ぐちゃぐちゃな関係

黄舞@9/5新作発売

第1話

「トウヤ! この……馬鹿者!!」


 怒りで真っ赤を通り越し赤黒く顔を染めた親父に、怒鳴られながら殴られたのは先週。

 その時俺はズバリ、許嫁の家で、その妹のフミと乳繰り合ってた。

 殴られた痛みで訳わかんなくなって、ついつい本音を叫んだ。

 そしたらより強くぶん殴られ、今や家に軟禁状態。

 俺のやらかしというかなんというかを知った母は、顔を真っ白にしながらうわ言のように「あの子はダメなの。あの子だけは……」なんて呟いてた。

 なんか妙に気になって、何度かカマをかけたがはぐらかされた。


『トウヤさん。私、あなたのことが好きみたい』

『実は……俺もフミちゃんのことが……』


 許嫁であるフミの姉に罪悪感がなかったかといえば嘘になる。

 美人で性格も良く、そして胸もでかい。

 親同士が決めたこの縁談を、嫌がる訳でもなく、むしろ甲斐甲斐しい。

 友人たちに「トウヤはいいよな! あんなエロい許嫁がいて」と言われても、否定する要因なんて一つもなかった。

 だが、俺の本能が求めたのは姉ではなく妹のフミだった。

 理屈ではない、男としての本能がフミを欲していた。


「親父。反省したよ。俺が馬鹿だった。仲直りの証に……一杯やろう」


 親父の酒の好みは知っている。

 泥酔したらなんでも喋る。

 酔って吐いたところを見たことは一度もないが、秘密を吐きまくるのが親父だ。

 自制心ってのがないんだろう。

 この親あってこの子あり、なんて俺が言うんだから間違いない。

 しかし今回は失敗だった。

 吐いたのは俺の方だった。

 胃の中の全てをだ。


「あの子はな……俺の……子供だ」


 トイレと友達になりながら、気持ち悪さに枯れた胃液を搾り出す。

 この苦しさ分かるか?

 妹だぞ、妹。

 許嫁に隠れてやってたのは、不貞じゃなくて近親相姦だった。

 吐き気が止まらない。


「うわーーーーぁあああ!!!」


 血の繋がった妹に手を出したと知ってから、俺はところ構わず当たり散らかしていた。

 気持ちが落ち着かない。

 目が覚めたら夢だったらいいのに。

 親父はそんな俺を無視。

 逆に母は、奇妙なまでに優しかった。


「何か……何かまだあるのか……? フミ……もしくは俺に」


 怪我をしてぼろぼろになった両手を使い、家中を探索した。

 絶対何かあるだろ。

 根拠のない自信に後押しされ、見つけた事実に俺は腹を抱えて笑い転げた。


「ごめんなさい。トウヤ……でも、お父さんは知らないの。お願いよ。どうか……どうか!」


 母の日記。

 問い詰めると俺に縋る馬鹿な母。

 俺とフミは、血なんて一滴も繋がってなかった。

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