迷宮探索者に選ばれたのは、俺でした。〜全世界で絶賛配信中!?〜

彼方しょーは

第1話 選ばれたのは、俺でした。

「オラァ!」


手に持った剣を気合いで振るうと、骸骨はバラバラになった。


「ふう……型もクソもねぇけど、案外何とかなるもんだな」



・今、剣の側面で叩いてなかった?

・型どころか剣の意味もねぇw

・なあ、もうそこら辺の鉄パイプで良くないか?

・そしたら、探索者じゃなくてただの不良になってまう

・そもそもこんなところに鉄パイプなんかねぇよ!

・草


一息ついた所で二本指でスライドして、コメントを見ると散々な言われようだった。


「うるせぇ!そもそも剣なんか習ったこともねぇんだよ!」


こんなことになるなんて分かってたら、剣道やっとるわ!


ここは、迷宮の第三階層。八王子の一角に突如現れた馬鹿でかい塔、それが迷宮だ。まあ、本当に八王子にあるのかは知らないけどな。だって俺は外からの迷宮を見たことが無いからな。


「それもこれも全部あのふざけた野郎のせいだ!」



・それはそう

・あの爺ちゃんが首謀者では無いんだろ?

・あいつが私達とか言ってたしな

・じゃあ、首謀者は綺麗なお姉さんかもな!

・だからなんだよw

・確かにw


なにやら、コメントが首謀者がどうのとか言う話をし始めた。首謀者、それは俺をここに拉致しやがった奴らのことだ。しかし、会ったのは二人だけ。総勢何名の組織なのかは知らない。


そもそも、首謀者の性別なんざ関係ねぇ!そいつの顔面に一発お見舞いしなきゃ気がすまねぇんだよ!


「お前ら、首謀者の話はそこまでだ。とりあえず、第十階層目指すぞ!」



・おー!

・まあ、頑張ってや

・酒飲みながら楽しませてもらうわ笑

・サイテー野郎で草。酒うめえw

・最高のエンターテインメントだししょうがないなw


お前ら、慣れすぎじゃね?たしかに魔物の血は出ないからR18とかに引っかかったりはしない。残虐シーンだって俺が怪我しなければ無いだろう。


ああ、早く外に出てえ……

そんなことを思いながら、俺はあの日から始まった非日常の日々を思い出した。





______________


高校の授業中、先生の話は子守唄かと思うほどに眠気を誘いウトウトしていた頃。


突然、下から光が溢れたのだ。あまりの眩しさに一気に目が覚め、驚き立ち上がった。


クラス中の視線が俺に……正確には俺を照らす光に向いていた。


「な、なんだこれ!?」


あまりの出来事に俺は叫び、クラス中がざわざわし始めた。


「なんだよ唯斗。新手の居眠り防止か?」


そんなふざけたことを言い、クラスを笑いに包んだのは親友の晴也だ。たしかに、俺の仕業だと思うだろう。だが、少し待って欲しい。こんなの俺も知らねぇよ!


「いやいや、こんなことするぐらいなら俺は堂々と居眠りするね!」

「いや、居眠りはするなよ。とりあえず中村、その光何とかしろ」


呆れた口調で教師が正論を言う。まあ確かに眩しすぎるもんな。居眠り防止にしてもこれはやりすぎだ。光の発生源である足元を見ると、そこにはいくがく模様の円があった。


「え?これもしかして魔法陣ってや───」


言い終わる前に、光はより一層眩しさを増し、俺を包み込んだ。


光が収まると、そこは洞窟らしき場所の中だった。とても人工物とは思えない。辺り一面が石で、それはコンクリートのように平らでは無い。壁はゴツゴツしているし、天井からはつららのように石が尖っているところもある。鍾乳洞って言うんだっけか?


「……ってかここどこだよ!?」

「ここは、迷宮の第零階層でございます」

「っ!?」


後ろから俺の叫びに答える声が聞こえ、反射的に振り返った。


そこには、この場所には似つかわしくない燕尾服を身にまとった老紳士がいた。その出で立ちは凛としており、ファンタジーものに出てくる執事のようであった。


「誰だよお前!」

「申し遅れました。私、『執事人形バトラドール』こと、ステュワードと申します。以後お見知りおきを。中村唯斗様」


ステュワードと名乗った老人は、恭しく礼をする。その様はまさに執事のようだった。


「なんで、俺の名前を」

「それは当然のことでございます。何せ、あなた様をこの場所にお呼びしたのは、私達の主様方なのですから」

「誰だよ……そいつらは」

「それはお答え出来かねます」


どうやら、この老紳士の主達が俺をここに拉致したようだった。しかし、意味がわからん。なぜ俺なんだ。俺の家は別に裕福でもなんでもない。俺自身がなにか特別という訳でもない。本当に平凡で特筆すべきところは何も無いぞ。


「あなたはその類まれなる運によって選ばれたのです」

「運だと?」

「左様でございます。抽選によりあなた様は見事、迷宮探索者第一号に選ばれたのです」

「迷宮……なんて?」


あまりに予想外すぎるセリフに、思考が追いつかず、つい聞き返してしまった。

こいつ、言ってることがめちゃくちゃすぎる。あの光もこいつの後ろにいる黒幕の奴らの仕業なのか?いや、そうとしか考えられないか。


「迷宮探索者第一号にございます。あなた様はこの死と隣り合わせの迷宮を探索し、踏破を目指して頂きます」

「そんなの無茶だろ!」


ただの高校生にそんなことが出来ると思ってるのか?俺は別に人より少し前向きでも無いんだぞ!?死と隣り合わせとか言われて、はい分かりましたと言えるか!


「ええ、承知しております。ですから、これから私ステュワードによるチュートリアルを始めさせて頂きます」


チュートリアル?




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