第6話
二次会会場に着くと、既に受付を済ませた皆が各々グループを成して座っていた。僕も馴染みのメンバーと合流し、改めて乾杯する。
すっかり彼女持ちに仕立て上げられた僕は、当然のように悪友たちの攻撃の的となる。いよいよ引き返せない空気に戸惑いながらも、酒の力を借りて期待に応える。
「めちゃくちゃ好きや!」
終いにはそう宣言までさせられて、ようやくトイレへと逃げ出すことに成功した。
「すごく好きな彼女さん、写真ないの?」
逃げ出したはずのトイレを目の前に、後ろからかけられた声に身体が固まる。一縷の望みを持ってゆっくり振り返るも、そこには予想通りに
「いや、あれは、その…」
飲み慣れない酒のせいか、言葉が繋がらない。言いたいことがまとまらない。
「山田君の彼女、何か羨ましいなぁ」
かろうじて聞き取れたそのセリフに、頭が真っ白になる。今ならまだ間に合う、訂正しなければ。そう思った矢先だった。
「こらこら、山田くーん
結婚間近の和水を誘惑しないでよぉ」
酔っ払った和水の友人であろう誰かが、ニヤニヤと近付いてくる。慌てた和水はその子を連れて、逃げるように去っていった。
目を覚ますとホテルのソファだった。もちろんドラマのような展開はなく、自分が予約した部屋に僕1人しかいない。
あのトイレ以降の記憶ははっきりしない。
席に戻った僕は、終始機械のような作り笑顔でお酒を飲み続けたと思う。親友の締めの挨拶も、悪友たちとの別れもあまり覚えていない。
ただ、ひどい頭痛と不快感が、昨日の出来事が現実であることを伝えてくれる。
『あんな形で伝わってごめん
実は少し前にプロポーズされたんよ
お互い幸せになれるといいね』
スマホに表示されたメッセージが、僕に残った酔いをじわじわと追い出していった。
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