第16話
「マスター。申し訳ございませんが、起床していただけますか?」
「………?」
思考がぼやける。……夢?
「レギンメルド殿の行動が不自然です。後ほど録画を見ていただけるかと思われますが、最悪を想定しますと、今すぐに確認しておくべきかと―――」
……ロコン?
………レぎ―――めるど?…レギメルドくん?
「―――あ~。ん~」
ぐぅ…眠い。
「―――悪い。もう一回説明して」
「っは。
就寝したレギンメルド殿とメルトレイ嬢でしたが、レギンメルド殿が何かしらの行動を開始。恐らくは活術を使ったと思われる行動をしました。その後、寝ていたメルトレイ嬢が起き上がり、レギンメルド殿のベッドの傍らで跪きました。今現在メルトレイ嬢の頭に手を当て、こちらに聞き取りづらい音量で何かを語っている様です」
―――お、おう?
さっきそんなに説明してなかったと思うけど、それはまあ、どうでもいいか。何やら文面だけを見れば『不穏』。一体全体何をしてらっしゃるのだろうか?
「マイク感度を最大にしても聞こえない感じ?」
「はい。
話す、と言うよりも口をただ動かしているレベルですので、マイク感度最大で漸くなにしら音が出ているのが分かる程度です」
ん~…。
突撃するか?
「今から部屋に向かう、と言う方法はどう思う?」
「わたくしや姉さん、エルメリアが向かうのがよろしいかと思われます。
ですが、万が一を考えますと、マスターご自身が向かうのは賛成できません」
ん~?
「俺がダメな理由は?」
「身の安全の為です」
それって君たちにも適応して欲しいんだけど?
「我々元アンドロイドであれば、例え故障したとしても、修理、若しくは新たに製造出来ます」
「―――いやいやいや。それはゲームの時は出来たけど、今は無理だからな?お前たちも人間になっているんだからケガを治療する事は出来ても、新しく作るなんて不可能だ。自分たちを疎かにするのは賛成できん」
ちょっと腹立った。
「―――そう、ですか。畏まりました。
わたくしたちも人間。その事実の重さを再度重視する様に致します」
そうしてくれ。じゃなきゃ色々とイライラしちゃうからさ。しっかし、ちょっと前に自分たちの事をちゃんと『人間』だと言ってたことがあったからキチンと理解、把握してて行動しているのかと安心してたし、嬉しかったのに…。
「しかし、マスターの身が一番であるのは譲れません。今回の様に害がある場合は我々の誰かが対処、実行するべきです」
「・・・・・・」
言いたい事はわかる。
つまりは俺が大事だと思っていてくれてて、大切にしたいんだろう。守りたいんだろう。だけど、それは俺も同じだ。同じ気持ちをエルメリアとレコンとロコンに対して抱いている。
「マスターが我々を大切に思ってくれている事は重々承知しております。しかし、やはり御身こそが大切なのです。マスターさえ無事であれば我々と言う勢力は不滅。また、マスターであれば我々にもしもの事があったとしても、何かしらの方法を模索し、我々に再び生を与える事も出来るのではないかと―――愚考いたします」
現状では無理だと断言できるけれど…。そうだな。もし、もしも、万が一誰かが死んでしまった場合。どうにかして復活させようとはするだろう。色々と考えるし調べるし行動するのは間違いないとは言える。だけど、その方法が上手く見つかるかもわからんし、方法を見つけたとしても完璧に上手くいくかもわからん。だから、やっぱり危険は冒して欲しくはない。
「今回はわたくしが対応して参ります。戦闘用として切り札である姉さん、時点のエルメリアを失う訳にはいきません。最弱と言えるわたくしが最も失った際の損失が少ない。ご許可を―――」
失う事は考えたくもない!
が、ロコンが言わんとする事はわかる。だけど、ロコンは戦闘面での性能よりも頭脳面での性能の方が高い。作戦立案や意見、提案などはレコンには出来ない事だし、エルメリアも一歩劣る。そう考えれば今後の活動に誰も失う訳にはいかない。
「許可できない」
「マスター!」
おっとぉ?ロコン。お前――――――お目目開けるのか!?
「今レギメルドくんとメルトレイさんが何をしているのか分からない。敵対しているかもしれないのなら、直接対面するのは避けたい。通信での対応で様子を見る」
「しかしそれでは後手に回ります。現状でも後手に回ってしまっている状態であると思われるます。これ以上後手に回るのは取り返しのつかない状況に追い込まれる可能性もあります。それに、早期解決をしなければ例の新たな集団の対処も遅れる事になる可能性もあります」
いちいち御尤も。
メルトレイさんとレギンメルドくんたちの対応が後手に回った結果、追い込まれる可能性もある。加えて新しくやって来た集団への対処も遅れてしまうかもしれない。
確かにそうだ。
でも
だからと言って危険を冒そうとは思わない。
まだまだこの世界の事は分からないことだらけで、メルトレイさんとレギンメルドくんについても分からない事だらけだ。その分からない事の中に、俺たちの命を奪ってしまう何かが潜んでいる可能性がどうしても頭を過る。
臆病すぎるかもしれない。
その所為で状況が遅々として進まないかもしれない。
だけど、それでいいと思う。
俺は、俺だけが助かる事は良しとしたくない。
俺は、俺たちが助かる事こそ、大事にしたいのだ。
「だとしても、俺の決定は変わらない。
後手に回ったとしても、今は通信するだけで様子を見る。いいな?ロコン」
「…畏まりました」
ロコンの初めての不承不承。
すまんね、こんな主で。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ロコンにはああ言ったが、もしも敵対行動をしている最中であるのなら出来うる限りの手は打っておきたい。
と言う事でエルメリアとレコンにも起きて貰ったのだけど…。
「姉さん。いい加減起きて」
「んぅ~…おき、て、る…?」
なんで君が訊ねる側なんだよ。
「艦長。運搬用と作業用のロボの配置が完了しました」
「あいよ」
取り合えず通信で声を掛ける前に逃げ出せない様、最悪逃げるにしても障害物になる様に例えなくなったとしても対して困らない順に医務室前に待機させた各種ロボット。
運搬用は、本当に運搬しか出来ないので前に並べ、いくらかの作業の肩代わりが出来る程度のロボを時点に使って壁を作り上げた。
後はレコンが完全に起きて貰うといいんだけど…。
「姉さん!」
「…なによぉ~。もう、うるさいわね~」
お、起きたか?
「ちゃんと起きてるわよ」
「いや、どう見ても寝てたでしょ?」
「ウチはロコンと違って完全に起きるまで時間がかかるの!でもちゃんと稼働はしてるんだから!」
稼働…ね…。
「んじゃ、そろそろ配置に着いてくれるか?」
「あいあいさ~」
この自宅からで使える様に出来た防衛兵器の内の一つ。
遠隔操作型戦闘用機動人型兵器。
ゲーム内で通称【MDA】と呼ばれる戦闘ロボットを、遠隔操作可能にしたタイプである【RCタイプ】。
俺が所有していたのは【
頭がおかしい機動力と引くくらいに薄い装甲。そして超接近戦用の装備。
どれもが搭乗型だとデメリットとなってしまう頭のおかしいスッペクなのだが、そこは遠隔操作型であるのでだいぶんとデメリットが薄くなっている。
しかし、装甲が薄いので壊れやすいし、接近戦用の装備しか換装できない躯体となっている為、当たり前だけど接近して戦わせる。だから更に壊れやすい。しかもサイズが小さく、戦力としてカウント出来る場面が極端に少ない。
正直に言うと不人気である。
が、見た目は最高にカッコイイのである!!!
正にスタイリッシュを体現した躯体と言って言いだろうそれは問題児として可愛がられていて、俺も同じく問題児と罵りながらも可愛がっていた。
そんな問題児の操作をレコンにやってもらう。
もしもの為の最終防衛線だ。
配置は【ラララ宇宙号】と我が家の間。
人型の兵器としては小さめの約5mの高さしかないアイギスだからこそ取れる配置である。
本当は配置する予定など無かったのだけど、今日メルトレイさんを我が家に案内していた事が災いした。
もしも敵対された場合。
我が家を知られているのでここは安全ではない、となってしまったので仕方なし。急遽配置される事となった。
そんなこんなで早速。
即席作戦開始!
「あ~。レギメルドくん?
君は一体何をしているんだろうか?」
「『っ!?!?』」
おぉおぉ、慌ててるね~。
お姉ちゃんからは何も聞かなったのかな?
「悪いけど君とお姉さんの行動は全部把握してる。
艦内の探索程度なら別に良いかと思ったんだけど…今やっている事、ちょっと、いやかなり怪しく俺たちには見えた。何をしているのか説明してくれるかな?」
「『・・・・・・・・・』」
だんまり、ですか?
「悪いけど敵対するのなら容赦しない。
次に敵対的な行動をした場合は容赦しない、と、メルトレイさんには話したけれど、君は今回が初めてだ。今説明してくれると助かるのだけど?
仮に敵対行動であったとしても反省して敵対しないと弟である君も誓ってくれるのなら見逃す。あくまでも今回だけだけど」
さて、どうしますかな?
「『……ふぅ。
貴様らを信じて良いものかどうか……信じたくはある状況だが、生憎と余の性格上、信ずるものを作るのは難しくてな』」
・・・・・・・・・おっとぉ。
ちょーーーーーっと、予想外です。
「あーそれが素、って事かな?」
「『そうだな。
改めて名乗ろう。
余は【レギメルディア・アロダイムス・メルド・バーラッド】である』」
なんか雰囲気がガラリと変わった。
目覚めたレギメルディア・・・・・・何とかかんとか君は、良くも悪くも普通だった。見た目よりも大人びて感じては居たけれど、それでも別に思う事は無かった。大人しそうな、賢そうな、そしてやはり元気がない感じの幸薄系美少年だった。
だけど今は、『威厳』とでも言えば良いのか?俺には到底真似できそうにない迫力を纏っていて、その見た目が少年である事で違和感がスゴイ。
「ご丁寧にどうも。
それで、君は何者なんだろうか?」
雰囲気、言葉遣い、名前。
どれをとっても碌な素性じゃないよね?俺たちにとっては。
「『余は【レギメルディア王国】国王、【レギメルディア・アロダイムス・ディルドス・バーラッド】が嫡子である。が、今となっては嫡子であるかどうかは定かではないがな』」
あ~もう!やっぱり!!
「『メルとは情報交換を済ませているのであろう?余も情報交換を望む。そちらの指示に従おうぞ』」
「・・・・・・」
どうしてこうなった!?
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