第14話 幼馴染みと合鍵

「・・・ちゃん。優・・・。ねぇ、優ちゃん」

僕の身体が揺らされて冬華の声が聞こえた。

ハッと目が覚める。

「あ、起きた。

よかった、いくら呼び鈴押しても応答ないし。

ママから合鍵貰って入ったら優ちゃんトイレで倒れてるから私、心配したんだよ」

僕は、徹の夢を見て気持ち悪くなってトイレで吐いて。

首・・・肩?が重い。

肩こりとは違うなにか重みのような。

「冬華、ありがとう。心配してくれて。もう大丈夫だよ」

とにかく、徹のことは黙っておこう。

「ほんと?ほんとに大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫」

僕は、起き上がる。

少し、ぐらつくが何とか立てた。

「優ちゃん、病院行く?」

「大丈夫だよ、よく考えたら冬華が帰ってから僕なにも食べてなかったみたいだ」

夕方に冬華が帰ったから昨日のお昼から何も食べていなかった。

まあ、胃液しか出なかったからなぁ。

「もっ!優ちゃん、私ご飯作るから座ってて」

冬華は、キッチンへ向かっていた。

僕は、その後を追う。

ダイニングの椅子に腰かけた。

「ごめんね、冬華。僕も疲れてたみたいで」

「ううん、私の所為だよね・・・ねえ、優ちゃん」

「ん?なに?」

「あのね・・・ママから預かってた合鍵なんだけど」

「ああ。母さんが春さんに預けてた鍵だよね」

「ママから私渡されたの・・・だから毎日優ちゃんのとこ来てご飯つくってもいい?・・・私、彼女だし」

キッチンからトントントンと軽快なリズムと共に冬華がそう告げた。

冬華が、毎日嬉しいな。

『おま・・・だけ・・・しあ・・・に・・・ゆる』

「なっ」

徹の声が、ラジオのチューニングがずれたように耳元で聞こえた。

僕は、その声が聞こえて変な声を叫んでいた。

「きゃ、なにどうしたの!優ちゃん、驚かさないで」

「あ、ごめん。大丈夫」

「私は大丈夫だけど、優ちゃん本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ、スマホの通知がすごくてびっくりしただけだから」

僕は、スマホを確認したことにした。

8割が冬華からの物だった。

「えっと・・・えへへ」

僕は、残り2割を確認する。

グループチャットがだいぶ動いていたのとあとは普通の通知だった。

『優一、お前大丈夫か?』

そう書かれていた。ん?大丈夫ってなんだ?

履歴遡れん。

「大丈夫って何がだ?」

『お、生きてたか。

お前からの連絡がないからだろ』

「すまん、冬華の看病とかいろいろしててな」

『ああ、そういうことか。

じゃあ、↑のとか見れてない感じか?』

「ああ、すまん。確認できてないわ」

僕が、そう送ると少し沈黙が続いた。

冬華が、トレーにお昼?ご飯をもってきてくれた。

「優ちゃん、お待たせ。ご飯食べよ」

冬華は、自分の物も作っていたようで二人でご飯を食べた。

食べ終わった頃、通知があることに気づいた。

「冬華、ちょっとごめん友達から連絡きてるからちょっと返信するね」

「うん、じゃあ片付けしてるね・・・でも、私も構ってほしいなぁ」

「終わったらちょっと出かけようか」

「うん、そしたら片づけたらちょっと着替えてくるね」

「・・・そのままでもいいんだよ」

「やだ」

冬華は、頬を膨らせながらそう言っていた。

冬華は、可愛く見せたいってことかな。

可愛いな。

僕は、スマホに視線を戻す。

『犯人捕まったらしい。俺たちのクラスの来栖だったらしい』

来栖・・・ああ、おっぱいちゃんか。

見た目は、たしか黒髪で・・・あ~思い出せない。

胸が、めちゃめちゃでかかったことしか。

あんまり存在感がない子なんだけど、胸しか覚えてない。

「来栖か、すまん。おっぱいしか覚えてない」

『ああ、おれたちも顔思い出せねぇわ』

「てか、なんで来栖ってわかったんだ?報道規制掛かるだろ」

『クラスの連絡網で回って来た』

僕への連絡網は、このグルチャかな?

まあ、いいけどさ。

「優ちゃん、着替えてくるから」

「ああ、じゃあ僕も準備しておくね」

冬華が、家を出て行ったので僕も着替えることにした。

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