電線上の黄ばんだ眼

@oppai092

第1話フクロウのように見える

 都会の街路樹に首つり死体がぶら下がっていた。自暴自棄故の自殺か、はたまた反社会勢力の報復か、我々には知る由もない。荒縄が喉を引き締める。そこで宿無しが通りかかると、着ている衣服をはぎ取っていった。毛深い超えた肢体があらわれる。たるんだ下腹には四方八方に毛が入り乱れ、太ももはカエルように内股を開いていた。汚れた玉袋が一物と共にぶらんと揺れ動く。

 遠方の電線上で丸い目玉が二つ、それぞれ反対方向に回っていた。そのうち右目が黄ばんでいる。周囲の住人はそれに一度興味を示し、少しの間、窓の内から見物していたものの、次第に不気味がってカーテンを閉めていった。月にかかっていた雲が風によって飛ばされる。オレンジ色のミミズクのような外見があらわれる。すると一度双方の瞳が月光に向いたかと思うと、星々が点々と輝く夜空に飛び立っていった。

 死体に向かって、オレンジ色の翼が向かってくる。それは残像となり、死体の首元を横切った。縄の食い込みを境として、頭と胴体が切り分けられる。鈍い音がして二つがアスファルトに落ちた。するとその残像は次第に速度を落とし、死体の首より下の部分と接合した。

 直後、その異形の怪物は、人間の手を付いて立ち上がると、蟹股の体制で走り出した。脂肪の詰まった腹部が激しく揺れる。そして、若い女性を見つけると迷わず腰を振った。このミミズク人間は恋愛エネルギーで動いているのだ。

 腹を地面に着け、平泳ぎ。目玉はスカート覗き込む。

「ホーホー」

 時折、陰部が体を持ち上げる。その姿、まるでトビウオのようであった。

 数分の後、通報により警官が駆け付けた。それを取り押さえようと勃起により身体が浮き上がった瞬間めがけて手を入れた。太った身体がひっくり返される。

フクロウ人間は空に向かい地団太を踏むと、手錠をかけられ連行されていった。後に、取り調べが始まるのである。

 後日、ミミズク人間のうわさが広まった。何でも、ミミズクのマスクをした変質者が出たというのである。人々は不振がった。そしてそれは、トビウオ体制の正面から見た姿がまるで本を開いたようであった事から[book]に[low]を合成した、「ブッコロー」という名前で呼ばれることとなった。

 そう、お気づきだろうがこれは読者諸君も見覚えのあるあのマスコットの過去である。今でもあの机下には肥えた肉体が埋まっているのである。10年後、勘の鋭さを見込まれ、有隣堂で働くことになることはまた別の話。

 



 

 

 

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