第6話

 ほぉん。

 なるほどね。


 確かに山頂の火口っぽい地形だわ。地面が普通にあるって事は死火山って事だろ?自然も豊かだから多分随分と前に活動をお止めになられた火山なのかね?それとも火山じゃない山とかがあるのか?標高1万mってのは例えどんな山だろうが違和感しかないけど。そもそも本当にそんなに標高があるのかも疑問。ハッキリとさせるためにも調査を進める必要がある、か。


 まずはこの地から脱するには、空を飛ぶのが一番手っ取り早い。ぐるりと四方八方が壁と言うか崖?に囲まれてるから…よじ登れなくは無いだろうけども。それは最終手段にしたいな。絶対疲れるし。でも飛行型調査ロボットは不調?と言えばいいのか?飛べんし。どうするか…。


 現在地であり拠点となる【ラララ宇宙号】があるのはほぼ、ってかど真ん中にあって。ここから北にそこそこ大きめの湖。そこから川が左右から二つ蛇行しながら南方向へ流れてる。その他めぼしい物は無し、と。

 植物はデータと一致するものは見つからず。何故か殆どの花などが異様にデカい。

 動物は大型のものはいなく。最大で体長1m未満のものだけ。種類は10程度が生息している模様。植生と同じくデータに一致するものはなし。

 奇妙な点で言うと虫の類が一切見られない事、か。なんでだろうか?そういう惑星だからとか安易に考えるのは間違っているかな?


 しっかし、デカいな。この火口。

 ほぼ円形の地形で直径400kmって。どんな火山やねん。もしこれが活火山で噴火なんかしたら星一つ簡単に生命体絶滅させるんじゃね?分からんけど。これだけ広いと標高がべらぼうに高いのも納得できなくはない。色々不可思議な点があるから納得するのにも苦労するけど。


 兎に角周辺の地形調査は完了。レコンロコンの言う一段落。


 なんだけど。


「取り合えずこういう調査とか作業の進捗とかの報告は随時してくれ。特に今回見たいに報告を頼んでいた場合は自分で判断して報告を遅らせる様な事はして欲しくない」


「はいぃ」「申し訳ございませんでした」


 ほうれん草は大事。ほうれん草には鉄分とかその他必要な栄養素が…とか冗談はさておき。社会に出たらマジで報・連・相は大事!これをしない、出来ない奴は信用できないからな。トイレ行きたいとかはちょっと席を外す程度だからそれは別に俺はしなくていいと思うから、トイレに関してはしなくていい。でも、今回のはまた別の話。

 確かに切りが良い一段落の時に諸々纏めて報告した方が効率は良いだろうし、手間が少ないけど、そうじゃないんだよ。俺は今回遊んでたからあまり強く言うのもおかしいけれど、俺も何かしらの作業をしていて、しかもこっちの報告が無ければ作業に支障がある場合は早く報告が欲しかったりもするだろう。それを勝手な判断で報告を遅らせると不都合が出て来る。

 緊急事態とかの場合はもっと不都合がある。その報告が無いばかりに絶体絶命の事態に発展するかもしれん。


「ま、次からは気を付けよう。って事で」


 目くじら立てる様な状況じゃなかったし、遊んでたと言う負い目もあるからこれでこの話はおしまい。この後は俺についての報告もあるし…どんな反応が返ってくるのかわからん怖さがあるなぁ~。


「周辺の調査は完了。次はこの崖?と言っていいのか分からないんだけど、その外側の調査を進めていきたいと思う」


「サー。

 ですが、相変わらず飛行型調査ロボットは飛行が出来ない状態です。調査も進んでいない為、今現在も原因は不明です」


「その飛行型の調査はロコンに任せるよ」


「畏まりました。今度はしっかりと失敗せず、責務を全う致します」


「ま~そう気負わずにな。失敗は誰にでもあるから。レコンもな」


「ハッ。承知しました」「わかりましたぁ!」


 ホントロコンって真面目。


「レコンは周辺の動物と植物のサンプルを集めて、分析してくれ。主に毒があるかどうかの調査と人が食べれるのかの調査を進めてくれ」


「わかったわ!」


 出来れば調味料を作りたい。

 もしかしたら胡椒とかハーブとかあるかもだからな。油も欲しいし。

 暫くは【シェフBOX】に頼らざる負えないけど、少しでも調味料が揃ってきたら手作りに切り替えたい。美味しいご飯が俺には必要なので!普通に食べれるレベルの食事とかは偶にでいい。


 それに倉庫に食材はあるけど、流石に無限とは言えないからね。この周辺で調達できるのかどうかは知る必要がある。


「エルは俺とこの山の外の調査を進めよう」


「サー」


「う~」


 あん?


「ウチもハル様と一緒が良かったぁ!」


 そう言ってもらうのは嬉しいやら恥ずかしいやら、悪い気はしないけれども…やっぱ恥ずかしいわ。女性にそんな事言われた事ないし!


「食事は一緒にしような」


「…はぁ~い」


 多少不満はあるようだけど、まぁ、うん、OK。


「さて、俺からみんなに報告があるんだが…どうやら俺のこの体、俺も含め、全員が思っていたものとは違う状態らしい」


「…?どういう事でしょうか?」


「まぁ、見て貰った方が早いか?」


 右手を全員が見やすい様に前へと軽く突き出し、半透明状に変化させる。


「は、ハルキ様!?」


「と、まあ、こんな具合だ」


 反応は顕著。


 なのはレコンだけ?あれぇ?


「そいう事でしたか」「なるほど、通りで…」


 え?何々?何か知ってる感じなの?


「エルとロコンは何か心当たりがあるのか?」


「心当たりとは違いますが、どこか体、顔の造りに違和感を覚えていましたので」


「そうですね。わたくしもエルメリアと同様の違和感を感じておりました」


 違和感があったのにそれを無視して付き従ってたって事?それ危なくない?もし俺が偽物とかだった場合どうしたの?


「違和感を感じていたのなら俺がハルキじゃないとか疑わないか?普通」


「確かに外見に違和感を覚えましたが、マスターのこれまでの言動はわたくしの知るマスターでしたので。特に疑い、または不安を感じてはおりません」


「…あ、そうですか…エルは?」


「私としては多少の違和感を感じたとしても艦長は艦長ですので。艦長を艦長としてどう判断しているのかと聞かれると『わからない』としか答えられません。が、疑いはありませんでした」


 ロコンの愛?も重い気がしたけど、エルメリアの方が重症な気がする。つまり、両名とも外見だけが俺の要素じゃないと言ってくれている訳だけど、理論的に説明できるロコンは納得できるけど。何故か感覚頼りのエルメリアの意見は首を傾げたくなるね。


 ま、いいや。

 取り合えずもう全部説明だ。


「って事で、俺の考えとしてはセカンドキャラ―――でわかる?それのベータのデータとハルキのデータが混ざっている状態なんじゃないかと思ってる。今わかっているのは能力、性能、その他装備なんかはほぼハルキで、体はベータって感じなんじゃないかな?」


「状況は理解しました。

 ですが、一つ疑問点があります」


「続けて」


「もう一人の艦長である『ベータ様』には私の様な従者は存在していないのですか?ここにはいない様ですが?」


「・・・確かに」


 言われてみれば、である。


 場所は【ラララ宇宙号】でエルメリアたち3人が居るから不思議に思わなかったけど、よくよく考えたら変だ。

 色々データが混ざって存在しているのならベータの最初の従者がエルメリアたちと同時に存在していないと逆に変だ。しかし、変だとしても実際には存在していない。その理由も色々とわからない事と一緒で原因の追究が出来ない。


 どうしたものか…?


「この地の調査は完了しているんだろう?」


 さっきからオロオロとしているレコン。答えてくれ。


「は、はい!

 マップ作製はこの火口内は100%。調査の漏れはないと思うわ」


「誰かが存在している様な痕跡なんかなかった?」


「なかったわ。見逃している可能性が無いとは言えないけれど、見逃しの可能性は限り無く低いと思うわ」


 まぁ、そうだろうね。


 席を外していた時間もある訳だけど、当然レコンロコンは全部見返している。スペックは元のアンドロイドのままだとするなら見逃しは無いだろう。とすると、俺が考えたこの【ラララ宇宙号】の外にベータの従者が来ている。と言う可能性は低い訳だ。

 もしかしたらこの火口じゃないところ。あの崖の向こう側に居るのかもしれないが…。


 それはまた調査を進めてみないとわからない。


「マスター。

 マスターはマスターであり、体に変化はあれど不調は無し。それは検査結果からも伺えます。マスターの報告は以上で、もう一人わたくしたちと同じ存在が居る可能性が浮上している、という事でよろしいでしょうか?」


「そうだな」


「で、あれば。我々は調査を少しでも早く進めるべきかと思われます」


 そう、だな。


「んじゃ、行動開始」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ブリッジにて調査ロボットの映像を確認。勿論リアルタイムで。


「座っていいよ?」


「いえ、このままで大丈夫です」


「え~、辛くなったら言ってね?」


「サー」


 何故エルメリアは後方に控える様に立つのか?疑問ではあるけれど、本人が望んでいる様なので好きにさせておこう。もうアンドロイドじゃないんだから、エネルギーがある限り疲れる事無く動き続ける事は出来ないってのが、多分まだよく理解できていないせいだろう。しばらくはただ立っているだけだから大丈夫だろうけど、何気にしんどいからな?立ってるのって。無理するなよ?


「昆虫型調査ロボット25機が崖の外へと向かいました。それぞれ別方向へと調査に向かわせています。

 小動物型調査機20機の内10機が崖を登れず苦戦しております。残り10機は無事外へと到達しました。昆虫型よりも数が少ないですが移動速度が優れている為、昆虫型の調査漏れをサポートする形で運用します」


 あ~やっぱ登れない機体もあるか。

 予想通りではあるけど、調査スピードに影響が出るから出来れば的中して欲しくなかったんだけど。仕方ないね。


「崖を登るのに苦戦している10機はサンプリングケースを搭載してレコンの手伝いに回してくれ」


「サー」


 色々と種類多めにしているから、それが逆に仇となった。とも言える数だな。逆に半分は乗り越えられているから、種類多めにしているのが功を成して、とも言えるか?

 ま、昆虫型が全部超えられてたから問題は少ない。取り合えず調査機の配置はこれでいいって事にしよう。


 さて、外はどんな感じかな~………たっか!!いや、え?マジか。マジですんごい高い!これは…マジで標高1万mあるか…。


 雲が下にある。

 残念ながら真下からそこそこ遠くまではほぼ雲に覆われていてよくわからん。が、隙間からは黒?緑?黒緑?が見える。多分木。ってか森?だろうな。遠すぎてよく見えないけど。残念ながら昆虫型も小動物型も調査ロボットにしては搭載されているレンズがそこまで高性能ではない所為で、拡大もそこまで出来ないから限界まで拡大してみてもハッキリとはわからないな。


「森、だよな?」


「おそらくそう思われます」


 この山から離れるにつれて雲が少なくなっている。見えるのはキラキラと太陽の光を反射する何か。それがどの調査ロボットから送られてくる映像を見ても同じく映る。


「もしかして、海?ここは島なのか?」


「確証は持てませんが、自然界にこれほどに光を反射するものとなると水、若しくは一面何かしらの鉱物である可能性も否定できません」


 あ~。確かに?


 地球じゃ考えられないけど、ここはそもそも地球じゃない。それは植生からも明らか。判断できないのはここが現実か仮想現実なのかであるから、一面鉱物であっても不思議じゃない。


 現実と仮定した場合、いくら地球以外のどこかだとしても少し「そんなのあり得るか?」と思わなくもない。けど、仮想現実だと仮定したら「まぁあるかも」となる。少し、今俺たちが居るのは仮想現実の可能性が俺の中では高まったな。ま、今更どうでもいいけど!仮想だろうが、現実だろうが、俺はエルメリアたちと楽しくのんびり過ごして行ければそれでいい。


 さて、ではでは地表目指して行動開始!


 下にある雲。

 それらはこの山に張り付くようにして漂っている。形は僅かにだけど変わっているから固定している訳じゃないのはわかる。当たり前だけど。


 にしても濃い。真っ白だ。

 ほぼ切れ目のない雲がどんどんと近づいて…あん?


「ストップ」


「サー。

 全機進行を停止します」


 おいおいおいおい。


 このまま麓にゴー!っと行きたいところだったんだけど…。


「この状態では恐らく小動物型調査機は移動が困難かと思われます」


「だよね」


 今居る場所は山頂である。それもかなりの標高を持つ山の頂だ。にも関わらず、この地には氷が存在していない。気温も僅かに肌寒い程度でしかない。今日は19℃。

 そんな山頂の火口は雲の上に存在するからまぁ、雪が無いのは不思議じゃない。氷が無いのは訳分からんが、そして気温も不思議だけど。だからと言って雲があるところまで下りたらあら不思議。一面銀世界って勘弁してほしいんだけど?


「これが当たり前と言えばそうだけど…仕方ない。重量的に多少重めの小動物型調査機は多分無理だろうけど、試しに少し下山を進めてみて難しいと判断したら即撤退。サンプリングチームに合流だ。

 昆虫型は多分大丈夫だろうけど、もし無理なら同じく即撤退だ」


「サー」


 ん~~~~~~~~やっぱ無理か。

 小動物型とは言え、一体一体は10Kgは余裕で超える重量の所為で雪に埋まって全滅。昆虫型は小型も小型なので重量は最も小さいもので数グラム。多少重めでも1Kg程度。それでも苦戦してる。軽めのものは雪の上を移動できているけれど………飛行型が使えないのが悔やまれる。


「仕方ないね。取り合えず下山を優先。歩行が問題なくなるまではそのままで」


「サー」


 代り映えのしない視界は大事な事とは言え、飽きる。

 ただひたすらに下山を優先して、まるで子供の描いた太陽の周りに描かれる線が伸びていく様にマップが埋まっていく。


 昆虫型の中でも重めの調査機は雪に軽く沈み、無理矢理搔き分けて進行。だからただただ雪のトンネルを進む様が見れるだけ。

 逆に軽めの調査機は雪に沈まず、その上を移動しているけど、視界は悪い。雲に覆われていてほぼ真っ白。一寸先は白である。


 つまらん。


「雲を抜けました」


「お」


 ――――――吹雪じゃん。


 変わんねぇ~。


 いや、視界は更に悪くなったと言うべきか?

 吹雪で視界が遮られ、光は雲に遮られて暗い。どんだけ分厚いんだよこの雲。


 幸いなのはこんな視界でも方向は見失わない事。

 この【ラララ宇宙号】と常に通信しているお陰で進むべき方向だけは間違えない。そもそも操作は今エルメリアがやってるから大丈夫。人間になったとは言え、性能面ではやっぱり頼りになるし、信頼も出来る。

 順調…とは言えない状態だけど、調査自体は進む。徐々に周辺の地形把握が出来、地図が書き加えられていく。


 ま、緊急の問題は発生しないからヨシ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 この地にやって来て一月が過ぎ去った。

 案の定、と言うか、順当に、と言うか、暇になった。

 やるべき事はやったはずの精神で怠惰な生活を送る日々にも飽きて来た。【ラララ宇宙号】のデータベースに何故かあった俺のPCのデータ。そこにあった書籍とアニメ、映画、音楽。仕事の所為で全く消化できていなかった物だったけど、全てこれでもかと堪能出来たのは嬉しい事だけど。堪能し過ぎて飽きました。


 エルメリアたちにも勧めてみた結果、ロコンがドハマりしたのは意外だったな~。レコンもハマったかと思うくらいには騒いでいたけど、ある程度見聞きした後はもう知らんぷりなのは何故なのだろうか?それよりもあっちこっちに行っては体を動かしたり、サンプリングを続けている。それに加えて肉も調達して来るから、俺たちの中で一番働いている感じになっているのはすっごく意外。


 レコンロコンの姉弟は結構自由気ままに過ごしていると思うけど、エルメリアだけが何故かいつも何かしらの作業をしている気がする…。エルメリアにも自由を与えているはずなのに何故だ?

 好きにしていいぞと何度か声を掛けたけど、効果なし。何時も働いている。あ、でもちょっと人間らしくなったのを確認。たま~に、ちょ~っとだけ笑う様になったのは嬉しい。


 さてさて。

 どうしたものか。


 エルメリアたちも多分暇を持て余しだすだろう。

 一応体を動かして訓練と言う名の運動。炊事洗濯などの生活上必要な労働はあるけれど、それだけだ。時間は必ず余る。もっと訓練を増やしてもいいけど、明確な目標も無いしなんだかなぁ。


 かと言ってもっと調査をしようにも最早この地で知らない事は無いって言えるくらいには調査が完了してるし…。


 この地はほぼ円状の島。

 面積は約19,625k㎡。とバカデカい。東京ドームが400個以上入る大きさで、北海道はこれよりも大きいが、時点の岩手県の面積を超える大きさの島、ってバカじゃん。

 中央に同じくほぼ円状の標高約11,000mの山が聳えている。山は険しく、登れば上る程に気温は低下していき、雪が常に吹雪く。だけど、不思議と酸素濃度は変わらない意味不明の山。しかも山頂であるこの火口の位置に入ると気温も肌寒い程度まで落ち着く不思議で意味不明を超えたバカな山。

 周辺には森が広がり、豊かな自然…とは言えん、か?弱肉強食な危険な森が広がるバカデカい島。踏破するにはゲームの力を持っている俺達でもそれなりに危険だろうと予想。


 不定形のヘドロの様な姿、形、色の軟体生物。命名【スライム】。

 剥げた頭の額に小さな角に尖った耳を持った筋肉隆々の紫肌の小人。命名【ゴブリン】。

 黒い肌を持ち、アンバランスと言えるくらいに発達した腕を持つ巨人。命名【オーガ】。

 群れで行動し、巧みな連携を駆使して狩りを行う巨大な三頭犬で火と氷を吹く。命名【ケルベロス】。

 まだまだ他にも蛇っぽい何か、トカゲっぽい何か、シカやイノシシっぽい何か。それに加えて俺の知識では誰かに伝える事が出来ない様な生き物などが跋扈している地獄。


 それら一切が何故か近づかないのがこの山であり、その頂である。ここは天国ではなかろうか?しかも虫がいないのが俺的ナンバーワンのグッドポイント。ってか下の森にも虫がいない。どうなってんだこの地は?


 そして懸念していたもう一人の従者の存在は痕跡一つ確認できなかった。結論としてはこの地に来ておらず、存在していないとした。非情に残念である。


 ってな感じの情報を眺めつつ、これ以上調べる事ってあるのか暫く思考。


 ―――――――――ないね。


 暇になる事は分かっていたから、この島を脱するのも考えたっけ。結論としては何度考えても多分無理。


 飛行型調査ロボット、その他飛行するもののどれもこれもが結局原因不明となった飛行不能状態。小型の物から大型の物、それに宇宙船である【ラララ宇宙号】も飛行が出来なかった。だから空を飛んでの移動は不可能。

 移動手段として使えるのは徒歩のみ。流石に路面的な問題もあるから走行車での移動は困難。で、結局徒歩で移動となる。そんな徒歩での下山、森の踏破は無理ではないが危険。そして難関なのが海岸まで物資も徒歩で運ぶ必要がある事。無事にそれを乗り越えて、船を浮かべて出航。森に危険生物、巨大生物が跋扈している事から水の中も危険だろうと予想。


 船でなんて行けるかボケ。


 って事で今日も今日とて平和にだらりと過ごす。生活環境もちゃんと整えたし、不便はない。周辺の植物から食べられる物も取れるし、肉も手に入る。ここにはない物は倉庫に眠っていたものを使ってある程度栽培も出来る様になった。虫が存在しないから受粉を手で行わなければならないけど、エルがやってくれるから俺が手を出す事も無い。


 日本では無理なスローライフが、今、ここに…。そして飽きてしまった。


 はぁ~~~~暇だ…。


「艦長。どうやら緊急事態の様です」


「おん?」

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