交差点

ザイン

ぐちゃぐちゃ

「よせ………止すんだ愛華(あいか)」


とあるビルを囲みながら回り続ける真っ赤なサイレン。


多くの野次馬がそのビルを眺める。片手に収まる電子端末で状況を記録に残す者、ただ行く末を見守る者。


そのビルの中で男女3人が緊迫したやり取りを繰り返している。


「愛華さん………どうして?」


「黙って」


愛華と呼ばれた女性がもう1人の女性の首に鋭利な物を突き立てる。


「止めろ愛華!」


「助けて………お兄ちゃん」


「あぁ、今助けるからな幸子(ゆきこ)!」


恐怖で怯える妹を励ます兄。


「愛華。どうしてだ?どうしてこんな事を」


「晴人(はると)くんが悪いのよ。晴人くんが私に………私達に隠し事をするから」


「……………」


「どうして?どうして言ってくれなかったの?」


「これはおれの問題だ。お前達を巻き込みたくはなかった。」


「そんな…………」


「俺が必ず解決する。だから止めてくれ愛華」


ジィー


耳元から上司の声が聞こえる。


「服部。突入部隊の用意が出来た」


(!?待ってくれ!愛華は一般市民だ。わざわざそこまでする必要は)


「服部!聞こえているのか?」


「…………了解」


大きく息を吸い、自分を納得させる晴人。


「愛華………なにが望みなんだ?幸子をそうまでしてお前の望みはなんなんだ?」


「私を………私を愛してよ」


「!?何言ってる。俺はお前を愛してる」


「嘘!じゃあどうして私と会う予定を潰してまで幸子ちゃんとの時間を作ったの?」


「…………」


「それも一度や二度じゃない。どうして?私より幸子ちゃんなの?」


「なに言ってる。そもそも俺と幸子は兄妹だ。愛華お前が気にしていそうなことはなにも…………」


「恋人を差し置いて頻繁に会う理由ってなに?」


「それは…………」


「もう……いい」


「愛華?」


「ごめんね、幸子ちゃん」


「いや、止めてお兄ちゃん!」


「よせ愛華!………幸子!!」


「突入!!!」


パーン


我に還った晴人の手には胸に閉まっていたはずの拳銃が残っていた。


「!?そんな………まさか」


「愛華さん………愛華さん!!」


幸子の隣には額を撃ち抜かれた愛華が鮮血をたらしながら倒れていた。


「あっ………アアア…………アアアアア!!」


自分の行いを認識し錯乱する晴人。周囲の人間はただ立ち尽くすしか無かった。ただ一人を除いては


「お兄ちゃん…………」


「幸子………俺………俺は」


「お兄ちゃんが悪いんだよ?」


「幸子?………ウグっ」


自分の胸部に刺さる先程まで愛華の手にあった刃物。


「幸………子?」


「お兄ちゃんがハッキリとしないから、いけないんだよ?」


「服部巡査!!」


「さぁ、お兄ちゃん一緒に愛華さんに会いに行こう。そうすれば皆苦しむことなくずっといられるよ」


「幸……………子」


「確保!!!」


怒号と共に武装した者達が幸子に迫る


「お兄ちゃん」


「なっ…………」


幸子は晴人の胸部に刺さった刃物を自の首に近づけると力強くひいた。


「…………こちら突入班。人質及び犯人そして交渉に当たっていた服部巡査全員死亡しました」


一部始終を目撃した突入部隊の隊員達は目の前の惨状に只々呆然とし立ち尽くした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

交差点 ザイン @zain555

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ