第04話 達成率0%


 夕食も肉ざんまいだった。

ケプッ。失礼。

部屋の椅子に座り、水差しから酒精の無いエールを注ぎ飲む。すっぱ。


 整理しよう。

やはり、間違いではないようだ。

ネクスード帝国第二王子、セッカード・ア・ネクスード、10歳に転生したようだ。

ただ、ふっくらさんだ。


15歳なので今から5年後に、帝国から亡命させ、本編の王国学園に帝国第一王子を編入させることが目標になる。


という事で、自分一人で何とかするわけだ。

転生した支援者達は、本編の学園のあるイーチオーシ王国の王都メイナール付近に集中しているだろう。

ほとんどの主要攻略キャラクターがいるから。

ネクスード帝国には、他の転生した支援者はいないと思われる。


セッカード・ア・ネクスードは、5年後に簒奪者となる。

第一王子を亡き者にしようとするが、隣国に亡命される。

そして、帝王をその座から追いやり、幽閉し国を奪う。


そののち、ストーリの流れによっては、サブストーリーで勇者たちに討伐される。

魔族に通じていたという理由だったかな。


サブストーリーのボスなので、第二王子は結構な強キャラ設定だったはず。



 本来は銀髪に蒼い目の痩身、氷結魔法を極めた魔法剣士だったよな?

悪逆非道で冷酷無情の王子ぃ?


あれぇ、傲慢で怠惰で素行不良だが、ぽっちゃりさん。

その上に力もないんですけど…。

この辺が、女神の強制力が及ばないってことか。


小さな不具合が積み重なって、整合性が取れなくなるような感じ。

メインキャラクター以外は、興味ないからおざなりなのかもしれない。


 さてさて10歳だと、小4あたり。

こいつ、魔法系の初級しか勉強の記憶がない。

しょぼい魔法しかできないようだ。


剣の練習もさぼっている。

運動もせず、食っちゃ寝。あー帝王と同じか。

暇があれば、メイドにいたずらというには質の悪い暴力。


短気で癇癪持ち。虚偽で数人辞めさせてるな。

精通はまだ始まってないようだが、あーなんか知識だけはありやがる。

くそな計画も立ててやがる。あっぶねー、R18寸前だったよ。

クズである。


設定には近い。


 そして第一王子だが、あれだけ食って痩身なのだから大丈夫だろう。

身体的にはだ、だがこの王子の能力はどうなんだろう。


食事風景を見ただけだと、帝王と同じように食いまくっていた。

かなり大食いだった。


王位継承順位一位なのだから、帝王学とか教師などはつけられていると思いたい。

最低限の知識はあると信じよう。

今は二つ年上の12歳。火炎魔術の魔法剣士のはず。

立っていれば貴公子然とした、俺様系の美貌の王子に見えるんだがな。


簒奪を成功させ、亡命させるほどに、力を誇示する必要がある。

派閥があるはずだし、軍隊とか、えっ力でねじ伏せられるのコレ、あと5年。


それでいてキャラクター的に、悪逆非道の名声を受けるように振る舞う。

名声は、すでに受けているので大丈夫。

メイドさんが怯えるのよ。


 まあ、それが成功したとして。

たしか、魔族に通じていたから第二王子は討伐されたはず

魔族には近づかん。

サブストーリー扱いだから、討伐ストーリー自体を無くせるかも知れん。

これはフラグ回避してもいいだろう。

メインストーリー通りなら、アドリブOK言ってたしな。


 女神からは、協力してもらえるのであれば、報酬は出すとの事だった。

しかも、うまくいけば成功報酬も追加で出すとの事。


女神の世界であれば、別の世界へ好きな転生も可能。

能力でも権力でも、何でも好きに与えた上で再転生させてくれるとの話だ。


メインヒロインでの転生さえも可能だとの話で、女性たちは盛り上がっていた。

パラレルワールドになるのかな。


女神が言うには、一度成功すればレコードから再現が可能になるので大丈夫との事。

セーブ機能かな。


「でも、非協力、妨害した際は、………うふふっ。」


と、三日月の笑いを見せ。

ぼそっと小さな囁き。


「…記憶残して虫転生…」


って、ぼそっと言った。聞こえたよ。


 しょうがない。まずは、痩せるか。

このぽっちゃりさん加減は、冷酷王子のキャラではないなあと思う。

ほのぼのさんだよ。

ストレッチとウォーキング、あと剣術と魔法と、いろいろ準備しないとなあ。



女神さまにお願いされたけど、討伐されるのは嫌なので、冷酷王子は魔族に近寄りません。でも簒奪者のキャラ設定があるので悪逆非道します。

って感じかな。



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