年が安政元年で~、1854年が~…。

 んがーーーー!!!!」


ややこしさに頭を抱えて机を叩く。

裏紙を持ってきて一つ一つ整理していく。



「つまり、

 『地震が起きた日』は、嘉永7年6月15日。

 『7615』は『185479

 つまり、1854年6月15日からしたら、一か月弱ある。

 どうやら神様、西暦と旧暦を間違えてるみたい。。。

 だけど、時間ができて助かった。。。」


「なら、まずは能力、ステータスの確認!

 先ずは分かり易いとこからかなぁ…

 『惣菜』を『購入』できるんだっけ…。

 って、何が買えるの??」

と、イメージするのは高校の時にバイトしてたスーパーの惣菜。


「ん~、唐揚げ食べたいなぁ…。」

と携帯から通知音が。


『購入』のアイコンが増え、唐揚げが選択され、

『購入しますか?』とフリップが出てる。

とりあえず、『はい』を選択する。


が、出てこない。

他にも日替わり弁当やお刺身などを想像して購入していくが、一向に現れない。

が、残金を確認すると購入分だけ減っている。


「あぁ~っ、もうっ!能力の使い方まで教えてくれたっていいじゃないっ!」

部屋で独り叫んでしまう。


「次っ!『収納』ねっ!!」

持っていたペンを見て収納と念じる。

するとペンが消えた。


「え?なになにっ?」

条件反射で携帯を見ると、『収納』のアイコンが追加され、

『ペン』という項目と共に唐揚げや日替わり弁当などの項目があった。


「『収納』できるってことは、『取り出し』できるってことじゃぁ?

 ペンを『取り出し』!」

手のひらからペンが机の上に転がる。


「!!

 じゃぁ唐揚げもっ!?」

パックの唐揚げが机に落ちる。


「うまうまっ。

 やっぱここの唐揚げはひと味違う!冷えても美味しいのよねぇ~」

人心地付き、『後は明日でいっか…』と眠りについた。

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