綺麗なあなたを壊したい

うめもも さくら

ただ私は憎しみに溺れた

たとえば、真っ白な雪に足跡をつけるように。

たとえば、美しく飾りたてられたケーキにフォークをさし入れるように。

たとえば、綺麗に盛りつけられたパフェをスプーンで掻き混ぜるように。

たとえば、澄みきった水辺を泥のついた靴で踏み荒らすように。


汚れのない人をドロドロにするのってとっても楽しい。

汚れを知らない心をみにくいものでぐちゃぐちゃにするのってすっごくたのしい。

私を壊したすべての人たちが、私から全てを奪った人間たちが、ただむなしい声をあげながらむごたらしく残酷に、目を背けたくなるほど凄惨に、カタチが残らないくらいボロボロになっていくのがひどく愉快で快楽的でたまらない。


でも今は……そう。

すべての人たちなんてどうでもいい。

どれもこれも似たようなもの。

見飽きてしまった。

汚らしいつぶれた声も、醜く薄汚いものにまみれた姿も、破れかけたボロ雑巾のようにズタズタになった末路まつろも。

何もかもが、つまらない。


でも、あなたはちがう。

あなただけはちがう。

そのいつでも涼しい顔をして爽やかな笑みを浮かべているあなたのこともぐちゃぐちゃに掻き乱して、ドロドロに狂わせて、ボロボロに壊してしまいたいの。

ただ今は、それだけ。

いつでも四六時中、何をしていても、何を見ていても、何を考えていてもあなたのことを想ってる。

どんな表情で私を見てくれるのか。

どんな感情を私に抱いてくれるのか。

どれだけゆがんで、どれだけ汚れて、どんなふうに壊れてくれるのか。

そんなことばかり、そんなあなたのことばかり想っている。


ねぇ、私の気持ちをわかってくれる?

ねぇ、私の想いに付き合ってくれる?

ねぇ、私の快楽を受け止めてくれる?


これは、恋なのか。

これは、愛なのか。

これは、ただの執着しゅうちゃくなのか。

それは、わたしにもまだわからない。


ただ、私は憎しみに溺れた。

ただ、そう、私は。

ただ、私は綺麗なあなたを壊したい。

ただ、私の願いはそれひとつだけ。

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