【駿】Episode6 古野 浩二と古閑 那留

4月1日。


高校の入学式だったであろうその日、徹が通っていた西高で事件が起こった。


それが、あの古閑 那留が転落事故を起こし古野 浩二がそれを傍観していたことから逮捕されたというニュースが飛び交ったからだ。


あの二人は、俺に繋がる可能性がある。


面倒なことになった。


そして、その半月後の4月16日に面倒事が舞い込んだ。


古野 浩二が俺の所に患者としてきたのだ。


「ご無沙汰してます。濱出先生」


「ええ、お久し振りですね。古野さん」


10数年ぶりに会う古野 浩二は随分と弱弱しくなっていた。


病弱で、ほっそりとしている。


ああ、こいつは心の大半を壊しているのだな。


確か、古閑 那留は一命を取り留めたが半身不随になったらしいな。


彼の娘を下敷きにして助かったらしい。


なんとも、下衆なやつだ。


「それで、今回は?」


「ええ、診療をお願いしたく」


「なるほど、分かりました。

では、治療を始めましょう」


それから、俺は、古野の診療を始めた。


目の前で、娘が死んだ現実が耐えられなかったのだろう。


彼には、大切な物の代わりが必要なのだろうな。


まあ、那留をそれにすればこいつの心は保つだろう。


その後、古閑 那留もまた俺の元を訪れることになる。


面倒で仕方ない。


ニュースになるような事件を起こした両人を担当するなんて。


那留は、罪悪感で心が半分死んでいた。


ああ、こいつらはそれぞれ半分ずつ心が死んでいるのか。


なら、簡単だ。


共依存させればいいのだから。


だから、もう俺に関わらないでくれ。


そう願う想いは、数日後には打ち砕かれることになる。

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