第9話
地下鉄、
なんかめんどくさそうな見た目だな。
これじゃ無いと祈りたい
「赤羽さんちーす、お久しぶりっすね」
「……」
「こっちの人がマサさんっすか」
「初めまして、マサです」
「……書類持って来た?」
「当たり前っすよ」
早乙女さんが赤羽にクリアファイルごと渡す。
人の趣味にとやかく言わないけどさ。
何でR-18の絵が描いてあるクリアファイルなんだろうか。
「てか何の書類なのそれ?」
「……企業案件」
「それを期限以内に出さないのは、普通にやばくない?」
「私もやばいと思ったっすけど、いけるかなって」
俺と赤羽は目を合わせて、アイコンタクトを取る。多分赤羽も『この人やばい』と思ってるのだろう。
多分この性格の人間は社会に出ない方が良いとやらかしてもどうにかなるでしょとか言って何にも報告せずに後で大問題になるタイプ。
この会社デカイ爆弾抱えすぎじゃない?何処でどれが爆発するか分からんぞ。
「二人はどうするんすか?」
「今は特に決まってないな」
「……どうする?」
「それなら私も着いていっていいっすか」
「俺は良いけど、赤羽はどう?」
「…良いと思う」
「決まりっすね。それじゃあ二人の写真を撮るっす」
早乙女さんがそう言いスマホのカメラで俺達を撮った。
俺たちの肖像権は何処へ出かけてるのやら。
多分この生活をしてる間は帰ってこないんだろうな。赤羽はこの会社にいる間は肖像権がお散歩してるんだろうな。
「Twitterにあげるっす」
「もう、好きにしてくれ」
「了解っす」
「……顔バレしてるし良いかな」
「正直、普通にYouTube投稿してるしもう諦めてるよな」
よく考えたら俺、Vtuberは暇だからやってた筈なのに、何故こんな仕事をしてるんだろう。何か二択の選択を全て空回りして無いはずの三択目を選択してる気分になって来た。
「二人は行きたいところあるんすか?」
「俺は特にないな、いうて名古屋から京都って近いから何回も来てるしな」
「……ユニバ」
「今度はちゃんと呼ぶから、ごめんな」
「そもそも二人は何で京都に来たんすか?」
「一応社員旅行の下見って事になってるが、ほぼ遊びに来ただけ」
「…あそびに来た」
「それなら、
「…行くのがめんどくさい」
「それなら何処もいけない気がするが?」
「わがままっすね、なら西本願寺から東本願寺へのRTAとかどうっすか?」
「罰当たりRTAとかあるんか?」
「そんなもんないっす」
この二人を連れてどっか行くなら、まともな人に近い人がもう一人欲しいな。
このまま行くと俺が過労死する事になってしまう。
「
「…登るの?」
「赤羽さんって体力無さそうっすよね」
「なら
「
「それなら京都どこもいけなくない?」
「……次の社員旅行は東京にしよう」
「めんどいからもう
会社があるのって
「とりあえず地下に降りるか、ここでぐずぐずしててもしょうがない」
「そうっすね」
三人でとりあえず地下に降りて、また考える事にした。
京都って何があるんだ?てか混んでないところなんかあるのか?そりゃ
滋賀県なんて何にもないけど、まぁ県の三分の一くらいの土地が湖なんだからな。
「…金閣寺も行きたい」
「私も行った事ないっす」
「金閣寺の前の店でソフトクリーム食べた思い出しか記憶にないな」
「それじゃあ決まりっすね」
また地下鉄に乗り、一番線の
京都の地下鉄って南北、東西に縦断する形しか無いので結構移動できない地区がある。
名城線みたいにぐるっと回る路線を作って欲しい。
万年赤字都市、京都にそんな金があるとは到底思えないけど。
「…何処で降りるの?」
「私も分からないっす」
「
「そこから徒歩っすか」
「205とかそのくらいの系統のバスに乗るのが楽かな」
京都の地下鉄とかバスを何回も色んな人と観光地に行くから、もはや何も見ずに言えるレベルで覚えてしまった。
この暗記能力を他に使えば楽だったんだろうが、そもそもまともに役に立つような使い方をする人間はYouTubeなんてしたいと思う。
YouTubeなんてある意味賭け事だしな。
列車が
ホーム階から改札階に上がり、
「本当に久しぶりに来た気がする」
「前はいつ来たんすか?」
「グラスと一緒に京都来た時かな」
「…その時は熊と戦ったの?」
「グラスを熊と戦うヤバいやつだと思ってない?」
「…正解でしょ?」
「まぁ…正解ではあるか。何でここのまともなやつ居ないんだろな」
「一期生からおかしいからっすよ」
「早乙女さんって何期生?」
「私は2.5期生くらいっすよ」
この事務所、一期生は同時ぐらいのタイミングで発表されたが、二期生からは随時追加みたいな感じになったため、よく分からない世代が生まれてる。一期生といっても俺含めて三人しか居ないし、何ならそのうち俺とグラスは元々個人組だからな。
事務所は何を血迷って俺とグラスを誘ったんだろうな。
もう一人の奴もちゃんと頭が逝ってて、前の配信はホラーゲームで驚いたら何dBの音が出るかとかグラスとは違う方向で意味分からん。だけどVtuberの素質はあると思う。
「…私もやろうかな」
「赤羽はやめた方が良いな、何なら1番やめた方が良いのは編集」
「赤羽さんってそんなに編集酷いんすか」
「子供が悪ふざけで、動画編集したような動画」
「よくマネージャーやってるっすね」
「……多分マネージャー」
そんな会話をしていると、バスが来たので乗車する。
「思ったよりガラガラだな」
「多分この後混んでくるっす」
「……人混みは嫌い」
「それなら京都観光は無理だろ」
京都なんて『見ろ人がゴミのようだ』って毎回言い続けなければならないほど、観光客が多いのに、人混み苦手なら無理でしょ。
そういっその事滋賀県とか行くか。
あそこなら観光客居ないし、何なら人も住んでねぇ。
そんなくだらない事を考えていたら
お釣り帰ってこないのだけは本当にめんどくさい。
「こっからまだ歩かんと」
「めんどくさいっすね。最終手段はタクシーすか」
「お金持ちの発言だな」
「…歩くのめんどくさい」
「言うてもうすぐ着くけどね」
「
本当にバス停から徒歩5分もせずに、入り口まで着いたのでそのまま境内に入っていく。
「まぁここだけ見ると本当に普通の寺だな」
「マサさんはここに来るの何回目っすか」
「分からん、10何回じゃない?」
「……もうそれ飽きてない?」
「正直飽きた。それに参拝料もかかるし」
右を見ると境内図が設置されている。
まぁ参拝料払って門を潜ったらほぼ一本道みたいなもんだから迷うことはない。
そのまま受付に行き参拝料を三人分払ったのだが一人400円した。
スカイツリーが3000円近くするから安い…そう考えよう。
それに給料の事を考えたら相当安いはずなんだよな。もうこの先配信をしなくとも普通に動画の収益だけで毎月食っていける。
「このままこっちに進めばいいんすよね」
「その門を潜って進めば良い」
「分かったっす」
そのまま門を潜って進んでいくと金閣寺が見えてきた。
あの建物の金を合わせたらいくらになるんだろうか。
「あれが金閣寺っすか」
「……なんかあれだね」
「「思ってたよりしょぼい」」
「二人とも口を閉じろ」
二人がハマって言ったせいで周り人がこっちを振り向いてきた。
この二人もう無理じゃない京都観光。
よく考えたら
後、赤羽はしょぼいって言った割に金閣寺の写真を撮ってる。何だこの人は………
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後書き
ルビ降ってるのにルビ間違えてたら面白いと思うんですよね。
後、京都はいつになったら、あのバスの混雑率を解消してくれるんだろうか。
地下鉄は使うけど、普通の人からしたらバスで一本で行ける所を地下鉄とバスを乗り継いでいかん。
いいねとかなんかして貰えるとありがたいです。作者が喜びます。
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