女神様は異世界で乙女ゲーを楽しみたい「あー、俺は討伐されそうなんですが!?」

ドンヨリ

第01話 いきなりぶっちゃける女神様



「あなた達には、私の世界に転生してもらうわ。」



 気づくと、俺は真っ白な世界にいた。

帰宅途中で交差点を渡っていたはず、前から有名女子高のグループが歩いてきていた。

そうそう、今隣りに座り込んでいる制服の娘に似ている。

周りには、帰宅途中の俺の様なサラリーマン。

学生グループ、エコバック持った主婦など、数十人の人達がいた。


「おい、おまえ俺に何をした!」

「僕は、知らな…」

「てめーが、呼び出したんだろうが!!」

男子学生達が、もめ始めている。


「あら、奥さんひさしぶり。」

「やだ、奥様も〇〇スーパー?」

「そうなのよ。チラシに5時の限定の、卵1パック157円!」

「「「お得よね~。」」」

エコバックの中身を見せながら、主婦の奥さん達が普通に話を始めた。


「タクシー!?、どういう事だ。乗っていたのに!急いでいるんだ!」

「知らねーよ。ここどこだよ。ラーメン食ってたはずなんだがな。割り箸あるしw」

俺と同じように、スーツ姿のサラリーマン達。



「あなた達には、私の世界に転生してもらうわ。」



「ここどこなの。」

「わからないわ。ホームではないようね。」

「ああー、先輩もいる!よかった。」

「後輩ちゃんじゃん、おひさ~。」

「ブリでっすーう。」

「どうもっす。」

見たことない制服の、女子高生達。


「伝線してるんですけどー。」

「うけるう。」

「これから店なのにー、ボトル入れさせちゃる。」

派手な服装の女性達。

他にも、知り合いがいないのか纏まらずにいる人達。

グループになっている人達に、ここがどこか訪ねている人もいる。

あの女性、ロープなんて持ってるし。

ドン、ドン、ドン!


「おまえ、達、私、世界、転生!」


はあ、はあ、はあ。

どこからか荒い息遣いが聞こえる。


なんだって?



 視線が前方に集まる。

いつからあったのか、一段高くなっていて、その上に白い椅子の様なものがある。

椅子には、誰かが座っている。

前方の椅子の方から、後光の様な光輪が現われだす。

神々しい光が空間にあふれ出す。どこからか綺麗な鐘の音が響く。



「あなた達には、私の世界に転生してもらうわ。」



 眩しい光があふれる中から、金髪が足元まで垂れる長髪。

白のゆったりとした古代ギリシャの様な布を、肩の片方で止めた服を纏い。

金のサークレットやベルト、アンクレットなどで着飾った美しい女性。


やおら立ち上がり、バサっと両手を広げ、話しだす。

「乙女ゲームは最高の文学、人類の英知、至高のエンターテイメント。」

なにをいっている。

うなずく周りの女性達。………なんだと!?


「私は世界を作り、見つめる者。」

「私は、私の為の、私だけの、私の一番のキラキラした世界が欲しいの。」

「だから、最高の世界を作ろうとした。」


「でも、人生はゲームじゃない。」

「そして、世界は残酷。」

「乙女ゲームと同じような世界を作り、強制力をかけても物語は破綻する。」

「何度も何度も何度も何度も世界を作って、………結ばれない、バッドエンド。」

つーっと語る女性の白磁の様なかんばせを伝い、金色の目から涙が流れる。


「私は永遠の探究者。キラキラをあきらめたくない。」

「でも、私だけじゃダメなの。あなた達が必要なの。」

「なので、協力していただけますね。」


………はあ、であなた何者。


 異世界の女神でした。

俺たちは、同時刻に事件や事故などによって死亡する予定の人間なのだと。

そして、その中からあるゲームが理解できる者だけを選別した。

それをここに召喚をした。

そのように集められた人間だと説明を受けた。


女神の提案を飲み協力するのであれば、今の記憶があるまま異世界に転生。

拒否した場合は、そのまま同時刻に戻される。

ただ、そうすると普通に死亡するとの事。

各々に降りかかる予定の事象により、結果を知っても回避できないとの話だ。


「ひどい。」

「神なら何とかしろ。」

「横暴。」


管轄外です、あなた達の世界の神にご相談くださいと、役所的説明で終わった。



 さて女神がご執心のゲームなのだが…。

乙女ゲーム「プリンス☆プライド☆プロポーズ ~王子様はイロとりどり~」

通称「プププ」


所謂、剣と魔法の中世的世界。

舞台は貴族などがいる王制の国。そして、農業が盛んな豊かな小麦の国。

始まりは、魔獣の生存権の拡大が起こり、人族の領域にあふれ出してきた。


 人族同士での争いは休戦し、浸食された領域の奪還が開始される。

その際に、聖女の出現の神託がされる。

平民から聖女として見いだされる少女がヒロイン。


 王都の学園に入学し、仲間を増やしたり、恋の駆け引きをしたりと過ごす。

そのなかで力を蓄え、力や愛を育んでいく。

勇者や王子、貴族や各国の王子たちを巻き込みながら、成長していく。

そして、魔を倒すべく心ひとつにし、勇気と愛の力でハッピーエンドを目指す。

そんなよくあるストーリー。


 ゲームだけでなく、アニメ化もしていたはずだ。

 あー。

俺も確かに知っている。

いつも見ていた押しの動画で、ゲーム攻略してたのを見た。

真面目というより、面白おかしく解説していたのを記憶している。

逆ハー攻略がむずいとか言っていたなあ。

それで、ストーリーとか設定とか調べたもんだ。



 そして、女神からの説明が続く。

「プププ」のシステム、設定を真似た世界を構築したとの事。

でも、思惑通りに進まない。何度もやり直しをしている。


 1柱の力ではできないのなら助手が必要。

そう、このゲームを知る者の手助けが必要と考えた。

そして、その者を攻略キャラの周りに転生させる。

ゲーム通りに進行するように導いたり、修正するように現地協力を要請された。


では同意を得られたならばと、女神がバッと腕を振るうと、目の前に何かが浮かぶ。

ホログラフ?転生キャスティング表?


 女性達は、きゃいきゃい言い合いながら選び始める。

攻略キャラの姉妹や、メイド長やら役職付きの近づける立場への転生を決めていく。

近場で、押しキャラが見れると鼻息も荒い。

元々乙女ゲースキーが集まっているので、否定する者がいないようだ。

あっ、じゃんけんしている。


女性側がトントン拍子に決まると、今度は男性側の様だ。

見せられるキャスティング表。


第一王子のライバル。

第二王子のライバル。

 ・

 ・

 ・

第一王女の使用人。

悪役公爵令嬢の庭師。

 ・

 ・

 ・

勇者の親友。

放逐される男性教諭。

亡命する王子の弟。


えーと。

噛ませ犬、噛ませ犬…根切、幽閉…失踪、投獄、討伐。

うーーん。ダメじゃね。



男性数人は拒否し、女神によって元の世界に返還された。


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