名前も知らない君

@InorLuv-_-

気がつけば、小さな部屋に立っていた。

視界に入ったのはソファーとテーブル、その上に一輪の赤い花。ただそれだけの物しかない部屋だった。

ソファーには一人の若い男と女がくつろいでる。

横に視線を移すともうひとりの女の子がいた。


僕にお茶を淹れて持ってきてくれたようだ。

突然の状況なのになぜか冷静な自分がいる。


ソファーの男と女はずっと無言でくっつき合ってる。

お茶を淹れてくれた女の子は微笑むだけで何も喋らない。

その表情やこの何もない部屋に心地よさを感じる。


まるで何度もこの場所に来たこともあるような。

覚えの無い人、部屋なのになぜか懐かしくて愛おしい気持ちになった。


突然場面は代わって、真っ白な世界にソファーだけの空間になった。


僕はお茶を淹れてくれた女の子とソファーでハグしてる。

男と女も隣で同じようにいちゃついている。


次に視界に映ったのは天井だった。見慣れた天井。


どうやら今のは夢だったらしい。

その現実が僕を寂しい気持ちにさせた。

あの小さな部屋が恋しい。

あのお茶を淹れてくれた君にももう会えないのだと思うと悲しくて仕方がなかった。


僕はロマンチストらしい。

もう一度合うことを結局諦めなかった。


この世界が無限に続いているのだとしたら

君はどこかにいる。

この地球にはいない、宇宙人かもしれない。

またはパラレルワールドの人かもしれない。

こんな突拍子な考えが過る程、会うのを諦められなかった。


もしかしたら会えるかもしれない。

そんなちっぽけな期待をポケットに入れて未知の世界を突き進む。


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