【駿】Episode3 認識齟齬

なんとなくだらだらと大学・大学院時代をこなし、6年の歳月を学生として過ごした後。


2年の臨床研修が終わり、医師国家試験にも受かり無事付属大学病院で医師になった。


俺は、精神科医になった。


徹が8歳になった頃だ。


ある日、実家に帰ると徹から相談を受けた。


徹が、好きな女の子ができたがその子が巧と仲がいいからどうにかしたいと。


巧っていうのは、俺の両親の子供で徹と同じ年に生まれたから双子ということにしている俺の弟だ。


「なら、巧の事をお前と思わせればいい。

俺が言うとおりにすればうまくいくぞ」


そう俺は言って徹に俺が今まで使ってきた術を教えた。


認識齟齬。


誤認させる物だ。


長時間使えば、精神を壊し掛けるだろうがまあいいだろう。


徹にそれを教えた翌日。


俺の所に、古野 浩二という男がやってきた。


医療器メーカーに勤める営業マンだった。


適当に話を聞いているとペラペラ無駄話をしてくる。


うざったいので、認識齟齬を掛けてみた。


思った以上に掛かりすぎて精神がだいぶ壊れたがまあいいだろう。


こいつには、病弱な嫁がいるらしい。


営業マンなので何度も何度も俺の所に来る。


その度に、いろんな実験をしてみた。


そんなことをしているときに古閑 那留から連絡が来た。


「たまには、呑もう」と。


その時、俺はふと面白いことを思いついた。


古野 浩二と古閑 那留の不倫を出ちあげてやろうと。


那留の方は、浩二を好きにさせればいい。


そんなことを計画していると浩二の嫁が亡くなった。


不倫にするつもりが、不倫にならなくなった。


面白くない。


そんなある日。


浩二は、北海道に引っ越すことになった。


どうやら、あまりにも業績が上がらなくなって左遷されるらしい。


那留もそれに合わせて北海道に引っ越すそうだ。


彼女の暗示は解けそうにはないようだ。


あいつ単純だったからな。


イケメン好きもここまで行くと笑えるな。


浩二って、ダサメンだし。


その後、徹の好きな子が引っ越したと聞いた。


どうやら、浩二の娘だったらしい。


面白過ぎるな。


よし、これからは徹で遊ぼう。


あいつは俺の息子でおもちゃだからな。

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