フルレバとギャン中の市場

@pty029

フルレバとギャン中の市場

 中学をえてすぐおれは職についた。バイトの掛け持ちフリーター・ボーイ。難なく金を貯めた。取り柄は数字、すぐテクニカルを覚えたほどだった。デモトレはそつなくこなした。

 

 十八になったおれは取引口座を開設した。思い出した。おれは破産で自殺した転生者だ。


「あと一万円! レバ千の救いぎょくでクソポジが助かるのに、助けて! 億りたいだけなのに、嗚呼、狩られた。もう借金だけだ。荒縄で清算する。ぐっ」


 死んだおれに神はこう言った。


「フルレバのギャン中め! だが我は寛大、機会と力を授けよう!」


 そしておれは取引所、魂の故郷に帰還した。いまや魔法チートと過去知識チートがある。次こそ億る。

 

 おれは取引をはじめた。変動性ボラティリティが高い暗号資産で、だ。


 はじめは儲かった。空売りショート空売りショート空売りショート。売りたかったから売り増した。三百万が一千万。お゛っ♡


 資産は三千万、五千万。んあああああ脳汁ンギモッヂいいいい!!!


 トレンド転換。


 急騰の乱打。こんな垂直上げは続くはずがない。期待を裏切り空売りショートのロスカが多発、資産は削れてジリ貧。

 

 勝負に出る。くたばれ電子ゴミ!

 チャートはキーリバーサルの三尊、フルレバ・フルロットで空売りショート発射!


 上昇。


 首が締まる。俺の金が、いっ息ができないっ! メンタルはぐちゃぐちゃだ。


 無慈悲な垂直上げ。


「あああああ! おかあさあああああん!」


 終わった。呆然とモニターを見つめる。腹から湧き上がる憤怒。


「うおお死んでしまえええええ!!!!!」


 おれは手を掲げ【ロンガーわからせ棒】、赤いローソク足を召喚。魔法チートだ。

 

 手を振り下ろす。


 赤いローソク足は下落して、モニターを、床を、地殻を、モホ面を、マントルを、外核を、内核を貫通する大暴落となった。


 ローソク足のせいで地球は真っ二つに割れる。


「なぜ空売りする前にチートで暴落させなかったのか? 分からぬ。ギャン中げに恐ろしき。まあ暇つぶしになった。さて新しい星を作ろうぞ」

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