学生トーク「ぐちゃぐちゃ編」

山田 武

学生トーク「ぐちゃぐちゃ編」



「ぐちゃぐちゃ、についてどう思う?」


「…………今の俺の、頭の中かな?」


 いつものように始まった話題。

 だが今回、少年は友人の問いに対してうつらうつらといった様子で答えた。


「眠そうだな」


「いや、昨日は早く寝ちゃってさ。その分宿題とかを夜にやらなきゃいけなくなって、結局朝まで掛かった」


「あー、アレ面倒だったもんな……で、どう思うんだ?」


「……調べるよ」


 自分で頭を使うのも面倒、そう言わんばかりにスマホで検索を行う。

 ──そして、出てきた結果を友人に対して伝える。


「ぐちゃぐちゃ……水分を含んで形が崩れているもの、混乱していてきちんとしていないもの、愚痴や不満をしつこく言うこと。いろいろあるぞ」


「お前のぐちゃぐちゃはつまり、二つ目ってことか?」


「だろうな…………眠い」


「一つ目は要するにしわくちゃってことで、三つ目はぺちゃくちゃか? なあ、どうしてこの「○〇〇ちゃ」で全部代用できたか分かるか?」


「…………知らんよ、語彙があれば全部当て嵌められるんじゃないか?」


 ある意味「むちゃくちゃ」だと自分で思いつつも、眠気がすべてを合法だと告げているのでそのまま話す。


「じゃあ、どういうのがぐちゃぐちゃなんだと思う? ああ、二番目はお前だから聞かなくてもいいか」


「…………しわくちゃは、お前のテスト用紙でいいんじゃないか? で、三つ目はお前の鞄の中だろう」


「………………」


「……もう、寝ていいよな?」


「いや、寝ちゃダメだぞ。そろそろ授業なんだからさ」


「……チッ」


 昼食を済ませ、午後の授業が始まるまでの長い昼休み。

 だがすでにある程度時間は経っており、寝るほどの時間は残されていなかった。


「くそ、どうしてこの学校にはシエスタ制度が導入されていないんだ……!」


「……昼寝の制度だっけ? 少なくとも、夜更かししたヤツへの救済策じゃないことだけは間違いないな」


「だから大人しく起きてろって…………っておい、寝るなって!」


 やっぱりぐちゃぐちゃな頭では無理だな、だからこそ寝てすっきりしなければ。

 やはり「むちゃくちゃ」なことしか閃かない頭で、睡眠を選ぶ少年だった。


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