第5話 合コン

私は20分遅れで、お店に着いた。

そこは居酒屋で、合コンにしてはラフだなと思ったけど、確かにお店の名前も合ってるし間違いは無いらしい。

私は黒のスニーカーを脱ぎ、下駄箱に入れた。ちょうど会計のところに従業員の人が立って居たので、

「すみません。薬師丸で予約取ってると思うんですけど…」

「ああ、薬師丸様のお部屋ですね。ご案内致します。どうぞ」

女性従業員はそう言い、私はその後からおずおずと着いて行った。

古民家風の建物で、ややオレンジがかったライトが店内を明るくしていた。

中は大部屋と個室に分かれているらしく、各々部屋には花の名前が書かれている札が、掛けられていた。

「こちらですね。6名様のご予約になっております」

トントントン!

「ご予約のお客様がいらっしゃいました」

女性従業員はそう言い、部屋の扉を開けた。

そこには美由里ともう1人知らない女性と、男性3人が座っていた。

「遅いよ。聖。来ないかと思って心配しちゃった」

「遅れてごめん。一応ラインしたんだけど…」

「あ、ホントだ。気づかなかった。まあ、いいや。ここに座って、座って」

私は美由里の言うがままに、1つ空いている席に座った。

大きな丸太を削って出来たような四角のテーブルの下は、掘りごたつのように足をリラックス出来るようになっていた。


「それじゃ改めまして。私が幹事の薬師丸美由里です。そして左隣が岸田来夢、今遅れて来たのが、福富 聖です。」

私と岸田来夢さんは初対面だ。似たような小花柄のワンピースを来ていて、あ、洋服かぶってしまた…と、思った。しかも彼女の方が緑に小花模様で、あか抜けている。

美由里はベージュのジャケットに白のパンツスタイル。美由里はあまりスカートを履かないから、いつもの彼女らしいスタイルだった。

女性陣全員の軽い自己紹介の後、右端の男性が口を開けた。

「僕の名前は外崎 渉、真ん中が安ヶ平 鉄平、そして1番端が鎌田 満。僕たちは同じ草野球のメンバーなんだ。今日は楽しみにして来ました。よろしく」

外崎さんは挨拶した後軽く会釈をしながら、ニコッと笑った。

(この人は場馴れしているな…。)

他の2人も同じように会釈をし、照れ笑いをしていた。

「聖、何飲む?同じ生ビールでいい?」

「うん。いいよ」

従業員を呼ぶベルを美由里が押し、すぐさまビールを運んで来てくれた。


「さて、メンバー全員揃ったところで、質問コーナーでもやりますか」

一応合コンだけど、私の目的は食にありつくことだった。最近は、いや、ずっとコンビニ弁当しか食べていない。始めからがっつくのは、さすがに悪い印象を与えてしまうだろう。

私は話を左から右に半分聞き流し、次々運ばれてくる料理にウホウホしていた。

すると鎌田 満さんが、

「福富さんは大人しいんですね」

と、私に声をかけてきた。いや大人しいのでは無い。食べたいだけだ。

「あ、そんなこと無いですよ」

「さっきから見ていたら、あまり口数が少ないので…」

「あ、その、ごめんなさい。久しぶりにご馳走見たら食べる方が優先になってしまって…」

「あはは、正直な人だなぁ。僕、そういう人嫌いじゃないですよ」

「え?」

私は少しドキッとして、箸を休めた。

他の人たちは、美由里を始め、完全にビールで出来上がっていた。だから焼き鳥だの、お刺身だの、春巻きだの色んな料理がまだ残っている。私はそっちの方が気になっていた。


「さて、そろそろ場所変えて、カラオケでも行きますか!」

外崎さんが顔を赤くしながら先立って、声を上げた。

「さんせーい!」

他の人たちも続けて声を上げる。

私は急いで食べれるくらい、全力で食べた。

はぁー。これでしばらくは、またコンビニ弁当に戻っても大丈夫だな。

私はお腹が膨れたので、ようやくヤル気満々になり、

「行こう!」

と、二次会に賛成した。



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