家族ってなぁに

西ノ屋薫

家族ってなぁに

科学者として私は、同僚(女性)とともにある研究を国からの命で秘密裏に行っている。地球の環境変化に伴い、人工的に人間に似た知的生命体と改造人間を造り、地球以外の環境でも生きていけるのか検証するものだ。なぜか。環境変化で住みにくくなった地球を捨てて他の星へ移動するからだ。そのためには、どんな環境でも、地球に住むかのように日常生活を送れるようにするのだ。そしてまた、星の資源を食い尽くしたら別の星へ移住できるようにするつもりのようだ。そのためには、どんな環境でも活動できる斥候のような存在が必要であると考えられたようだ。


そうしてある日。試作の知的生命体ができ、宇宙へ行く日がきた。

その知的生命体は育てているうちにいつの間にか同僚と私を母さん父さんと呼び、研究者としては最悪だが、私自身も子供のように感じていた。だが、本来の目的を話せずにいた。そうしてその日が来て、むりやり乗せられた宇宙船の中から自分にされる仕打ちに訳が分からず声を張り上げて呼んでいた。

知的生命体を乗せた宇宙船が空をめいいっぱいまぶしく染め上げて上へ上へと上がっていく。その後、数日後に目的の惑星へと到着したが、音信不通となり計画は一時的に中止となった。


中止となり、数年後。


いつもどおり研究の業務を行っていると、上司から呼び出しを受けた。試作の知的生命体がなにをどうやってか戻ってきたというのだ。海に不時着し、この研究機関に移送されてくるとのことだ。

造り手である女性の同僚か私と会わせろ、その二人としか話すことはないと口を閉ざしているらしい。

慌てて二人でその部屋へ行くと、知的生命体が顔を上げた。

その知的生命体はごく小さな声で父さん母さんと呼ぶので、どうやって、なんでとしか声が出ない。

研究対象とはいえ、情がわいていて一人で知らない土地へ送り出したことに罪悪感を感じていた私は、思わず駆け寄りすまないすまないと何度も謝りながら抱きしめた。

その後ほかの惑星に行った時の様子を詳しく聞くと、どうやら星の悪天候の影響により通信ができない状態となり、数年かけて地球に戻るべくその星で燃料となる物質を探して地球へ戻ってきたとのことだ。

図らずとも計画の目的を達成し、地球に戻ってきた知的生命体に再度すまないと謝罪をした。


あぁ、この子が無事に戻ってきてよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

家族ってなぁに 西ノ屋薫 @ponzu-yaro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る