第2話 老紳士によるチュートリアル
「チュートリアル?」
俺は選ばれたのでここに拉致したとか言い張るジジィの言葉をオウム返しする。
「左様でございます。中村様がこの先生き残れるように、少々説明させていただきます。では、まず右手の人差し指と中指を合わせ、このように振ってください」
ステュワードに言われた通りに顔の前で振ると、突然青い画面のようなものが出現した。
「おわ!!」
突然のことに仰け反ってしまうが、落ち着いてよく見てみると、このようなことが書いてあった。
_________________________________________
中村唯斗 ▼ショップを開く
EXP 0/100
所持金 0G
スキル
なし
視聴人数 ▼コメントを開く
150人
_________________________________________
「なんだこれ?」
ショップとか、視聴人数とか色々気になる点はあるが、とりあえずこいつの話を聞くとしよう。
「順に説明させていただきます。まずEXPとGについてでございます。どちらもモンスターを倒すことで自動的に入手できます。この世界風に言わせて頂きますと、EXPは経験値。所定値を超えますと、レベルアップ致します」
要はRPGのような感じか。レベルは書いていないが、今のところLv1ということだろう。レベルを上げることで身体能力や、動体視力が上がり、体が強くなるという。
「そして、Gについてでございます。こちらは隣にあるショップの欄で使用することが出来ます。武器や食料、回復薬などを購入することが出来ますので有効にご活用ください」
ほんとにゲームみたいだな。つまりは、モンスターとやらを倒さなきゃ何も始まらないわけだ。
「さて、お次は視聴人数と、コメントについてでございます。誠に勝手ながら、あなた様の様子は配信サイトにて配信させていただいております」
「はあ!?」
キョロキョロと辺りを見回すがそれらしきカメラは無い。画面に目を向けると、視聴人数は170人となっている。さっき見た時よりも増えてるな。
「コメントを開くをタップしてください」
言われた通りに▼の部分をタップすると、コメント欄が現れた。
・お
・やっほー。見てる〜?
・これヤラセでしょ?
・それでも面白いから良し!
・いや、流石に少年の様子からしてヤラセじゃないでしょ
・それな。ヤラセだとしたら、少年は男優賞取れるぞ
「なんだ……これ」
俺はヤラセかどうかというどうでもいいことについて議論しているコメントに愕然とする。ヤラセなわけないだろ!そもそも、ここがどこだかも知らないのに。
「嘘ではございませんよ?実際にあなた様の様子は生理的な事をしている間以外は全世界に放送されます」
「もう、分かった。それより、俺はここから出られるのか?」
「ここを踏破すれば、可能にございます」
踏破すればか。そもそも、ここはどのくらいの広さなんだ?
「外の様子は視聴者様が教えてくださるでしょう。では最後にスキルについてでございます。これらは、あなたに超人的能力を授けます。私達からのプレゼントでございます。お好きなものを三つお選びください」
すると、画面が変わって様々な能力がずらっと並ぶ。恐らく、これらをタップすれば、その能力を得られるのだろう。
「ゆっくりとお選びください。視聴者様と相談するのも良いでしょう。最後にこちら、片手で扱えるサイズの剣にございます。これは私からのプレゼントです。どうぞお使いください」
老紳士が何も無いところから、片腕程の長さの剣を出現させると、俺に手渡した。試しに鞘から引き抜いてみると、無骨な剣が見えてきた。
「さて、この層は第零階層。魔物も居らず、チュートリアルのために造られた場所にございます。覚悟が出来ましたら、奥の階段をお昇りください。そこからが、死と隣り合わせの本物の迷宮です」
ここにはモンスターがいないが、ここより上はモンスターが蔓延る、ゲームのダンジョンのような場所ということだろう。本当なら、先に進みたくは無いが、外に出るためにはこの迷宮を踏破するしかない。覚悟を決めるか。
「まずは第五階層を目指すと良いでしょう。では私はこれで。第十階層で再び会いましょう」
そういうと老紳士は消えた。まるで、最初からそこにいなかったかのように。しかし、これは現実だ。手に持つ剣がそれを教えてくれる。
俺は、元気を絞り出して、気分を無理やり上げる。そう、これはゲームみたいなもんだ。異世界転生みたいなもんだろ?
「さてと、じゃあスキルを選ぶか!視聴者も一緒に考えてくれよ!」
・ヤラセじゃなさそうやな
・あの執事消えたが、ワープか!?
・あの執事ならやりそう。強者感凄かったし
・スキル選びかー。ワクワクするな!
・スキル構成組むのが一番楽しいまである
・それな
とりあえず、俺はこの170人の視聴者を頼りに、迷宮を進むしか無さそうだ。恐怖はある。なんせ、命のやり取りなどやったことが無いのだから。
だが、迷宮を踏破するためなら他者の命も奪ってみせよう。俺はここで死にたくなんてない。
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